• 何があっても親は親。
    その深い愛情に触れ、両親との関係を
    見つめ直すきっかけに。
     この本の主人公は、タイトルの通り、宮沢賢治の父・政次郎です。厳格な父でありたいと思いつつ、実は息子を溺愛するパパなのです。良くも悪くも1つのことに突っ走る賢治に翻弄されながらも、全力で息子の夢を応援する父の愛が文章の端々から伝わります。
     特に印象に残っているのが、賢治が結核で倒れた時。政次郎が周囲が止めるのも聞かず病院に泊まり込んで看病する場面は、親から子への無償の愛を感じ、賢治に先立たれた時の父の悲しさがさらに強く伝わりました。
     私自身、反抗期の頃は親にきつく当たることがありました。 今思えば、“親だから”と甘えていたのだと思います。でも、親も1人の人間。私の言葉に傷ついたこともあったと思います。それでも私を受け止めてくれていた両親に対し、今は感謝と尊敬の気持ちでいっぱいです。
    人間科学部心理学科 1年
    (唐津東高等学校出身)
    福山ふくやま 陽菜乃ひなの さん
  • 心の奥に潜んでいた「負」の感情に
    気付いた時、あなたは自分という人間を
    信用できますか?
     物語は、恋人同士の架と真実を中心に展開されます。しかし、甘いラブストーリーではなく、人間の負の感情が嫌というほど丁寧に描かれています。人を自分にふさわしい人物か無意識に値踏みしたり、良かれと思ってやっていることが、実は相手を苦しめていたり。私は「良い子」と言われ続けてきた真実を通して、自分の中にある「善良」という傲慢さを自覚するようになり、心に抜けないとげを突き刺されたような衝撃を受けました。
     しかし、この本は傲慢さや善良さを持つことが悪であると言っているのではありません。選択には必ず責任が伴うことを自覚すべきであると伝えているのです。もうすぐ始まる就職活動では、企業を選び、企業に選ばれる立場になります。これからの人生、何をどのように選択するか。しっかり責任を持って選択しようと思います。
    経済学部経済学科 3年
    (八女学院高等学校出身)
    中村なかむら 百杏もも さん
  • 誰かの評価よりも自分らしい自分でいる。
    その大切さを歴史が教えてくれる。
     歴史に名を残した偉人は、非の打ちどころがない完璧な人間と思っていませんか。でも実は、ダメな面もたくさんあるのです。そんな偉人たちのエピソードを通して歴史を学び、自分を取り巻く状況を客観的に見るきっかけを与えてくれる。それが、『歴史思考』です。
     今ある無数の常識や価値観も、時代や場所が変われば、ガラッと変わり、今自分を苦しめている「当たり前」も当たり前ではない。そう気付いた瞬間、心がふっと軽くなるのをあなたも感じるはずです。元々、深く考え込んでしまう性格ですが、この本を読み終えてからは悩みとの付き合い方がうまくなったように思います。
     誰かに評価されることが当たり前の今、自分らしい自分でいることを大切にする。その勇気をくれる一冊です。
    国際文化学部国際文化学科 2年
    (舟入高等学校出身)
    しま 菜花なのか さん
  • あなたは2人の主人公のどちらに感情移入する?
    読めば、読むほど味が出る一冊。
     初めてこの本を読んだのは、小学校6年生の時。以来、何度も読み返す1冊です。
     主人公は、剣道一筋の香織と、気楽に剣道を楽しむ早苗。2人が剣道を通して友情を育み、成長していくストーリーなのですが、中学生の頃に私が感情移入したのは、香織です。水泳に打ち込んでいた中学時代は、ストイックな香織を自分に重ね、厳しい練習を乗り越えていました。一方、早苗の印象はずっと“普通の人”でした。
     ところが、コロナ禍だった高校時代に読み返してみると、やりたいことがあってもできない“宙ぶらりん”状態の私が共感したのは、まさかの早苗でした。何気ない日常のことで悩む“普通”の早苗に、寄り添われているように感じたのです。それ以来、この本の味わい方に深みが増したように思います。まさに、読めば読むほど味が出る一冊です。
    法学部法律学科 2年
    (高水高等学校出身)
    藤井ふじい 創太そうた さん
  • 自分の欲をさらけ出したことで、
    ありのままの自分を好きになれた!
     私はこれまでの人生で、勉強でもスポーツでも、誰かに勝たないといけないと常に思っていました。良く言えば、負けず嫌いですが、実際は、自分だけが勝てば良いという、私の中の無意識の欲を暴いたのが『何者』です。
     就職活動においても、“憧れられる自分”になりたくて志望先を選んでいたように思います。でも、何者にもなる必要はない。誰かが好きな自分ではなく、ありのままの自分でいい。自分自身や将来を考え直すきっかけになりました。たくさんある職業の中から、何を選ぶか。自分の未来が楽しみです。
    法学部法律学科 2年
    (九州産業大学付属
    九州産業高等学校出身)
    武井たけい 優羽ゆう さん
  • 20歳を迎える私に自信をくれた
    温かな言葉たちを、悩んでいるあなたにも。
     「自信のない自分を変えたい」と、SNSで見つけたのがこの本です。何気ない日常をつづったエッセイには、日々を前向きに生きるヒントが散りばめられています。
     その中で、「やり遂げられなかったことに目を向けるのではなく、小さな努力に気付くことが大切」というメッセージに、自分を変える力をもらいました。
     20歳になる今年は、自分のことを誰も知らない環境に身を置き、一から人間関係を築くという新たな挑戦に一歩を踏み出したいと思います。
    外国語学部外国語学科 2年
    (博多女子高等学校出身)
    福澤ふくざわ 花奈はな さん
  • 古いイギリスのラブストーリーから
    学んだ人間関係に大切なものとは。
     学生生活では、周りの人と距離がすぐに縮まるけれども、その関係を長く保つことの難しさを感じることも多々あります。この作品は、ラブストーリーですが、「自負」と「偏見」が人間関係を複雑にしていることを描いており、これは友人関係にもいえることです。
     普通に会話をしているつもりでも、心のどこかに「自負」や「偏見」があり、一歩踏み込んだ友情を築けない。それはとてももったいないことです。もっと素直な気持ちで相手と向き合う。当たり前のことですが、その大切さを改めて学ぶことができた一冊です。
    外国語学部外国語学科 3年
    (筑前高等学校出身)
    四元よつもと 啓斗ひろと さん
  • 読むたびに気付きを与えてくれる、
    「人生」という旅の友となる一冊です。
     『苦海浄土』は、豊かな詩的感性を備えた著者の石牟礼道子さんが、まるで患者に憑依したかのように水俣病の世界をすくい上げて世に問うた作品であり、文学的想像力が時空を超え、ローカルとグローバルをつなぐ回路として、今や「世界文学」であると評されています。
     私がこの作品を初めて読んだのは、学生時代。その後、九州福岡で大学教員になった際に再読したのですが、学生時代はまったく「読めていなかった」ことに衝撃を受けました。そして今、方言のニュアンスが少し分かるようになったり、患者のそばにただ寄り添うことだけでも救いになるという「悶え加勢」という言葉を知ったりして、「読めていない」という自分を受け入れられるようになっています。
     今後も人生という旅の友として、この作品は読み続けるつもりです。九州で学ぶ学生の皆さんにも、心の内を語ることが切実だった時代の言葉をぜひ感じてもらえたらうれしいです。
    法学部国際関係法学科
    田村たむら 元彦もとひこ 准教授
  • 世界について、人生についての答えが
    ここにある!
     子供の頃、「遊んでばかりいないで勉強しなさい」と言われた経験が誰しもあるでしょう。しかし、著者であるヨハン・ホイジンガに言わせれば、その勉強すら、実は遊びの産物なのです。「歴史も、哲学も、詩も、科学も、全てが遊びのうちに起こり、遊びのうちに展開する」と述べているように、まさにすべては遊びなのです。
     私は現在、大学院で文学の勉強をしながら、小説を発表しています。どちらも、合理性重視の現代のシステムからすれば無駄なものでしょう。しかし、機械が動くためには「遊び」(小さな隙間)が必要であるように、世界のシステムもまた「遊び」なくして機能しないのだと本書は教えてくれます。
     人生や世界の豊かさは、無駄なくして生まれないと思います。私は自分が読む本や書く本がその豊かさの中に育まれ、新たな豊かさにつながっていくことを願います。そして、その思いの根底にはいつもこの本があるのです。
    西南学院大学大学院
    外国語学研究科外国語学専攻
    修士課程 1年
    (西南学院大学出身)
    鈴木すずき 結生ゆうい さん
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