2010年研究旅行

セネガルの教育問題について

御手洗 なつ実

セネガルは西アフリカの最西端に位置し、サッカーやパリ・ダカール・ラリーで知られています。日本ではセネガルのタコが売られていることがありますが、セネガルでは漁業が盛んで、マーケットには多くの魚が並んでいます。

セネガルについて

 セネガルは西アフリカの最西端に位置し、サッカーやパリ・ダカール・ラリーで知られています。日本ではセネガルのタコが売られていることがありますが、セネガルでは漁業が盛んで、マーケットには多くの魚が並んでいます。主食はタイ米で、魚や肉と一緒に食べます。面積は日本の約半分ほどで、その中に様々な民族が共生しています。そのため、国内に多数の言語が存在しますが、方言とは異なり、それぞれ全く異なる言語です。1番多い民族は40%以上を占めるウォロフ族で、彼らの話すウォロフ語とフランス語が主に使われています。ウォロフ語は独自の文字を持たず、識字率はおよそ40%です。1960年の4月4日にフランスから独立し、昨年独立50周年を迎えました。今でも植民地の時代にフランスとの奴隷貿易の拠点として栄えた場所が残っており、見物することが出来ます。小学校6年間、中学校4年間が義務教育で、学校で日本史や空手、俳句を学ぶ機会があるそうです。(2011年調べ)

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セネガルでの調査

 小学校で習う主な授業は、フランス語・算数・人間科学です。好きな授業の調査での結果は、フランス語文法・フランス文学・フランス語語彙が断トツで多い結果になりました。セネガルではテレビやラジオで頻繁にフランス語の番組やフランスの番組が流れています。またウォロフ語が正書法を持っていないため、ほとんど全ての本はフランス語で書かれています。これらの授業を受けることによってアニメ、TV、映画が見れるようになり、本を読めるようになり、セネガル人が大好きな歌が歌えるようになるという利点があります。また、フランス語をアウトプットする機会も多くあり、学んだあとにすぐ使うことができます。次に人気があったのは外国語で、英語やスペイン語、トルコ語が上げられました。少数ですが中には算数と物理が好きという子供たちもいました。これは都市部の子供たちを調査した結果です。セネガル人の友人に農村部について尋ねてみると、農村部の学校では、フランス語かアラビア語のどちらかしか学べない学校もあります。フランス語を学んだ場合、都市部の結果であげたような利点があり、アラビア語を学んだ場合は、セネガルの主な宗教であるイスラム教のコーランを読むことができるという利点があります。しかし、アラビア語を学んだ場合はテキストや大学の講義ではフランス語が使用されるため、進学することが困難になります。多くの家庭では、兄弟でフランス語を学ぶ方と、アラビア語を学ぶ方にわかれ、互いに教えあうそうです。これが実験前の調査結果です。
 実験では主に富士コスモの実験キットを使用した実験をしましたが、この機会が私の行う1回で終わってはいけないと思い、現地の人々だけで続けられるように、現地のモノのみを使ってできる実験を渡航前に調べて取り入れました。実験方法は説明書が日本語のものしかなかったので、フランス語に訳し、滞在先でホストファミリーの兄に確認してもらいました。実験内容はアメーバを使った磁力の実験、結晶を作る実験、研磨の実験、反射の実験、蓄光の実験です。(小学校の理科の教科書や、小学生を対象とした実験を載せているホームページを参考にしました。)
 まずアメーバの実験では、まず初めにスライムを作り、子供たちが楽しんだあと、砂鉄と磁石を使い、スライムを生き物のように動かして実験しました。次に研磨の実験では、ゴツゴツした形の石をつやができるほど研磨し、磨けば光ることを体験しました。蓄光の実験では、粘土に蓄光材を入れて混ぜ合わせて、図工とも兼ね合わせました。(蓄光とは、光に当てたあと暗い場所に持っていくと光ることです)
 結晶の実験は、現地では雪が降らないため、結晶を冷蔵庫の淵ぐらいでないと見ることができないので、その成長していく過程も見せたいと思い、選びました。実験は実験キットを使用したものと、現地の水と砂と糸だけでできるものをしました。今から結晶を作る!と子供たちに伝えても彼らにはあまり想像がついていませんでしたが、大変興味を持っており、私が手に持っているフランス語に訳した手順の書いた紙を何度も奪われました。結晶は完全に成長するまでに2週間ほどかかったのですが、その間子供たちはちゃんと成長しているのか気になっている様子で、“まだ?”“今どうなっているの?”と訪ねてきて待ち遠しそうにしていました。
 反射の実験は万華鏡を使用しました。万華鏡を組み立ててから、底に自分の持っている小物など何でも入れてみることができるようにしました。万華鏡には大人も興味津々で、ホストファミリーも気に入り“すごい!”と言いながら眺めていました。学校で実験をする機会がないため、実験をしたことのない大人がほとんどでした。
 子供たちは実験中、“難しい”“疲れた”と言いながらも大変熱心に取り組み、“もっとしたい”“もっとさせたい”という感想が、大人たちからも子供たちからもありました。どうしてこうなるのか?ということに疑問を持った子供たちも多く、これが理科をもっと学びたいと思うきっかけになったと思います。結果、全員から好評価を得ることができました。

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振り返り

 セネガルでの生活を終え、この研究を振り返えりながら、セネガルと日本の相違点を考えていました。セネガルは日本と同様、資源のない国です。しかし、セネガルは日本とは違って、モノを作る技術を持っていません。そのため、様々なものを海外からの輸入に頼っています。一昨年初めてセネガルに行ったとき、マーケットもたくさん見たのですが、たった1年でこんなに変わるものなのかと驚いてしまうほど、一昨年よりまして去年は特に中国製品がセネガルに出回っていました。多くがニセモノです。例えば、日本のブランド名が書いてあるパソコンの中の部品は、他の会社の部品の詰め合わせであったり、ごく普通のサンダルにGucciと印刷してあったりし、ほとんどのものがすぐ壊れてしまいます。私たちならすぐ見てニセモノだとわかるものでも、彼らにはわからないので、“これはニセモノだ”というと大変驚いていました。値段を尋ねてみたところ、中国からの輸送費等でかなり高価になっており、私たちが日本でホンモノを買う値段とほとんど変わらず、中にはそれ以上に高価なものもありました。また日本人はあまり見かけないということもあり見破られないのか、ニセモノを日本製品だと言って売っている中国人がたくさんいます。中には自分は日本人だという人もいました。日本人がこのような現状を知ったら決して良い気はしないと思います。現地でホンモノなのかニセモノなのかを見極めることができる人が少ないというのも問題の1つですが、セネガル人が日本のメーカーのモノにいい印象を持ち、興味を持っているので、私は日本メーカーのホンモノがセネガルに届いてほしいと強く思いました。
 アフリカは日本人が思っているよりも携帯やパソコンなどの電子機器が普及していますが、実際に市場がフェアではなく、それらがニセモノならば本当に発展しているとは言えないと思います。セネガルにとって必要なことをいくつか見つけましたが、何事も教育からではないかと思います。中でも私が1番必要だと思ったモノを作る技術を作るのは、やはり理数教育です。もっと理数教育を重視し、他の国からも様々な技術を取り入れることができれば、彼らの暮らしが良くなり、経済も良くなると思います。
 セネガルと同じような状況の国やさらに深刻な国が他にもたくさんありますが、興味を持ったり少し知ったりするだけでも、考えられることはたくさんあります。日本人はあまりアフリカの国々のことを知らないですが、セネガルでは日本のメーカーのモノが日常的に使われており、セネガル人は日本の最近の状況もよく知っています。私が去年行った時は、“日本の首相は変わりすぎだ”“核ミサイルは飛んできてない?”と初めて会った人たちからも言われ驚きました。遠い国ですが、彼らが日本に関心を持っていることがわかると、私の意識も大きく変わりました。帰国してから、セネガルで研究したことやセネガル人の人柄や生活など、2度の滞在で知った現状を、多くの人に知らせるようにしています。今後は農村部のことも知りたいので、ウォロフ語を学んでいます。これからもさらに知識を深めていきたいと思います。

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