[特集]
食材に触れ、共に作り、同じ食卓を囲む。
そんな一つひとつの経験が、食べる喜びや人と人とのつながりを育みます。西南学院では、生活や学びの中で「食」を身近に感じる機会を入り口に、心身を育てる食への興味や、感謝の心を育むことを大切にしています。
舞鶴幼稚園では、子どもたちが協力しながら料理をする活動を行っています。保育の中で料理に取り組む体験には、さまざまな学びがあります。包丁をはじめとした調理道具を実際に使い「食材を小さくすると食べやすい」「調味料を加えたり、焼いたりするとおいしくなる」という気付きや発見があります。献立も子どもたち自身で考えるなど、主体性を大切にしています。
年少のうちは先生が調理をする様子を見るのが中心ですが、学年が上がるにつれて自分たちで皮をむいたり、ちぎったり切ったり、時には町に出かけて食材の調達の仕方を学ぶこともあります。みんなで共同作業をすることで、協力して一つの料理を作り上げる達成感を得られ、仲間関係の構築にもつながります。園庭に実った桑の実をジャムにすることや、自分たちで育てたピーマンやナスを料理して食べることもあります。
料理についての知識や学びだけでなく、料理や食事の時間が楽しく感じられ、食の喜びやおいしさに対する興味や関心が広がるきっかけにもなっています。
心身の成長に必要な栄養をバランス良く取れる献立はもちろんのこと、発達に合わせた硬さや大きさ、形状のものを提供しています。姿勢良く食べられるように、体に合った椅子とテーブル、子どもが扱いやすいスプーンや陶器の食器を使います。
トウモロコシやソラマメの皮むきなどを子どもたち自身で行うことで、食材に親しみを持つきっかけになり、苦手な食材でも食べてみようと意欲を見せることも多いです。園庭のプランターでミニトマトやオクラなどの野菜を育て、成長の過程を見ることで食への関心や食べ物を大切にする気持ちを育みます。
また、食前のお祈りを通じて、神様や生産者、調理をしてくれた方への感謝の気持ちを持つ機会も重んじています。年長児が年少児に配膳をしたりマナーを教えたりと、食事の時間が人と関わり、安心や愛情を感じられる時間であることも伝わるような工夫をしています。
西南学院小学校の給食は、栄養バランスが取れた献立に加え、季節の食材や行事食、郷土料理、世界の料理などを通じて、多様な食文化に親しむ機会になっています。
ランチルームでの縦割り給食では、学年が異なる仲間と食卓を囲むことで、自然と隣人愛や協調性、励まし合う気持ちが育まれます。1年生は6年生に配膳を手伝ってもらいながら少しずつやり方やマナーを覚え、学年が上がるにつれて自分たちで役割をこなせるようになります。また、小食や好き嫌いに不安を感じる児童も、周りの友達に励まされながら、少しずつ食べる喜びを見つけています。
食前には栄養教諭からその日のメニューの栄養やおいしさのポイントについての解説を聞き、ご飯とおかずを組み合わせながら味わう日本ならではの「口中調味」を通じて、味の発見や食の魅力に気付ける機会を設けています。
さらに、食の大切さやフードロスについて考えたり、地域の果樹園や農園、漁師、水産加工会社の方々を講師として招いたり、毎年1月の「全国学校給食週間」には給食室の方々や食材を届けてくれる方々へ感謝のメッセージを送ったりするなど、小学校の給食は社会とのつながりを感じながら食の魅力に触れる時間になっています。
5年生は社会科の授業で、水産加工会社「アキラ・トータルプランニング」の方から水産業とSDGsについて学びました。これまでは廃棄されていた魚の骨や身を、加工品や飼料として活用し、廃棄率を大幅に減らす取り組みが進められていることを知り、実際に商品として開発された「ぶりの魚(ギョ)ロッケ」も給食で実食しました。食を通して、資源を大切にすることや持続可能な社会について考える機会となりました。
中学1年生の理科の授業では、JAグループの「バケツ稲作りセット」を用い、理科係を中心に通年で米作りに取り組みました。発芽から観察を続け、田植え、稲刈り、脱穀・籾摺りまでを行い、玄米になるまでの過程を体験。最後は完成したほんの一握りの玄米を白米と混ぜ、おにぎりにして全員で食べました。自分たちで育てた米のおいしさと、なじみのある食が、いくつもの過程を経て食卓に並んでいることを学びました。
自分たちで育てた玄米を一粒一粒無駄にしないよう大切に炊き、おにぎりにして食べ、収穫の喜びを実感
中学校・高等学校には、13の理科系教室やバイオミュージアムなど、理科を学び、探求するための施設が充実しています。こうした環境を生かし、理科系の部活動でも、生徒たちが主体となって観察や実験、研究活動に取り組んでいます。中学校の科学同好会では、みそを仕込み、育てた野菜と合わせてみそ汁を作るなど、育てることと食べることをつなげた活動を実施します。高校生物部では、文化祭で毎年「鶏の解剖」に取り組み、生物の体を観察することで命の大切さや尊さを感じる機会になっています。
自然や命に感謝しつつ、野菜を育てる奥深さを知り、共に料理を食べる経験を通して仲間とのつながりを深めます
自ら解剖することで、普段何げなく食べている動物や植物を、安全に食べられるよう加工してくれている人たちのことを考えるようになりました。
西南学院高等学校 3年 高校生物部・部長
吉田 京ノ介 さん
国際寮HEKIHAでは、ちらしずしやお吸い物など日本食を作るクッキングイベントを開催。宗教上食べられないものがないかを確認したり、箸が使えない人にはスプーンやフォークを用意したりと、細やかな配慮をしています。「すしおけを初めて見た」という留学生の声も多く、日本食の彩りの豊かさに驚きの声が上がります。回を重ねるごとに、留学生も一緒に調理や後片付けまで主体的に関わるようになっていきます。国際寮では「食は一つの言語」と考え、一緒に料理し、同じご飯を食べることが、言葉や国籍を超えて絆を深める大切な手段となっています。
人間科学部児童教育学科・岡田みゆき教授のゼミでは、家庭科教育を専門とし、幼児期の食育や「行事食」「郷土料理」をどう伝えるかを研究しています。例えば、お正月や節句など身近な行事食を通じて、子どもたちが地域社会や伝統文化に親しみを感じられることを大切にしています。特に幼児期の食事には成長や健康のための栄養補給や楽しみだけでなく、三度の食事を通じて安全で健康な生活の基礎を築き、豊かな人間形成につながる大事な意味があると考えています。
ゼミの学生たちが研究成果を披露するために参加した「食育発表会」では、紙芝居やペープサートで伝えたり、知識が定着するようクイズを行ったり工夫をしていました。近年、行事食が伝わっていくような場が減っている背景もあり、今後もこうした研究や授業開発を通して食の情報を発信し続けたいと思います。
西南学院大学 人間科学部児童教育学科
家庭科教育 教授
岡田 みゆき