2019.11.18
大林啓吾先生(千葉大学准教授)をお迎えして法学部主催講演会(演題「トランプと憲法」)を開催しました。
2019年11月18日(月)、大林啓吾先生(千葉大学准教授)をお迎えして法学部主催講演会(演題「トランプと憲法」)を開催しました。大林先生は、アメリカと日本の判例動向の比較などを通して、現代トランプ政権下でのアメリカ憲法の現状についてご講演されました。
講演会では、先生が最近のアメリカ留学の際に見聞した憲法問題(マスターピース判決、キャバノー判事公聴会など)、トランプ大統領就任後の2018-19年開廷期のアメリカにおける判例動向についてお話しいただきました。判例の1つとして、The Slantsというロック・バンドがバンド名を商標として出願したところ、米特許商標庁(USPTO)が登録を拒否したことが発端となった事件が印象的でした。講演において大林先生は、連邦最高裁が、slantという東洋人にとって侮辱的な言辞の商標登録を拒否することは、合衆国憲法修正第1条で保障される表現の自由を侵害すると判断したことを紹介されました。
講演会では、特に「トラベルバン」と呼ばれる大統領命令をめぐる裁判についての詳しい説明がありました。「トラベルバン」は3次にわたって出された、特定国からの合衆国への入国を制限するものです。ご講演の中ではトラベルバンに関するトランプ対ハワイ事件を取り上げられ、連邦最高裁の多数意見が政教分離違反などの主張を退けて最終的に命令を合憲にしたこと、数名のリベラル派の裁判官が違憲と判断したことを紹介されました。
大林先生はご講演において、移民問題、Twitter、司法妨害、最高裁判事の任命という4つのキーワードから、トランプ政権の憲法意識の不在を指摘されました。講演の最後では、大統領選挙を間近に控えるアメリカで、裁判官人事、各州の自治政策、憲法秩序形成の動向などが注目される旨をご教示いただきました。
アメリカの憲法論議をリアルタイムで観察されていた大林先生のご講演は、私たち法学部生にとってとても新鮮で興味深く、学習意欲を高めてくれるものでした。講演会を機に、アメリカ憲法をもっと詳しく学びたいと思いました。また、留学や裁判の傍聴への関心も高まりました。
記:井本日菜子(法学部法律学科3年)