世界の不条理と分断を前に、Humanityを問い、国際法を学び続けた4年間
―外交官として世界で活躍するための基盤を築いた西南での学び―
(この手記は、26期生の森山和奏さんに、外務省専門職員試験に合格され卒業・入省を控えている時期に執筆して戴いたものです)
高校生の頃から「平和を守る仕事=外交官」に憧れを抱いていた私は、世界の共通言語として機能している国際法を学ぶことができる本学法学部国際関係法学科を志望しました。
卒業を迎えた今、4年間を振り返ると、多くの人に支えられ、仲間と切磋琢磨しながら、夢に向かって少しずつ土台を築いてきた時間だったと感じています。同時に、どのような信念をもって国際社会と向き合うのか、自分自身の人生の軸を形づくる期間でもありました。
〇外交官を志す原点 ―高校時代の留学経験
私が外交官という仕事に憧れを抱いたのは、高校1年生の時にアイスランドへ留学した経験からでした。世界各国から集まった留学生とプールで輪になり、第二次世界大戦について語り合った際、日本と彼らの国々が当時は敵国同士であったことに大きな衝撃を受けました。そのとき、これからも大切な友人たちと交流を続けていくためには、国交が開かれた平和な状態が不可欠であると強く感じ、「平和を守る仕事=外交官」を志すようになりました。
〇西南独自の海外プログラムで出会った人々との交流や大学での講義・ゼミを通して明確になった外交官としての志
大学在学中、タイの山岳地域での農業インターンやフィリピンでの貧困地域支援ボランティア、さらにフランスやベトナムでの友人宅滞在など、旅行では味わうことのできない現地の人々の生活に触れる貴重な機会に恵まれました。どの国でも、外国人である私を温かく受け入れてくれる人々と出会い、「その国の印象は、出会った人々によって形づくられる」ということを実感しました。異なる国や文化を越えて人と人とが理解し合うことこそ、国同士の信頼の礎になるのだと感じ、高校留学時に抱いた「人と人との絆をつなぐことが平和につながる」という思いを改めて強く意識するようになりました。
また、大学で国際法を学ぶ中で、在学期間がウクライナ戦争やガザでの紛争に重なり、紛争の展開とそれに対する各国の反応を目の当たりにし、国際法に基づく秩序そのものが危機に瀕している現実を痛感しました。こうした経験を通じて、私は入学当初に抱いていた「文化交流やODA(政府開発援助)を通じて人と人との絆を紡ぐ外交」に加え、「国際法に基づく秩序づくり」にも貢献できる外交官を目指したいと強く考えるようになりました。
〇特に学びを深めた大学での講義
1年次から受講できる国際法の基礎科目を通じて、具体的な事例をもとに国際法の考え方を幅広く学びました。授業では活発な議論が行われ、グループや教授との対話を通して国際法への理解が深まりました。激動する世界情勢や人権侵害に苦しむ人々を国際法の視点から捉え、国際法の意義と限界について深く考えることができました。
国際法を学ぶうえで不可欠な英語力を養う英書講読の講義では、少人数制のクラスが導入されています。そこで、私は、高校までの「試験で点数を取るための英語」から大きく飛躍し、国際法や国際社会の動向を読み解くためのツールとして英語を活用する学習法を身に着けました。この授業で得た学びは、4年間の学びの基礎となったと感じています。
また、国際法を英語で学ぶInternational Law、Advanced International Lawでは、国際司法機関と外務省国際法局で実際に国際法実務に携わってこられた教授のもと、国際法が現実社会でどのように機能しているのかを、日々の国際ニュースと関連づけながら学びました。授業では、西南生に加え、留学生や東京外大の学生とともに海外の大学でも用いられる専門的なテキストを読み込み、活発な議論を重ねました。留学生の知識に圧倒されながらも、次第に自らの意見を積極的に発言できるようになり、英語力も磨かれていきました。多様な背景を持つ学生との学びは、自身の視野を大きく広げる貴重な経験となりました。
さらに、紛争解決法の授業では、同教授から、国家間の紛争がどのように裁判を通じて解決されていくのかを実践的に学びました。専門的な国際紛争解決法の知識に加え、世界各地で紛争が生じる背景、効果的なプレゼンテーションの方法、英語の公的文書の読み方など、国際社会で活躍するために必要な実践的なスキルを多く身につけることができました。
加えて、法学部独自のプログラムである International Service Learning では、国内外でのインターンシップを通じて、大学での学びを社会の中でどのように活かすのかを実践的に考える機会を得ました。私はタイの山岳地域において、少数民族の方々とともに農作業を行いながら、彼らが直面する社会的・経済的課題や、それに対する現地NGOの支援の実態について学びました。事前講義で現地の歴史的背景や課題を理解した上で活動に臨んだことで、インターンシップの目的が明確になり、現地での学びはより有意義なものとなりました。終了後にはプレゼンテーションを通じて経験を振り返り、学びを自身の中に落とし込むとともに、自身の適性とも向き合うことができました。この経験は、将来どのように社会で活躍していきたいのかを具体的に考える重要な機会となりました。
〇ゼミでの学び ―専門的な国際法の知識とぶれない価値観の形成
国際法実務に携わった高柴優貴子教授の下で専門分野を立体的に学ぶことで、視野が大きく広がりました。ゼミでは、様々な文献を英語で読みながら国際法の役割と限界を学び、各国が自国の立場を正当化するために作り上げる「ナラティブ」に惑わされず、複雑な国際関係を多面的に理解する力を養いました。また、Culture of Integrityという高柴ゼミのプログラムを通じ、ウクライナ戦争下を生きる人とオンラインで繋いだ対話や、パレスチナ紛争の構造的理解を深める機会に恵まれ、同時代人として、人々の現実に思いを寄せながら、ぶれない価値観と判断軸(integrity)を培うことができ、国際社会の平和と安定のために自分がどのように貢献できるかを真剣に考えるようになりました。国際法は力をもった言葉であり、使い方次第で人を守る盾にも、傷つける刃にもなりうるということを幾度となく実感し、何が正義で、社会に対して自分が何をすべきかを問い続ける姿勢が身についたと感じています。
〇支えてくださった先生方の存在
大学入学当初、外務省専門職試験に必要な専門知識や英語力は十分ではありませんでした。しかし、4年間で合格を掴むことができたのは、先生方からの具体的な指導と的確な助言があったからこそだと感じています。講義だけでなく、勉強方法や進路の悩みに対しても親身に向き合ってくださり、時には成長を促すために率直なフィードバックもいただきました。そうした先生方の支えが私の力となり、4年間を通して着実に成長することができたと思います。また、外務省専門職試験受験に際しても、先生方や先に入省されたゼミの先輩から多くの助言をいただき、その支えもあって自信を持って試験に臨むことができました。
〇友人や先輩・後輩と高め合ってきた4年間
同じ志を持つ仲間の存在は、私にとってとても大きな支えでした。大学での学びを友人や先輩・後輩と共有し、現代日本や世界が抱える課題について語り合う中で、新たな視点を得るとともに、学んできた知識を自分自身のものとして深化させてきました。お互いの目標や夢を語り合い、悩みを共有しながら励まし合い、ときには競い合って過ごしたこの4年間は、私にとってかけがえのない時間であり、私自身の成長と飛躍を支える大きな原動力となりました。
〇今後の目標
外交の現場では国家間の関係が注目されますが、その背後には一人ひとりの生活があります。大学で培った「人に寄り添う視点」を忘れず、国際社会の中で弱い立場に置かれた人々の声にも丁寧に耳を傾けていきたいと思います。
また、「国と国の関係」は、各国の外交官たちによるいくつもの「人と人との関係」が織りなすものだと言われます。私自身も、日本の代表として各国の人々から信頼される外交官となれるよう、言葉を大切にし、誠実な姿勢で日々の業務に臨んでいきたいと思います。
(26期 森山和奏)
