経済のグローバル化と
国民経済の適切なバランスとは?
 現在、「グローバリゼーションと国民経済」をテーマに研究しています。具体的には、アメリカ経済を対象に、「どの程度、自国の経済をグローバル化するべきか」という課題を研究しています。
 一般的に経済学では、貿易自由化によってグローバリゼーションが進むと、世界経済は発展すると考えられてきました。その言葉通り、1991年の冷戦終結以降、世界経済は、グローバリゼーションとともに成長した時代でした。ところが、2008年の世界金融危機以降、世界貿易の成長率は低下。さらに、自国の産業を守るために輸入に制限をかける保護貿易政策を展開する国の登場や経済摩擦による対立が激化するなど、グローバリゼーションの後退や内向化、分断が進んでいます。
 では、なぜ経済発展に不可欠なグローバリゼーションが後退しているのでしょう。私は、経済活動そのものを支える„社会基盤"、つまり国民経済がグローバリゼーションを支えることができなくなったことが原因と考えています。事実、アメリカでは1990年以降、対外生産への依存や移民の大量流入などのグローバリゼーションが進んだ結果、雇用の減少や貧富の差などが拡大。多くのアメリカ国民がその恩恵を受けていないと感じていたのです。これをうまく利用したのがドナルド・トランプ氏で、低所得層の白人の支持を得て大統領の座についたといわれています。
 では、どの程度、自国の経済をグローバル化すべきなのか。例えば、私たちが外で働いて社会と関わり続けるには、健全な心身を支える「家庭」という生活基盤が安定していることが大事ですよね。これと同じように、社会基盤が崩れない、自国民が安心して暮らせる程度で、グローバリゼーションを進めるべきであるというのが私の考えです。そして、世界が一つとなってさまざまな課題を解決していかなければならないこれからの時代、各国が世界の一員として役割を果たすには、自国の社会基盤が安定的に機能していることが必要ではないでしょうか。
 さて、皆さんは世界をどのように見ますか?日本を出て、世界の地に立った時、自分を支えている„基盤"を感じることができるでしょうか。ぜひ、一度世界に足を踏み出して考えてみてください。
現在の研究テーマを
研究しようと思ったきっかけは?
大学3年生の時に受講した「外国為替論」という授業がきっかけです。当初、単なる手続業務でしかないと思っていた「貿易実務」が、実は国際通貨問題という世界全体に影響する大きな問題の根源であることを理解した時、真理を見出す研究活動の奥深さに感動。研究の道に進むことを決めました。
学生時代は
どのような学生でしたか?
「やってから考えよう」という好奇心の塊のような学生でした。「人生一度きりなので、後悔したくない」という信念を大切にして、さまざまなことに挑戦しました。特に、40日間10万円で敢行したアジア放浪旅は、辛すぎて忘れられません(笑)。
就活直前の3年生にゼミの先輩がアドバイス!
3年生が本格的に就職活動を始める夏から秋頃、4年生やゼミ卒業生が自らの就活体験を語る機会を設けています。「この対策はおすすめ」「私はこれで失敗した」などの先輩たちのリアルな就活体験談は、就職活動に不安を抱える3年生にとって心強いアドバイスとなっています。
 ゼミでは、アメリカ経済が直面している課題を取り上げ、各自で調査・研究し、自らの意見を発表するスタイルで進めています。2023年度は「アメリカ経済の内向化と世界経済の行方」に焦点を当てて研究を進めています。その中で、「最低賃金の地域的格差はなぜ生じるか」、「トランプ支持層はどのような特徴を持っているか」などのテーマに取り組みながら、多様な側面からアメリカ経済が抱える課題の本質を考察します。
 こうした演習を通して、3年次は資料の探し方や読み方、論点の整理の方法などを習得します。4年次では3年次に身に付けたことを生かし、卒業論文の執筆に取り組みます。卒業論文のテーマは、アメリカ経済に関連するものであれば、自由です。書きやすいテーマよりも、学生の好奇心や関心のある社会問題をテーマにすることをすすめており、毎年個性豊かなテーマが揃います。
 私がゼミで重視していることは、情報を収集し、分析し、説得力のある論文にまとめるスキルはもちろんですが、問題を見出し、掘り下げることに喜びを感じ、探究する姿勢や態度を身に付けることです。卒業論文のテーマで学生の興味関心を重視しているのも、知的好奇心こそが研究の原動力と考えるからです。ですから、4年次には卒業論文で興味関心のあることに納得いくまで掘り下げてほしいと思っています。
 常に知識の更新が必要なこれからの時代において、「探究する力」は必要不可欠な力です。ゼミで身に付けた「なぜだろう?」と感じる力、当たり前を„当たり前"として見逃さない力があれば、変化の激しい社会でもしっかりと本質を見極めることができます。また、旺盛な好奇心が人生そのものを豊かにしてくれるでしょう。
 そして、「人と違う考え方でも大丈夫」ということもゼミで学んでほしいです。問題の捉え方や好奇心のツボは人それぞれ。ゼミでさまざまな意見に触れ、違いを大切にしながら、互いに学び合う姿勢を身に付けてください。
Page Top ▴