2010年研究旅行

フランスから見た日本

高木 郁、金崎 真紀子

自分たちが大学で興味を持って学びの対象としている国、フランス。そのフランスの人々は日本に対してどのような認識を持っているのか。また、「日本人の思う日本」と「フランス人の思う日本」に違いはあるのだろうか。私たちは実際に首都パリで人々に話を聞くことや、現地で感じることのできる日本文化を知ることで、本やインターネットでは得られないフランス人の中の日本を読み取ろうと考えた。

はじめに Introduction

高木:
 フランス人は日本や日本人に対してどのようなイメージを持っているのだろう。
 このような疑問を持つようになったのは、ある授業でフランスやフランス人のイメージについてフランス語で意見を述べるということがあったからだ。そこで私が答えたのは「オシャレ」だった。理由は世界的に有名なファッションショーであるパリコレが開催されたり、シャネルやルイ・ヴィトンなどの有名ブランドが誕生の地であったり、特にファッションを始めとする流行の発信地というイメージがあり、そこに暮らす人々もお洒落な格好で生活しているのではないかという想像をしたからだ。
 その時、逆にフランス人は日本についてどのくらい興味を持ってくれているのか知りたくなった。この学内GPを通して現地の声を聞くことができたのはとても貴重な体験だったと思う。

金崎:
 日本から遠く離れた国、フランス。フランスは日本とは全く異なる歴史を歩み、全く異なる文化を形成してきた。そこには日本には存在しないものがたくさんある。そんなフランスに対して憧れを抱く日本人は多いと思う。では逆にフランス人はフランスにないものが溢れる日本に憧れたりするのだろうか?私たち‘日本人が考える日本’と‘フランス人が考える日本’の間に何か違いはあるのだろうか?
 フランス語専攻に入学して早3年。これまでフランスについて幅広く多くのことを学んできた。毎日の授業は楽しく、学ぶこともたくさんある。しかし、そろそろ自分の足でフランスの地に立ち、自分自身でフランスを体感したいと思った。 

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アンケート Enquête

~調査方法~
 実際にフランスの首都パリに行き、フランス人20人の協力のもと、アンケートを行った。回答者の詳細は以下に示すものとする。
 調査人数:20人
 調査場所:パリ日本文化会館 14人 / リュクサンブール公園 6人
 性別:男性 2人 / 女性 18人

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質問1 : あなたは日本という国に対してどのようなイメージを持っていますか?

Question1 : Quelle image avez-vous du Japon, en general ?

主なイメージ…
 ・D’une societe developpee et tres moderne. Avec du la tres bonne nourriture.
 発展していて非常に現代的な国。非常に美味しい食べ物がある。(10代女性)

 ・C’est une societe tres riche et dynamique.
 非常に裕福でエネルギッシュな国。(10代女性)

 ・Un riche, moderne.
 裕福で現代的な国。(20代女性)

 ・Un pays contraste entre l’ancien et le modern.
 今と昔が存在する対照的な国。(20代男性)

 ・Un pays de contraste, a la fois tres moderene et fidele a son passe.
 対照的な国。非常に現代的であると同時に伝統に忠実。(60代女性)

その他のイメージ…
 ・Je crains que l’image general du Japon se ternisse quelque peu vieillissement de la population marasme economique etc...
 私は日本の一般的なイメージとして、高齢化や経済衰退が心配だ。(60代女性)

 ・Pays des hautes technologies, des cerisiers.
 高度な科学技術と桜のイメージ。(20代女性)

高木:
 食べ物がおいしい!この回答は純粋に嬉しかった。フランスといえばフランス料理というイメージがあり、食にこだわりがありそうなので・・
 また、高齢化や経済衰退にまで言及している回答は、現代日本の課題を的確に指摘していることに驚いた。そして逆に私はフランス国内の問題点を挙げるだけの知識がないことに気づいた。これからは、個人のイメージだけで国を見るのではなく、実際の状況にも目を向けてみようと思う。

金崎:
 フランスも十分裕福で発展した国だと思うので、日本に対して発展的・現代的なイメージが強いのは、少し意外だった。しかし、確かに日本とフランスの街並みを比較してみると…日本の都市はビルが乱立していてあまり自然もないが、フランスはパリなどの大きな都市でも、限定されたオフィス街以外にいくつかビルは並んでいるものの、基本的に歴史的建造物や自然が多く、確かにあまり現代的な印象はなかった。

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質問2 : あなたは日本人に対してどのようなイメージを持っていますか?

Question2 : Quelle image avez-vous des Japonais ?

プラスのイメージ…
 ・Les japonais sont tres reserves et timide mais tres sympathique.
 日本人は非常に控えめで内気だが、とても感じがよい。(20代女性)

 ・Des gens tres polis, tres travailleurs.
 非常に礼儀正しく勤勉。(20代女性)

 ・serviabilites, discrets, souriants, accueillants.
 世話好き、控えめ、にこやか、愛想がよい。(20代女性)

 ・Les Japonais sont tres souriants.
 日本人は非常ににこやか。(10代女性)

マイナスのイメージ…
 ・Des gens stresses qui travaillent beaucoup.
 働きすぎて過度のストレスがたまっている。(30代女性)

 ・Des personnes tres chaleureuses mais ils veulent se fondre dans le monde.
 人柄は何事にも熱心だが、彼らは集団に溶け込もうとしたがる。(30代女性)

 ・Les japonais ont parfois du mal a exprimer un avis personnel sur certaines question.
 日本人は個人の意見を表現するのが苦手、下手。(20代女性)

高木:
 ある授業でフランスから来た留学生と会話する時、私がなかなか発言しなかったので、留学生にかなり意見を促されたことを思い出した。
 全体に、回答内容は予想外なものではなく、日本人のイメージとして私も納得の内容だった。長所であったり、短所であったり、場面によって変わるとは思うが、自分の意見をはっきり言える能力は、今後海外の人と仕事や生活を共にする上で身につけたいと思う。

金崎:
 どの国の人と比較してもよく言われる、「日本人=控えめ」という意見が非常に多かった。フランス人はoui / nonが非常にはっきりしていて、討論が大好きだと授業で聞いたことがある。フランス人と日本人が討論したら一体どのようになるのか少し見てみたい気もする。また、日本人の“勤勉さ”には、プラスのイメージもマイナスのイメージも両方あるようだった。土日には多くの人が仕事を休み、多くのお店が閉まってしまうフランス。バカンスが大好きなフランス人。彼らからすれば、ろくに休まずに働き続ける日本人は理解しがたいのかもしれない。

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質問3 : パリにおける日本的なものはありますか?

Question3 : Selon vous, y-t-il des choses qui représentent le Japon à Paris?

(答)
maison de la culture du Japon  パリ日本文化会館(20代~60代男女8名)
Restaurants japonais  日本食レストラン(10代~60代男女10名)
Japan expo  ジャパンエキスポ(20代女性)
Les touristes japonais  日本人観光客(10代、20代女性)
manga  漫画(20代女性)

 パリ日本文化会館はアンケートを行った場所でもあり、回答に挙げる人が多かった。
 アンケートをした日には、日本の映画監督小栗康平氏の作品上映と講演会があり、多くの人が来館していた。館内の日本グッズを取り扱う店にも客が絶えず、皆日本語のドリルや折り紙など様々な物を購入していた。

 Maison de la culture du Japon a Parisパリ日本文化会館
 101bis quai Branly 75740 Paris Cedex15 FRANCE
 パリにおける日本文化の発信地:映画、アート、講演、教室(囲碁、折り紙、茶道など)を体験することができる。


 日本食レストランはパリのあちらこちらで見かけた。寿司、ラーメン、お好み焼きetc.ちなみに、私たちも実際にカレーとラーメンを食べてみたが、美味しく食べることができた。店内のフランス人がラーメンをフォークで食べているのが印象的で、私たちが箸で麺をすする時、彼らの視線を感じた。
 ジャパンエキスポとは2000年から毎年パリで開かれている日本の漫画やアニメ、伝統文化の紹介を行うイベントのことだ。ジュンク堂書店パリ支店には、数多くの日本の漫画がフランス語に翻訳され並んでおり、その数は予想以上であった。また、メトロでは漫画のキャラクターのコスプレをした3人組の男性に遭遇した。(コスプレのイベントに出かけていたらしい)これらのことより、アニメ、漫画を通して日本へ対する関心を持つ人がいることがわかる。

  • パリ日本文化会館パリ日本文化会館
  • パリ日本文化会館 1階ロビーパリ日本文化会館 1階ロビー
  • オペラ地区の日本食レストランオペラ地区の日本食レストラン
  • 福岡でもおなじみジュンク堂書店福岡でもおなじみジュンク堂書店

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質問4 : いつか日本に行きたいと思いますか?それはなぜですか?

Question4 : Est-ce que vous pensez aller au Japon un jour? Pour quoi?

(答)
 いつか行きたい      8人
 すでに行ったことがある  5人
 行ってみたいとは思わない 7人

主な回答
〈いつか行きたい〉
 ・Je suis etudiant a INALCO et j’envisage de devenir professeur au Japon.
 私はINALCO(パリ第3大学 東洋文化学院)の生徒ですし、日本で教授になることを検討しているからです。(20代男性)

 ・Je trouve que ce pays est tres interessany, et tres dynamique.
 日本は非常に興味深いし、活動的な国だと思うから。(10代女性)

〈すでに行ったことがある〉
 ・Cet ete Pour notre voyage de noce
 この夏、新婚旅行で行った(20代カップル)

 ・Je suis allee au Japon il y a 3 ans. Ce pays et sa culuture vu ont beaucoup appris sur moi-meme et ma culture francais. J’ai beaucoup aime le mode de vie japonais et les japonais, donc j’aimerai y retourner.
 私は3年前に日本に行きました。日本と日本の文化を私自身多く学びました。私は日本の生活様式も日本人も非常に好きなので、日本に戻りたいと思います。(20代女性)

〈行ってみたいと思わない〉
 ・D’une part a cause de la position geographique et d’autre part a cause de la culture qui diverge beaucoup de la mienne.
 地理的位置のため(遠い)のと、私たちの文化と非常に違っているから。(20代女性)

 ・Parce qu’il y a (d’apres moi) trop de monde.
 (私の考えでは)人がたくさんいるから。(20代女性)

 ・J’en ai pas les moyens.
 ・Tout est trop cher.
 ・資金がない(40代女性)
 ・全てが高いから(30代女性)

高木:
 日本に行ってみたい、または来たことがある人がパリ日本文化会館にはたくさんいた。一方日本に来たいと思わないという回答もあったが、日本自体に興味がないというよりも、経済的負担などが理由に挙がっていた。

金崎:
 日本に行くことに対して積極的な人が多くて嬉しかった。特に一生に一度の新婚旅行の行き先に日本を選んでくれたのには驚いたし感激だった。また、行きたいと思わない理由に、人が多いとこや物価が高いとこを挙げている人がいたが、それらも質問1の日本に対するイメージに加えられると思う。

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質問5 : 日本に来たい場合、何をしたり、見たりしたいですか?

Question5 : Si oui, qu’est-ce que vous aimeriez faire ou voir au Japon?

 ・Travailler, visiter, recontrer des gens differents ou avec qui je trouve des points communs, malgres les differents de cultures. Tokyo pour vivre, visiter Kyoto, Osaka...
 学び、観光、私たちとは異なった人たちとの出会いで、文化が違うにも関わらず、共通している部分を知る。東京で過ごして、京都や大阪に訪れたい・・・(20代女性)

 ・Des lieux cultuels et y aller pendant la saison des fleurs de cerisier.
 桜の季節に文化的な場所を訪れたい。(20代女性)

 ・Je reve de voir Kyoto pour ses temple et faire du shopping a shibuya.
 お寺を見に京都へ行くのと、渋谷で買い物がしたい。(20代男性)

 ・J’aimerais voir la capitale et aussi peut-etre me promener dans des regions moins peuplees, par exemple en montagne.
 首都を見たいし、あまり人の住んでいない地方を散歩したい。例えば山とか。(20代女性)

 ・Decouvrir l’oe nologie des sakes!
 酒の醸造が見たい!(30代女性)

 その他にも・・富士山に登りたい、田舎の暮らしが知りたいなどあった。

高木:
 東京、京都、大阪など日本でも有名な観光地に興味を持つ人が目立った。特に京都は歴史的な寺や建造物が多いので、日本の古くからの歴史を知るのにぴったりだろう。また、その一方で、田舎の暮らしを見てみたいという回答もあった。都会の暮らしでは、どこの国であっても人々の生活パターンに差ができないかもしれないが、田舎になら、その国の古くからの生活習慣が残っていると考えられる。私も今回はパリに行ったので、次にフランスへ行く時は、のどかな田舎の風景を見てみたいと思う。

金崎:
 質問1にもあったように、現代的な日本の象徴である東京と伝統的な日本の象徴である京都を訪れたいという人が多かった。この回答を見て、私は一度も京都に行ったことがないので、日本人として一度は京都に行かなければと焦り始めた。ちなみに、回答者の何人かに私たちが九州の福岡に住んでいることを話してみたが、日本に行ったことがある人も含めて、福岡を知っていた人はほんの2,3人だけだった。

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まとめ Conclusion

高木:
 パリで街の人にアンケートを取ることは、フランス語の苦手な私にとって難しいことだった。実際、リュクサンブール公園で最初に声をかけた人に回答を断られた時は、帰りたくなった。しかし、友人のおかげもあって、20人の声を集めることができた。私も、後半は慣れて、なんとか1人で声をかけて、回答を集めることができるようになった。
 回答をまとめて感じるのは、パリの人たちの日本に対する認識の深さや意外性だ。普段日本にいると当たり前に感じることが、外からみると、日本独特な特徴だったり、雰囲気だったりして、それがイメージにつながっているのかもしれない。私も、これまで以上に、日本とは違うフランスの特徴をもっと学んでいきたいと思った。
 最後に、この私たちの研究旅行にあらゆる形で協力してくださった全ての方々に感謝したい。

金崎:
 「はじめに」で述べた‘日本人の考える日本’と‘フランス人の考える日本’には思っていたほど大きな差はなかったように思う。実際にフランスでは、日本の文化や知識が広く深く浸透していて、一定のイメージがしっかり定着しているようだった。また、そのイメージにも的外れなものはあまりなかった。よく考えてみれば、地理的にも遠く、文化も大きく異なる日本に対して、これほどきちんとしたイメージが浸透しているのは意外と言えば意外なのかもしれない。
 また、日本食レストランでお箸を使って日本食を食べるフランス人、日本文化会館で熱心に日本グッズを選んでいるフランス人。日本のことに対して興味津々なフランス人の方々を見て、非常に嬉しかった。それと同時に、もっと私自身が日本のことを知っておかないといけないという焦りを感じた。
 この学内GPを通して、自分たちの興味の赴くままに研究ができて、非常に楽しかった。現地で実際にアンケートを取ることによって、授業や文献では得ることのできないものを得られたと思う。一生に一度の貴重な体験ができた。

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