2018.11.26

待鳥聡史先生の講演会が開催されました。

 2018年11月26日(月)、待鳥聡史先生(京都大学教授)をお迎えして、「地方自治体の二元代表制は何をもたらすのか―その政治的意味を考える―」と題する法学部主催講演会が4号館403教室にて開催されました。

 待鳥先生は、「現代アメリカ政治の相対化」を研究されております。待鳥先生の研究目標は、アメリカと他国との比較や時系列ごとの比較を通して、現代アメリカ政治の全体像を描き出すこととされています。

 本日の法学部主催講演会の内容は、以下の3点を挙げられました。それは、①制度分析の観点から、日本の地方自治を見直し、日本の地方自治体が採用している二元代表制の意味を明らかにすること、②地方自治体(都道府県、市町村)の制度的特徴と課題を発見すること、③今後の地方自治体が置かれる状況を念頭に置き、課題に対応するための提案を行うことでありました。

 本日の法学部主催講演会は、まず、日本の民主主義の制度分析を行い、統治エリートに分類される政治家および官僚が委任と責任の連鎖関係にあることが指摘されました。そして、日本の地方自治における統治エリートの分業関係については、首長と議会が別個に公選される制度である二元代表制が採用されており、この二元代表制の下で、首長は、予算案の提案権を有しているなどの政策面に関して強い権限を有しているが、人事面については単独で政治的任命を行うことができない、一方で議会は、政策に携わる権限を広く有しているほか、特別職の人事にも関与できることが説明されました。この点から、日本の地方自治体が二元代表制を採用している意味は、首長に権力を集中しながらも、議会も議案の議決により、緊張関係を保ち続けることにあると指摘されました。このような説明から、私たちは、地方自治体が採用している二元代表制の下での首長と議会の関係を理解することができました。

 本日の法学部主催講演会は、次に、地方自治体の制度的特徴について、首長が集合的な政策を担当し、議会が個別的な政策を担当するという安定的な棲み分けがされていることだとされました。このような制度的特徴から生じている地方自治体の課題は、財政制約の拡大により、首長と議会の政策上の棲み分けが維持されず、対立を引き起こす可能性、一体性がない会派が議会を運営している場合に体系的な政策を実現することの困難さであることが紹介されました。地方自治体の制度的特徴と課題の説明から、私たちは、議会運営の在り方において、会派の一体性が重要な要因であることが理解できました。

 最後に、本日の法学部主催講演会は、今後の地方自治体が置かれる状況から生じる課題に対応するために、議会に体系的政策を打ち出すための誘因を与える必要があると提案されました。具体的には、議会に予算提案権を与えるなどの権限を強化することによって、政策決定に対する責任を持たせることにより、建設的議論を行うことを挙げられました、その他にも、私たちが貢献できる課題解決の方法として、積極的に情報を収集し、住民全体の関心を高めることなどを紹介されました。

 本日の法学部主催講演会を通して、地方自治を考える際に政治的側面に関心を払う必要性、地方自治に関する課題解決には首長と議会の建設的な議論の重要性が強く印象に残りました。今後、法律を学んでいく際には、対象となる制度等の特徴を理解し、その課題を様々な視点から検討し、課題を発見し解決策を模索することが重要であると思いました。

記:法学研究科法律学専攻博士前期課程1年 成宮広理