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2025/05/23(金)

井上葵先生の講演会が開催されました。

 2025年5月23日に、井上葵弁護士(アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業)をお迎えし、法学部主催講演会(演題:「国際ビジネスと仲裁」)を開催しました。井上先生は、東京大学で学ばれ日本およびアメリカ(ニューヨーク州)で弁護士登録をされた後、仲裁の分野を中心に幅広く活躍されています。

1. ご講演の内容

 講演会ではまず、国際紛争の具体例が紹介され、その主要な解決手段の一つである「仲裁」についてご説明いただきました。仲裁は、紛争の当事者がその解決を第三者(仲裁人)の判断に委ね、その判断(仲裁判断)に従うという合意(仲裁合意)に基づいて行われます。調停や訴訟といった他の解決手段と比較して、仲裁には、当事者が仲裁人を選任できる、手続きが原則非公開である、仲裁判断に法的拘束力がある、などの特徴があり、国際ビジネスにおける紛争解決手段として有効とされています。

 とくに、仲裁をどこの国の法律(仲裁法)のもとで行うかを決める「仲裁地」の考え方についての話は、国際私法の授業で学んだ「準拠法」や「管轄権」とつながる内容でした。仲裁地をどこにするかによって、どの国の法律が適用されるか、仲裁判断がその国の裁判所にどのように関わるかなどが変わってきます。古くから知られるロンドンや、近年急速に知名度を上げたシンガポールなどに比べ、日本は「International Arbitration Survey」においてもまだ国際的に好まれる仲裁地として上位に位置しておらず、今後のさらなる発展が期待されます。

 講演の最後には質疑応答の時間が設けられ、井上先生が仲裁の分野でご活躍されるようになった経緯や、Seinan VisMootチームとの出会いなどについてお話しくださいました。先生は講演の締めくくりとして、「仲裁の道に進む人が増えるのはもちろん嬉しいが、仲裁に限らず、さまざまな分野で皆さんが活躍されることを願っています」と述べられました。

2.感想

 私たちは井上先生のご講演を聴いて、法、特に国際私法分野の法律は、その内容をよく知り、使いこなしていくことが重要であることを学びました。例えば、国際仲裁では、当事者が仲裁地や仲裁人を選ぶことができます。そしてその選択が、その後の紛争解決手続の進め方、そして最終的な判断にも影響します。それぞれの法がどのような内容を持つのかを熟知し、熟考したうえで、“設計”していかなければ、仲裁に勝つことはできません。このように、法を学ぶにあたっては、その内容をただ受け身で理解するというのではなく、私たち自身がそれを能動的に理解し、使いこなしていく姿勢が求められるのだと強く感じました。

 また、私たちはSeinan VisMootチームに今年度から加入しましたが、いまだ仲裁というものがよく分からない状態でした。今回の講演会では、井上先生が実際の事案を織り交ぜて、仲裁手続の全体像やそこに関わる法について分かりやすく説明してくださったので、これからの活動へのモチベーションが大きく上がりました。

 今回の講演会で学んだことを、これからの法学部での学び、また私たちが所属するSeinanVisMootの活動に活かしていきたいと思います。井上先生、ありがとうございました。

                       (法学部国際関係法学科2年 釘丸 倫太朗・中島 妃織)