「理論」と「実務」の2つの視点から
現代社会に合う行政法を追求。
 私の主な研究分野は「行政法」と、行政法の各論にあたる「環境法」と「地方自治法」を専門にしています。
 研究方法として、日本の行政法のルーツであるドイツ法、そしてドイツ法の制定・改正に関わるEU法を取り上げ、日本の行政法との比較研究に取り組んでいます。また、行政法の法理論の追求だけでなく、行政法が運用されている実務の実態調査を基礎とする分析も併用し、「理論」と「実務」の二つの視点から現代社会に合う法政策にアプローチしています。
 環境法においては、環境先進国の動向を見据えながら、ドイツ法やEU法との比較研究を通して、今後の日本における環境法の在り方を多角的に検討しています。例えば、SDGsやESG、カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミー、ネイチャーポジティブなどが最近の研究におけるキーワードです。
 地方自治法では、人口減少が進行する中で持続可能な地域社会を維持するための諸課題をはじめ、地方分権改革、行政計画体系の再構築を研究テーマとして取り上げる他、ここ数年は離島政策にも取り組んでいます。

 そもそも行政法は、教育行政や福祉、医療などの分野も包括し、環境法や地方自治法はその一部です。しかし、個別法の研究を行政の実務へフィードバックすることで行政法全体の運用に生かせると考えています。
 この研究を行う醍醐味は、法理論の追求に留まらず、理論と実務の架け橋を目指す点にあります。現代に合わなくなった法律を改正したり、新たな法律を制定したりすることは、行政法に必要です。国や地方公共団体の審議会に携わる機会も多いため、法改正や制度設計、政策立案に関わることで研究成果を社会に還元できることは研究者冥利に尽きます。
 また、私のゼミは地方公務員を目指す学生が多く、将来、彼らが活躍する地方公共団体における制度設計に尽力できることも、教育者としての意義を感じます。
このテーマを研究しようと
思った理由は何ですか?
高校時代まで理系クラスに所属しており、自然科学に興味があったことから、自然科学と社会科学に関連する学際分野として「環境」に関心を持ち、大学院進学時に「環境法」をテーマに選びました。
学生時代に
熱中したことは何ですか?
ごく普通の学生だったと思います。サークルは「化学研究部」に所属していたため、理系の友達が多かったです。修士課程修了後は就職するつもりでしたが、研究者を目指す仲間たちの熱意に押され、「あともう少し研究してみよう」と続けた結果、現在に至ります。
北海道の標津町を福岡から盛り上げる!
2020年度から3年生のゼミ活動として北海道の標津町と連携して地域の課題解決に取り組んでいます。ゼミ生は、地域と多様な関わりを持つ「関係人口」の観点から標津町を応援。昨年度は標津町の支援を得て、大学生協食堂で名物の「ちゃんちゃん焼き」などを提供する「標津町フェア」を開催した他、ゼミ生が標津町へ赴く「お試し移住体験」を実施。その他、SNSを活用し、標津町の魅力を発信しています。
 ゼミの研究テーマは、「現代行政法の課題」です。学生は、社会状況や政策動向を調査し、学生自らが議論して、その年の研究テーマを決めます。この時、「①教科書に書かれていない新しい社会課題を見つけ、その解決に挑戦すること」「②文献調査で終わらせず、行政の現場の実態に迫ること」をテーマ設定の条件としています。いずれも学生にとって難易度は高いかもしれません。しかし、法学は社会科学という“社会を科学する”学問の一領域であるため、実際に社会に出て、社会がどのように動いているかということに関心を持つことが大切です。学生自らが社会の中で課題を探すという取り組みを実践するのもこの考えからです。
 ゼミでは学生の主体性を大切にしています。ゼミのテーマ設定に加え、調査の進め方や発表のスケジュールなども学生同士が話し合って調整します。行政の課題を取り上げることも多いため、福岡県や福岡市など主に九州内の地方公共団体をヒアリング調査し、その際のアポ取りも学生が行います。行政への取材だけでは実態が分からない場合は、地元住民や関連施設などへ現地調査にも出向きます。
 こうして積み重ねた調査結果はゼミで定期的に発表し、議論や課題への指摘を次の調査に生かします。これを繰り返し、調査研究の集大成としてゼミ論集を完成させます。この作業を3年次と4年次の2年間のゼミ活動で2回経験し、社会へ飛び立ちます。目まぐるしく変化する現代社会において、大学で身に付けた知識そのものは時代遅れになるかもしれません。しかし、「新たな知識を得るために、常に幅広く情報を収集して、疑問に感じたら調べる」というゼミで身に付けた„知識を更新し続けるためのスキル"は、必ず社会で役立つはずです。
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