2017.04.17

遠藤乾先生の講演会(新入生歓迎講演会)が開催されました。

 4月17日(水)、遠藤乾先生をお迎えし、「危機のなかのヨーロッパ―初めての国際政治―」と題する新入生歓迎講演会がチャペルにて行われました。

 遠藤乾先生は国際政治学を専攻されており、頻発するEU(欧州連合)の危機について研究されております。

 はじめに、遠藤先生は、「政治」とは何かということを取り上げ、政治学とは、一致しない多元的主体(他者、悪、限られた資源など)の中から秩序の形成を模索する行為に関する認識体系であるとおっしゃられました。 また、認識の方法には、プラトン的な思考、すなわち、理想の世界にあったものから現実のものを認識するような演繹的方法と、アリストテレスのように、対象物の本質を比較検討しながら、経験的に見極める帰納的方法があり、両者はすべての学問においてあてはめることができるとおっしゃられました。

 次に、遠藤先生は、EUの歴史や目的、EUで起こっている様々な問題についてお話しをなさいました。

 EUの目的は①平和(Peace)、②繁栄(Prosperity)、③権力(Power)の3つであり、1870年の普仏戦争以来、主権国家間で起こった戦争によって欧州が破滅的な被害を受けた歴史を踏まえ、主権国家を超えた「権力」として当該国家を制御するために発足しました。 経済面では加盟国間の自由貿易を推進するだけでなく、欧州市場の制御を行い、加盟国間で団結することで、欧州の対外交渉力を強化しています。

 2005年にフランスとオランダで欧州憲法条約の批准が挫折して以降、EUの体制を揺るがしかねない危機が多発しています。 最近の例を挙げれば、ギリシアを震源とするユーロ危機、2015年以降の難民危機や各地で起こったテロ、イギリスの国民投票でEU離脱という国民の意思が表明されたことなどです。 遠藤先生は、これらの危機を「欧州複合危機」と名付けています。 

 法学部では、法学だけでなく、政治学という普段新聞などで扱われている政治を検討していく学問もあるため、身近に感じることができました。 法学徒として、一層勉学に励んでいきたいと思います。

仲嘉 武史(法学研究科法律学専攻博士前期課程1年)