2018.12.11

安井隆博氏の講演会が開催されました。

 平成30年12月11日(火)、「仮想通貨とそれを支える記録技術とそれらの応用可能性について」という演題につき、株式会社ナチュラルの安井隆博氏にご講演いただきました。講演でお話しいただいたことは大きく分けて3点です。

 1つ目は、FinTechやブロックチェーン技術、仮想通貨の成り立ちついてでした。まず、金融(Finance)の世界は、現在テクノロジー(Technology)との結びつきを強めており、銀行や投資はもちろん、少額から誰でも行えることが特徴のクラウドファンディング、交通系ICカードやQRコードを用いてする電子決済などその範囲は日常にも広く及んでいることのご紹介がありました。ブロックチェーン技術に関する論文は平成20年、サトシ・ナカモトという人物によって発表され、仮想通貨は平成22年5月22日、ピザの対価として支払いに初めて使用されたようです。

 2つ目はブロックチェーンの仕組みについてでした。ブロックチェーン技術を用いてAからBにビットコインを送る場合、まず、インターネット上に特殊な関数処理が施された当事者間の取引データが送信されます。その次に、ネットワーク上の参加者(ノード)が、予め定められた検証項目(たとえば、Aは真に自分の意思でビットコインを送っているか、取引内容に誤りはないか)を満たしているか、取引データの正確性を検証します。検証を通過したデータはひとつの塊に、すなわちブロック化されます。ブロック化が済むと、作成されたブロックがネットワーク上に送られ、他のネットワーク参加者が検証を行う方式が採用されています。以上のようなプロセスを経て、ネットワークの参加者が検証し作成したブロックが次々と繋げられることから、一連の記録技術はブロックチェーンと呼ばれています。

 3つ目はブロックチェーン技術の抱える問題点についてでした。ここでは、ブロックチェーン上で用いられている通貨が、法定通貨(現金)同様の安定性を保ち得るか、また、現金志向が強く、クレジットカードの利用率の低い日本において、仮想通貨は普及し得るのかという社会面での課題、中央管理者が存在しない(分散台帳技術である)ために、一つのトラブルを改修するのにも時間や手間がかかるという技術的な課題などが挙げられました。

 ブロックチェーン技術については社会的・技術的な課題がありますが、すでにこの技術を応用する取り組みが多数存在し、講演でもいくつか代表例が紹介されました。特に私が驚いたのは、地方自治体(岡山県西粟倉村)が仮想通貨(NAC)を用いた地方創生を試みている事例です。ブロックチェーン技術は、単に理系エンジニアやプログラマーのためだけの高度な仕組みではなく、今後広くわれわれの生活とも関わりうる仕組みであるので、将来仕事をする場面でも「よく分からない複雑な技術」と切り捨てずに、応用できる場面はないか探求していきたいと思います。

記:島崎 雄太(法学部法律学科4年)