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さまざまな子どもたちとの
ふれ合いの中で、
保育の基礎を学んだ4年間。 -
私が大学生の頃はバブルの真っただ中。世の中が好景気でにぎわう中、幼児教育のエキスパートを目指していた私は、幼稚園教諭や保育士、小学校教諭の資格取得に向けて実習に追われる毎日でした。そんな忙しい中でも、障がいのある子どもたちと遊ぶサークル「のびっこの会」に参加し、積極的に子どもと触れ合う機会を作ることを心掛けていました。
所属していたゼミでは、手作りおもちゃの制作に熱中。「オオカミと7匹の子ヤギ」の指人形を作って近隣の幼稚園や保育園で人形劇を上演したことも。元々、おもちゃを手作りして遊ぶことが好きだったので、ゼミ活動は本当に楽しい時間でした。先生方も学生を温かく見守り、主体性を後押ししてくれました。
そんなアットホームな環境の中でのびのびと学んだ経験が、子どもの自由な感性を大切にする子育て支援の実践につながっています。 -
良いおもちゃとは何か。
この気付きが"遊び"を届ける
活動の原点に。 -
大学卒業後は、幼稚園に約7年間勤務。その後、夫の転勤に伴い東京へ。間もなく第一子を出産しましたが、知り合いのいない土地での子育ては本当に大変でした。育児から離れたいと思うことも。
そんな時、"託児所付き"という言葉に惹かれて通い始めたのが、近所のおもちゃ美術館が主催する「おもちゃコンサルタント養成講座」でした。それまで"良いおもちゃ=安全で壊れにくい"という保育の視点しかなかった私にとって、美しい色や形、心地よい音といった芸術的な視点は新たな発見でした。そして、おもちゃには心を豊かにする力があることを知り、おもちゃや遊びをもっと多くの人に届けたいという思いが芽生えたのです。現在、福岡おもちゃ美術館では、難病や重度心身障がいのある子どもへの遊び支援に取り組んでいます。「病気や障がいの有無に関わらず遊びを楽しんでほしい」という思いから始まったこの取り組みは、私のライフワークとなっています。
今は昔に比べておもちゃや遊びが多様になりました。一方で、遊びに効果や成果を求め、本来の遊びの良さが見失われつつある気もします。賢くなることや上達することを求めて遊ぶのではなく、純粋に遊びを楽しむ。そこに面白い気付きや感動があると思うのです。そうした心がワクワクするような遊びを広く届けていきたいです。
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世代を超えた交流を育み、
みんなで子育てを支え合う場にしたい。 -
現在、館長を務めている福岡おもちゃ美術館は、私が立ち上げから携わった2館目の施設です。新館の立ち上げという大きな仕事に携われるのは年齢的にこれが最後と思い、これまでの経験をかけて取り組みました。
しかし、コロナ禍で想定外の問題が続出。特に大変だったのが、建築に必要な国産材の調達でした。コロナ禍で国産材の価格が跳ね上がったのです。そんな時、朝倉市で木材事業を手掛ける企業から提案があり、樹齢100年超えのヒノキをなんとか調達することができました。福岡おもちゃ美術館のフローリングは、この時の100年ヒノキを使用しています。このヒノキを通じて、子どもたちに自然を大切にする心を育てていくことも私たちの役割の一つだと考えています。また、この福岡おもちゃ美術館でさまざまな人が出会い、世代を超えてみんなで子育てできる場にすることもこれからの目標です。
学生の皆さんにとってもコロナ禍は大変だったと思います。日常が戻った今、大学で出会う友達や先生、他世代の人との出会いを大切に人とのつながりをたくさん経験してください。その縁がいつか支えになる時が来るはずです。
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