イノベーションを生み出すための
最適な環境や制度、仕組みとは?
 私の研究のメインテーマは、「地域イノベーションシステム」です。そもそもイノベーションとは、新しい技術やサービスなどによって新たな価値が生み出され、社会全体に大きな影響を与えることをいいます。このイノベーションこそ、経済発展の原動力です。そのため、企業や地域、国でイノベーション戦略が積極的に展開されています。
 では、イノベーションはどのようにして生み出されるのでしょうか。多くの場合は複数の人や組織が密に関わり合い、その相互作用によってイノベーションが生まれます。また、環境や制度、仕組みもイノベーションの創出に大きく影響しています。アメリカのシリコンバレーは、AppleやGoogleなど今をときめく企業が集積し、イノベーションの世界的な中心地となっています。多くの地域や国は、シリコンバレーのような場をつくることを目指しています。しかし、このイノベーションが生まれる最適な環境を創出することが何よりも難しい課題なのです。

 イノベーションを生み出しやすい場・空間をつくるために、環境や制度、組織などがどのように関連して機能すれば良いか。私の研究では、このイノベーションを生み出すためのシステムに着目。中でも、地域のイノベーションシステムにクローズアップしています。例えば、企業と大学の共同開発事業などのイノベーションを生み出すための組織間関係のあり方や、国や地方にとっての最適なイノベーションシステムを考えることも研究の一つです。
 この研究を続ける中で、時代の変化とともにイノベーションを取り巻く環境も変化していることを感じます。
 かつて研究開発といえば大企業が持つ大きな研究所でした。現在は、世界中でスタートアップ企業が画期的な技術やサービスを生み出しています。このことから、さまざまな企業とコラボレーションする身軽さがイノベーションのカギを握っているように思います。こうした時代の流れの中、日本と日本企業の動きに私たちの未来がかかっています。
このテーマを研究しようと
思った理由は何ですか?
産業のあり方を変えるのも、地域のあり方を変えるのも「イノベーション」です。それだけ経済を動かす力があるイノベーションですが、「こうすればイノベーションが起きる」ということは分からない。分からないことが面白くて研究を続けています。
学生時代に
熱中したことは何ですか?
個性的な先輩や同期と過ごしたゼミ活動です。経済学や世の中のことについて、時には朝まで語り合ったこともありました。自分にない考え方を知れることが楽しく、濃い時間でした。
地域や企業と連携して実践的に学ぶ。
今年度は2つのプロジェクトを実施。1つは、うきは市をフィールドにした地域の観光資源を使った滞在型観光の提案。もう1つは、糸島市の企業と連携し、同社が取り組むSDGsを切り口とした企業ブランディングの提案です。それぞれうきは市と企業にプレゼンテーションを行い、さらに11月に開催される商学部主催の懸賞論文にも提出予定です。
 「地域」は、企業のビジネス活動の場の1つです。他方、「ビジネス」の力で地域活性化を目指す取り組みが各地で見られます。こうしたビジネスの舞台としての「地域」と、地域活性化の手段としての「ビジネス」という2つの視点から、学生は地域とビジネスの関わりについて学びます。
 ゼミでは、学習スタイルの1つとして輪読を行います。地域ビジネス論に関する文献を全員で読み進めながら、お互いの意見や解釈を議論し合い、地域ビジネスに関する基礎的な知識を習得します。同時に、文献の読み方、ディスカッションやプレゼンテーションの技法も身に付けていきます。
 こうした座学で得た知識やスキルをアウトプットするフィールドワークも実施。地域や企業が抱えるリアルな課題について、グループまたは個人で解決策を導いていきます。
 フィールドワークでは、企業やまちづくり現場の視察および調査を実施。また、それぞれの担当者へヒアリングをし、ディスカッションなども行います。現場に足を運んで自らの目で状況を捉え、現地の方の話を聞くことは、地域ビジネスを考える上では不可欠です。現場で見聞きして体感したことは、本や論文から得た知識の理解をより深めてくれます。さらに、立場や世代の異なる人と話したり議論したりする経験を通して、社会に出た時に必要とされるコミュニケーション力や相互理解の姿勢を身に付けることも目指しています。
 将来、地域活性化やまちづくりに携わりたいという人はぜひ戸田ゼミへ!
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