鍋島 浅香
世界有数の観光地として人気を誇るフランス・パリ。様々な文化や遺産のみならずモダンな雰囲気も持ち合わせる素敵な都市である。さて、誰もが一度は訪れてみたい!と夢見るこの都市では、様々な国から訪れる観光客を受け入れるためにどのような対策がとられているのだろうか。例えは、言語の違う観光客への対応は?例えば、足腰の弱い高齢者や障害者への対応は?ここでは、後者の高齢者や障害者のためのバリアフリーを観点にパリの観光地を紹介したい。
 まず、観光地の前に紹介したいのがこちらのラベル。
 パリ(フランス)で至るところで目にするラベルである。まず観光客が最初に足を踏み入れる駅や空港には必ずと言っていいほどこれらのラベルがある。これはTourisme & Handicap という、障害者が休日やバカンスを障害に関係なく自由に過ごせるようにと考えられたものである。
2001年に全国レベルで実施され、障害者がより過ごしやすい観光地を提供しようと試みられたのが始まりである。現在(2010年12月)、推奨ラベル認定を受けた施設は、73の観光地と95の宿泊施設、20のカフェやレストラン、10の観光案内所、3つのレジャー施設に設置されている。
 【Tourisme & Handicap  http://www.tourisme-handicaps.org/ 】
 Tourisme & Handicapのラベルがある施設で受けられるサービスの基準が、分かりやすく以下の4つの項目に分類されている。
 
 Handicap moteur・・・運動機能の障害
 
 Handicap mental・・・精神的な障害
 
 Handicap auditif・・・聴覚障害
 
 Handicap visuel・・・視覚障害
 ラベルを見るだけで、すぐに理解できるように考えられている。
 Tourisme & Handicapのラベルは障害者が安心して休日を楽しんだり、観光を楽しんだりすることが可能なラベルであるが、Tourisme & Handicapはまだまだ新しい制度であるため充分な設備が整っている施設でも未だに認定されていない施設も存在する。
 そこで、初めてフランス(パリ)を訪れる人のためにここだけは逃したくない!と言うような10の必見スポットをバリアフリーの観点から紹介していきたい。
 筆者の主観的な考えやイメージに依存していることをご了承いただきたい。
 筆者が感じたバリアフリーの充実度を★5段階で評価したい。
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 パリと言えばコレ !
 バリアフリー:★★★★☆
 展望台に上るためには階段かリフトだが、それとは別に障害者専用のリフトが用意されている。
 そのため非常に利用しやすくなっている。実際に利用者も多く、2階や3階でパリの景色を楽しむことができる。
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 ナポレオンの命令により作られた凱旋門!
 バリアフリー:★★★★☆
 屋上のテラスへ行くために車いす専用のエレベーターが有る。
 エッフェル塔同様にテラスまで上がるとパリの景色を楽しむことができる。
 夜景を楽しみたいなら夜がオススメ!
 様々な企画展が催されるグラン・パレ!
 バリアフリー:★★★★★
 Tourisme & Handicapのラベルはないが、ほんの数段の段差でも、そばには車いす用のリフトが有る。美術館のスタッフが常にそばに就いていて笑顔で対応してくれる。
 また、目が不自由な人のために大きな字で書かれたパンフレットも置いてあり、非常に利用しやすくなっている。
 モネの睡蓮で有名なオランジュリー美術館!
 バリアフリー:★★★☆☆
 こちらもTourisme & Handicapのラベルはないが、入口の階段以外には、絵画を鑑賞するにも特に段差などはない。地下へ繋がる通路も階段ではなく、緩やかなスロープになっている。
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 19世紀の印象派!オルセー美術館
 バリアフリー:★★★☆☆
 インフォメーションデスクにて、障害者専用のパンフレットをもらうことができる。
 Tourisme & Handicapのラベルに認定されてはいるが、建物自体に非常に段差が多い造りになっており、車いすの人は遠回りする必要があり、大変だろうと感じた。
 しかし、ゴッホやゴーギャンなど印象派を代表する画家たちの作品が展示されており、見逃したくない美術館のひとつである。
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 フランスを代表する彫刻家と言えばロダン。
 「考える人」で有名なロダンの美術館。
 バリアフリー:★★★★☆
 入り口にも段差がなく非常に利用しやすい。また、通常の入り口だけではなく車いす専用の入り口も用意してある。トイレも広く利用しやすい。
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 知らない人はいない!ルーブル美術館
 バリアフリー:★★★★★
 看板にもあるように、ルーブル美術館では様々な人に美術を楽しんでもらいたいという気持ちが込められ、バリアフリーも充実している。車椅子やベビーカーの無料での貸し出しも行っている。敷地は非常に広いが、エスカレーターやエレベーターも多数在り、利用しやすい。様々な言語で書かれたパンフレット(マップ)を活用すると良いだろう。
 また、障害のある人、その付き添いの人は証明書を提示することで入場料が無料になるサービスもある。
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 モダン美術を堪能したいなら!ポンピドゥーセンター
 バリアフリー:★★★★★
 写真でも分かるように専用の入り口が用意されている。敷地は非常に広いがエスカレーターやエレベーターも完備されており、足腰の弱い人でも気軽に足を運べる造りになっている。また、申し出があれば、視覚障害者のために「手で見る」ことを目的としたツアーをガイドが行ってくれるそうだ。視覚障害者にとっては非常に貴重な美術館だろう。
 モンマルトルの丘に聳え立つサクレ・クール聖堂
 バリアフリー:★☆☆☆☆
 サクレ・クール聖堂に辿り着くまでには、やはり坂道が多く、車いすの人や目が不自由な人にとっては少し辛いかもしれない。
 メトロやバスと同じチケットで乗ることができるケーブルカーもあるが、非常にせまく利用し辛いようだ。しかし、モンマルトルの丘から見える古き良き時代のパリを是非みていただきたい。ケーブルカーを利用するなら、メトロ2番線のAnvers アンヴェール駅を利用すると良いだろう。駅をでるとすぐ、ケーブルカーがある。
 ナポレオンが眠るアンヴァリッド
 バリアフリー:★★★★★
 こちらも、Tourisme & Handicapのラベルはない。しかし、旧・軍病院の名残か、チケット売り場へつながる入り口や広いトイレ等。
 非常にバリアフリーが充実している。
 一部は軍事博物館となっており、この分野では世界一とのこと。
 時間があれば是非訪れてみたい場所である。
さて、筆者オススメの10の必見スポットを紹介したが、いかがだっただろうか?
パリの街には筆者が紹介した観光地のほかにもまだまだ魅力が残されているが、というか本音を言うとまだまだ紹介したいところがあるのだが・・・障害があって旅行に行くのを躊躇っている人、足腰が弱くて歩きまわるのが不安な人、そんな人が少しでもフランス、パリに行ってみようかな?と感じてもらえればと思う。
