法学部「Seinan Vis Moot」チームに聞きました。
世界366大学が弁論を競う舞台に立った感想は?

2018年3月、オーストラリア・ウィーンで毎年開催されている「国際模擬商事仲裁大会(Vis Moot)」に、本学法学部が初出場を果たしました。九州の大学から唯一、世界の弁論の舞台に立った「Seinan Vis Moot」チームのリーダーの皆さんに、活動の経緯と成果について聞きました。

  • 松原 祐二郎さん

    松原 祐二郎さん
    法学部国際関係法学科4年
    (純真高等学校出身)

  • ダウンズ啓太ジャックさん

    ダウンズ啓太ジャックさん
    法学部国際関係法学科4年
    (佐賀北高校出身)

  • 林 桃子さん

    林 桃子さん
    法学部法律学科4年
    (クレイトンバレーチャーター高校出身)

  • 松原 祐二郎さん

    釜谷 真史准教授
    法学部国際関係法学科

2017年の日本大会見学を機に、「Seinan Vis Moot」チームが発足

釡谷:Vis Mootとは、国際取引で生じる架空の紛争を題材に、英語で弁論を戦わせる国際模擬商事仲裁大会です。全世界の法学部・ロースクールの学生を対象に、1993年から毎年ウィーンで、2003年からは香港でも開かれています。大会での弁論はもちろん、文献資料も、事前に提出する準備書面もすべて英語。また弁論を審査するのは実務で活躍中の著名な仲裁人であり、国際取引法務の最前線を体感できる大会となっています。

林:大会参加に先立ち、法学部学生有志で2017年2月に京都で開かれた日本大会を見学しました。大会では学生が申立人と被申立人のカウンシル(弁護人)として法的主張を競うのですが、同年代の学生たちが英語で法律議論を戦わせる姿に圧倒されました。正直、自分がその場に立つ姿を想像できなかったくらいです。

準備書面提出メンバーとコーチ陣
準備書面提出メンバーとコーチ陣
松原:日本大会の見学を機に、国際私法を扱う多田望先生と釡谷先生のゼミ生を中心にチームを立ち上げました。その後、法学部全学生に参加を呼びかけ、メンバーは1年次生から4年次生まで21人に。まずは日本大会出場を目指し、6月から定期的にミーティングを行い、Vis Mootの過去問を題材にして、国際商取引法や国際物品売買条約の文献資料を読み込むなど、準備を重ねました。

留学生や言語教育センターの今川京子先生のサポートとともに英訳
留学生や言語教育センターの今川京子先生の
サポートとともに英訳
課題提出前日の最終調整を行っている場面
課題提出前日の最終調整を行っている場面
 
ダウンズ:実は、参加した当初は活動に対して消極的だったのですが、夏休みのイギリス留学を機に意識が180度、変わりました。外国法の授業で法律の議論にまったくついていけず、自分は3年間、何をしてきたのか、と。このままじゃもったいない、Vis Mootの活動を通じて本気で法律を学んでみようと思い、夏休み明けから積極的に取り組みました。

まずは日本大会に出場し、日本語の部で優勝を果たす

受賞した森本優香さん
受賞した森本優香さん
日本大会表彰式にて
日本大会表彰式にて
松原:日本大会には英語の部と日本語の部があります。2月に行われた大会では日本語の部で優勝し、当時3年次生の森本優花さんが最優秀弁論者に選ばれました。もともとは日本大会に出場することをゴールに設定していたので、望外の成果を全員で喜びました。ただ私個人としては、出場した英語の部で成果を出せなかった悔しさも残りました。

ダウンズ:実は英語の部の参加者の調整が直前までうまくいかず、英語が苦手にも拘らず、松原さんが自ら手を挙げたという経緯がありました。当日は、リーダーとしての責任感を胸に、懸命に英語で主張する彼の姿に感銘を受けました。

釡谷:責任感といえば、ウィーン大会の参加登録に向けて懸命に努力する林さんの奮闘ぶりも印象的でした。

林:先生方をはじめ、コーチを務めてくださった姜成賢弁護士の「ぜひ世界大会にも」という助言もあって、香港大会に参加しようという話になりました。が、決めたのが遅すぎて申請した時には既に締め切られていたのです。そこで香港がダメなら、ウィーンに挑戦しようということになりました。ここで諦めたら今までのみんなの努力と先生方のサポートが無駄になってしまう、という思いひとつで動いていた気がします。

ダウンズ:林さんも私同様、当初は活動に対して腰が引けていたのに(笑)。みんな活動を通じて、ずいぶん成長できましたよね。

世界の論戦の舞台に立つ。この感激を後輩に伝えたい

ウィーン大会レセプションパーティーにて
ウィーン大会レセプションパーティーにて
林:3月に行われるウィーン大会を前に、昨年10月に発表された課題に対して12月に申立人側の、1月に被申立人の準備書面を提出。大会では、この準備書面をもとに弁論を繰り広げます。初めて訪れたウィーンで、初めて立った論戦の舞台は、とても楽しい場所でした。1年前には想像もできなかった難しい法律の議論を展開し、仲裁人の質問に答える自分がそこにいたのです。来年は卒業ですが、できることなら、また出場したい!という気持ちでいっぱいです。

ダウンズ:同感です。ウィーン大会では各大学4試合を戦うのですが、私と松原さんが臨んだのは、その初戦。主張の骨子はすでに提出済みだからその場で変えられないし、とにかく今まで取り組んできた成果を全て出そう、仲裁人の質問に対しても学んだ知識を総動員して対応し、ベストを尽くして後に続くみんなのために勢いをつけようという思いでした。楽しかったですね。


対Stanford大学戦
松原:今年の大会には世界約80カ国から366校が参加。本学は、本選に進む64校には残れませんでしたが、何より、1年次生も含めて世界の論戦の舞台に立った経験が大きな財産になると思います。後輩の皆さんには、日本大会では英語の部も含めて入賞し、ウィーンでは本選の常連校になれる実力を磨いてほしいと、願っています。

ダウンズ:4月からは、新1年生から新3年生までの新メンバーを迎え、2018年度Seinan Vis Mootの活動が始まりました。私や松原さん、林さんをはじめ、昨年度のメンバーの多くが引き続き今年度も活動を継続します。昨年度の経験を新メンバーと共有し、活かしながら、Seinan Vis Mootの新たな歴史を創っていきたいと思っています。

釡谷:人前で話すこと、そして目標に向けて共同作業を重ねることは、人を成長させる絶好の機会。そのことを深く再確認した1年でした。体験を話してくれた3人も、それぞれ見違えるほど頼もしく成長してくれました。社会のどんな場所に進もうと、この経験は間違いなく糧になると思います。Vis Mootに限らず、西南学院大学法学部にはチャレンジの場がたくさんあります。ぜひ自分なりの機会を見つけて、自分自身の成長につなげてほしいですね。

対戦したNalsar大学メンバーと仲裁人と一緒に
対戦したNalsar大学メンバーと仲裁人と一緒に