塩宮 咲
UNIQULOの海外進出は2001年にイギリスから始まり、その後、中国、アメリカ、香港、韓国、フランスと次々に出店してきた。ユニクロは、2015年には海外ユニクロ事業の売上高が日本ユニクロ事業を超えることを目標に掲げており、海外店舗はこれから更に増加する見通しである。
ユニクログローバル旗艦店は、ユニクロにおいて最高水準の商品・品ぞろえ・サービスなどを意識した、世界的情報発信の拠点となる大型店舗のことであるが、フランスではオペラ座に、2009年に世界で3番目のグローバル旗艦店がオープンしている。
「パリ オペラ店」は、オペラ座とパリ名門デパート、ギャラリー・ラファイエットのあいだにある、歴史を感じるパリらしい建造物であるが、中にはいるとピンクのライトの文字が踊り、モニターからはイメージビデオが流れ、色とりどりのマネキンがむかえてくれる。(写真①②③)
売り場面積650坪の店内は、地上1階、2階、地下1階で構成されていて吹き抜けとなっており、晴れた日には自然光が入る設計となっている。エスカレーターから見えるガラスボックスには様々なポーズをとったマネキンが配置され、それぞれ最新のファッションに身を包んでいた。総計53台のモニターが設置され、LEDでライトアップされた店内は、光と音に溢れ大変華やかだ。(写真④)
1階はヒートテックなどのJAPAN TECHNOLOGYを謳った商品やセール品がところせましと並んでいる。ハンガーラックにかかっているものも多かった。(写真⑤)
訪れたのは平日の夕方から夜にかけてだったのだが、大盛況でレジには長蛇の列ができていた。(写真⑥)
2階ではメンズ、地下1階ではレディースアイテムを販売していたが、商品の内容は日本とほとんど変わらなかった。しかし、中には「TOKYO」のロゴの入ったパーカーや、アジア人(日本人ではない!?)が広告している商品もあった。
また帰国して調べてみると、日本目安サイズのMは欧州表示ではS、LサイズはMサイズへと、海外表示へと変えられているということも分かった。しかも、サイズを書きかえているだけではなく、商品そのものも欧州人向けにトップスの袖丈やボトムスの股下の長さが長めに設計されている。
女性フロアの試着室には長い列ができていて、海外出店する上でのサイズの重要性を考えさせられた。(写真⑦)
また価格は、「14.90€」や「39.90€」など、日本の「1490円」や「3990円」に近い表示が見られ、特に割高になっている印象は持たなかった。フロアを歩いていたときに、英語で男性に話しかけられたのだが、その内容は「日本のユニクロはもっと安いのか?そうだとしたらどれくらい安いのか?」という価格に関するものであり、グローバルな価格設定もUNIQULOの魅力であることが分かった。(写真⑧)
つづいてMUJIを見てみよう。
無印の海外出店は、1991年、ユニクロと同じくイギリスのロンドンから始まった。現在では世界21カ国、197店舗にて展開しており、フランスにも11店舗ほど出店している。2020年には400店舗超えと海外店舗数が国内のそれを上回る予定だ。当時1号店を出店する際、漢字の「無印良品」では海外の人には発音しにくいと考え、ローマ字で「MUJI」と表記した。現在では、ローマ字と漢字の両方で記載している。
素材感を生かした商品戦略は、エコ志向の強い海外で好評である。
落ち着いたサンシュルピス通りにあるMUJIは、一つの通りを挟んで2店舗に分かれている。まずA館であるが、とびらをあけて中にはいると、こぢんまりとした空間に整然と商品が並んでいる。雰囲気は日本のMUJIそのものだ。商品も、フランス語で説明書きされたものより日本語で書いてあるものの方が多い気がした。(写真①)
ここはいくつかのフロア(と呼ぶにはすこし狭すぎる気もするが)に分かれていて、手前のフロアが女性物の衣料やシーズン物(このときはクリスマス)、奥のフロアが化粧品やタオルやポーチといった雑貨小物がきれいに並んでいた。細い廊下の階段を下りた一番奥のフロアはメンズ用の衣料品売り場だった。(写真②③④)
こちらも外観は日本と同じだったが、ショーウィンドウにフランス語と日本語でクリスマスへ向けてのメッセージが書かれていたのが印象的だった。(写真⑤⑥)
こちらの店内は広めの作りだった。1階には文房具やペーパークラフトが売ってあり、手作りの折り鶴も飾ってある。(写真⑦)手帳も日本と同じものなので、「大安」なんてものまで載っていた。別のフロアには収納ケースがぎっしり並んでいる。(写真⑧)
螺旋状の階段を使って2階に上ると、2階は日用品やインテリアを扱っていた。雰囲気は、日本と同じものを想像してもらえればいい。割り箸や醤油さしも売ってあった。(写真⑨⑩)
こちらは平日の昼間に訪問したためか人はまばらだったが、客層としては「大人の男性・女性」が多いように感じた。値段が日本よりも2~3割高めに設定されていたので、お財布事情との関係もあるのかもしれない。フランスでは「ちょっと良いブランド」という位置づけになるのだろう。
最後に、フランスのUNIQULOとMUJIの違いをまとめる。
まず客層は、UNIQULOは老若男女で幅広い印象があったが、MUJIは落ち着いた社会人が多かった。また価額設定は、UNIQULOがグローバル価格であるのに対し、MUJIは海外ではやや高めであった。これは、UNIQULOがJAPAN TECHNOLOGYをもって世界的なファッションブランドとなることを目指しているのに対し、MUJIは日本らしさを売りとした、日本ブランドとして出店しているという違いからくるものではないかと考える。
また、品ぞろえはどちらも豊富であったが、UNIQULOは日本と全く同じものを販売しているのではなく、フランス人の体に合ったサイズの服を提供していた。MUJIは、日本ブランドの体を崩さず、割り箸や醤油さしといったフランスでは需要の少なそうな雑貨も販売していたが、日本で販売されているお菓子やレトルト類は置いていなかった。これは、雑貨類は売れなくても品質上問題ないが、食料品は賞味期限の問題があるからではないかと考えられる。
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UNIQULO |
MUJI |
客層 |
幅広い |
社会人が多い |
価格設定 |
日本とあまり変わらない |
日本よりやや高め |
品ぞろえ |
豊富。ただしサイズ表記は海外規格 |
豊富。ただし日本で売れ筋の食料品は皆無 |
日本との違い |
お洒落でファッショナブルな印象 |
あまり変わらない。日本らしい。 |
今回の研究旅行では、流行の発信地パリで戦う日本企業の姿を見ることができた。そして、想像以上に彼らがこの土地で健闘していることを知った。
両者を比較してみると、UNIQULOはその地域に合った販売戦略を取っているのに対し、MUJIは日本の独特の良さを直接海外に発信していた。
これらは一見相反するようにも思えるが、その根底にはどちらも日本の技術力に対する自信と誇りを感じることができた。