学びの現場から

西南学院の大学・各学校・園・保育所では、
学生、生徒、児童、園児の成長のために
教職員が一丸となり、より良い教育を目指して
日々さまざまな取り組みを行っています。

今回のテーマは「DX/ICT」

写真左:井手順子さん、写真右:冨永真悟さん

西南学院大学 人間科学部社会福祉学科 准教授
データサイエンス教育主任

井手(いで)順子(じゅんこ)

西南学院中学校・高等学校
進路指導部長 数学科教諭

冨永(とみなが)真悟(しんご)

コロナ禍がきっかけで教育現場の
DX化が大きく進んだ

写真:可視化したデータから仮説を検証する大学の実践的な授業
可視化したデータから仮説を検証する大学の実践的な授業

―冨永私は、2019年度から2023年度まで、ICT教育委員長として中高全体のICT教育の整備を進めてきました。今ではiPadが学習に必要なツールとして当たり前のものになり、校内Wi-Fiも整備され、会議資料も全てペーパーレスです。コロナ禍を契機に生徒を取り巻くICT環境は大きく変わったと感じています。大学はいかがでしたか。

―井手大学では、以前からオンライン学習プラットフォームの「Moodle」を導入するなど、ネットワークのインフラは整備できていました。しかし、実際はあまり使われていなかったんです。それが、コロナ禍をきっかけに急速に進みましたね。現在授業はほぼ対面に戻っていますが、オンラインであれば他大学の先生をゲストに招きやすいなど利点を生かしています。また、講義資料の提示や課題提出の面では「Moodle」が浸透したので、今後も効率的かつ効果的な教育を行える環境が整ったと思います。

―冨永コロナ禍は大変でしたが、ICT教育が大きく進むきっかけになりましたね。

―井手ええ。近年は、文科省がデータサイエンス教育に力を入れていることも大きいと思います。文系の西南学院大学でも2023年度に全学必修の「データリテラシー」や「データサイエンス基礎(データ分析)」「データサイエンス基礎(AI活用)」「データサイエンス実践」の4科目を立ち上げました。実践科目では、デロイト トーマツ グループのデータサイエンティストによる課題解決型の授業を行っています。さらに、本年度は「データサイエンス副専攻プログラム」もはじまりました。数字やデータって実は暮らしの中で身近なものだと感じられるプログラムです。社会の変化に合わせて、教育内容も大きく進化していくときですね。

―冨永中高でもICT教育が整ったことであらゆる場面で良い変化が見られています。例えば、個々のiPadでスライド資料を作る機会が増え、生徒たちのプレゼン力や主体的に学ぶ姿勢には向上が見られます。保護者との連絡や出欠もシステムで管理できるようになり、良い方向に変わっています。

進化する技術を使いこなすには
「人間らしさ」が重要

写真:タブレットを利用し、グループで同じデータを編集するなど協力して行う活動も盛んに
タブレットを利用し、グループで同じデータを編集するなど協力して行う活動も盛んに

―冨永ただ、ICTやDXは便利な反面、使い方を誤ると人を傷つける道具になりかねません。だからこそ、教員がルールやモラルを丁寧に指導することが大切だと思います。また、デジタルツールに全てを委ねるのではなく、自分の意見を常に持っておくことの重要性もしっかりと伝えていきたいですね。

―井手同感です。AIがすぐに答えを出してくれる時代になった影響か「調べる前に聞く」学生が増えている印象です。しかし、成人したら自分の行動に責任を持たなければなりません。契約書などに目を通し、自分で考えて物事を進めなければ大きなトラブルに巻き込まれる可能性も高まります。AIなどの最新技術は積極的に取り入れつつ、最終的な解は自分の考えと一致しているか確認し、責任を持つ必要があります。

―冨永「考えること」がどれだけ大切かは、今後も伝え続けたいですね。本校ではグループ活動や協働作業が増えたので、他人を傷つけない活用法の指導を通し、他者理解を深めていきたいとも考えています。

―井手そうですね。AI時代における人間らしさや信じることといったテーマについて考えを深める機会は大切ですね。大学のデータサイエンス副専攻プログラムの科目「データサイエンス応用(データと社会)」は、全学部の教員がオムニバスで担当しています。商学部や経済学部での利活用はもとより、文学や心理、芸術とデータとの関わり、著作権など法的な問題についても触れています。特徴的な内容として、神学部からは「人間であること」を追求する時間も設けています。ICTやDXの恩恵を享受するためには、法律や倫理などを踏まえ、それと同時に人としての基盤をどう育てるかが、今後の教育現場の課題ですね。

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