西南学院大学で5月23日、岡真理さんによる学生向けの講演会が開かれました。「入植者植民地主義の⦅ジェノサイド⦆ パレスチナと日本を繋ぐ歴史の地脈」という題で、パレスチナ地域の歴史からイスラエルの建国、ガザ地区で起きていることまで、講演してくださいました。
岡さんが呈した最大の疑問は「私たちの関心の強度・密度が、ガザで起きていることに見合っているのか」というものです。メディアの注目があるのは、戦闘時のみ。しかし戦闘が終わっても、ガザ地区に住む人々が封鎖という「構造的暴力」のもとにあることはかわりません。ガザ地区における封鎖の状態は「生きながらの死」である、と岡さんは言います。
パレスチナ地域は、紀元前からマルチ・エスニックな社会でした。支配者層の変化により、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教と多数派を占める宗教は変遷していきます。したがって、故郷の地に帰るというユダヤ人の望みは、シオニズムのナラティブでしかないのです。
ガザにおける問題を語る上で、重要なのは「イスラエルとは何か」という問題です。イスラエルとは、民族浄化の暴力のもとに建国された、入植者植民地主義の国です。反ユダヤ主義とシオニズムは相反するものではなく、むしろ、親和性の高いものでした。シオニズム正当化の資源として、ホロコーストの記憶は発展していきます。
2023年10月7日、ハマース主導の奇襲攻撃以降、イスラエル軍はガザへの攻撃を繰り返しています。ガザで起きていることは、ジェノサイド条約の定義に照らして、紛れもないジェノサイド(物理的な大量殺戮)です。さらに、ドミサイド(住宅の大量破壊)やメディコサイド(医療システムの組織的破壊)、エコサイド(環境破壊)が発生しています。
200以上の史跡や図書館、文化センターの破壊など、文化的ジェノサイドも止まりません。パレスチナ人がガザで紡いできた歴史的な記録・記憶の痕跡を、イスラエル軍は物理的に抹消しようとしているのです。今起きていることは、「パレスチナ人」という歴史的存在そのものを抹消しようとする、ホロコーストです。ジェノサイドの構想者であるラファエル・レムキンにとっては、「文化的破壊」こそが核心でした。
岡さんによる講演は、これまでの行動を反省させ、学び続けなければならないという決意を強くするものでした。これまで、ガザでの惨状を知りながら何もできない自分に、無力感を感じてきました。大きすぎる問題を、どこから手をつければ良いのかもわかりません。ただ、関心を持ち続けることは難しくありません。これからも学び続け、パレスチナという土地へ思い巡らせたいです。
(法学部国際関係法学科3年 小関友愛)