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余談

テキストでは,集合は,こうした論理学の基礎を身につけるためというより, 様々な記号の扱い方や,集合演算の仕方などを中心に書かれています.これは, 現代数学の歴史と関係があります.

我々が高校までに学習する数学は,19世紀までに構築された古い数学が元になっ ています.19世紀までに発展してきた数学は,数の代数的性質,図形の幾何学 的性質,そして微分積分によって支えられていました. それが20世紀に入ると,集合論を基礎に,より抽象的な性質のみを 基盤とする広大な数学体系が構築されていくのです.そこでは,今まで 直感的に理解出来なかった,「無限」という概念をはじめ,様々な抽象的概念 が積極的に定式化され,より洗練された数学体系が構築されていきました.

物理学のように,経済学も理論構築の言語に数学を採用した以上,最先端の 経済学で用いる数学も,集合論を基礎とした現代数学の体系に 則したものになりつつあります. したがって,将来,経済学を専門とする職に就いた場合,専門的な論 文を読んでいて,何らかの形で集合論に出会うことになると思います. そのときの基礎として,テキストでは集合の紹介をしています. さらに,現代数学の潮流のさわりになじんでもらうためにも, 「関数」も集合の写像という形で紹介されているわけです.



Copyright: Wataru Shito
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