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Week 1

集合について学びます.テキスト [3, pp.1-21] を読んでおいてください.

テキストでは,集合は,「関数」を学ぶ際の導入として書かれています.しか し,講義では,関数の導入としての集合ではなく,皆さんの論理的思考を助け る道具としての集合を学びます.

例えば相手を説得する際,一生懸命論理的に説得を試みると思います.し かし,論理学の基礎のない人は,言っていることに一貫性がなかったり,また 相手の論理についていけなくなる場合があります. ここでは,集合をベースに,必用条件,十分条件,背理法,対偶を理解するこ とを目標に学習します.

それでは,対偶を例に,皆さんに講義のさわりを体験してもらいましょう. 今,「AならばBである」という主張があったとしましょう.この主張の対偶 とは,「BでなければAでない」を指します. 対偶には,「AならばBである」という命題が真である場合,その対偶, 「BでなければAでない」も必ず真になるという性質があります.

今,ある人が,「授業に数学を用いるから,経済学部は人気がなくなるんだ」という主張を 展開したとしましょう.この主張が正しければ,その対偶も必ず正しくなけれ ばなりません.この主張の対偶は,「経済学部の人気があれば,その学部では授業に 数学を用いていない」ということになります.さて,この対偶は,常に正しいでしょ うか.人気のある大学の経済学部を見てみれば,その答えは自ずと分かるでしょう.

最初の主張は,なんとももっともらしく聞こえるのですが,論理学のさ わりを学習した皆さんには,その対偶を見ることにより,この主張がいかに論 理的に脆いかということがお分かりでしょう.

元の命題とその対偶が常に真であるという性質は,集合を用いると簡単に理解 することができます.講義では,集合の定義やら記号などが出てくると思います が,最終的な目的は,始めに挙げた,必用条件,十分条件,背理法,対偶を理 解することです. 記号に惑わされず,講義の目的を達成し,論理的な思考を身につけてください.



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Copyright: Wataru Shito
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