新入生へのメッセージ

 注:これは、法学部ゼミナール連合会の諸君の主催で、1998年4月8日に開催された、02期生対象の法学部新入生ガイダンスの際に配布された小冊子に、ゼミ連の諸君の求めに応じて寄せた小文である。
 なお、同文を、03期生に対しても託している。

 奥 博司(おく ひろし)

 新入生の皆さん、入学、おめでとう。

 高校までの生活と比べ、大学生活の特徴をひとことで述べると、それは「自由」です。講義の選択も、高校までと比べて、はるかに自由になります。特に、法学部の学生さんに対して、我々は、意識的に、可能な限りの自由を認めています。また、私の講義を含め、出席をとらない授業も多くあります。言い換えれば、授業に出なくても、少なくとも、その都度注意を受ける、ということはありません。このような環境ですから、まわりのおとなからいちいち干渉されることをいやがっていた諸君にとっては、非常に快適だと思います。自覚的に自分の将来を考え、自らの選択で自分の将来を切り開こうという意欲あふれる諸君にとっては、自らの可能性をのばすチャンスがひろがっているといえるでしょう。しかし、いうまでもありませんが、このような自由には、責任が伴います。(大学生活の一時期、意識的に何もせずに時間を過ごすことは、場合によっては有意義だと思いますが)漫然とときを過ごしたとしても、誰からも注意されることもなく、あっというまに4年間が終わってしまうことも、大学生活の現実です。自分の興味関心とは無関係に、安易に授業を選択し、結果、何を得ることもなく無駄に時間を過ごすことになったとしても、それは、諸君の責任以外の何物でもありません。

 このような大学生活ですから、ぜひ、自分を大切にし、有意義な4年間を過ごしていただきたいと思います。その際、ぜひ、自分にとっての幸せとは何か、ということを考えていただきたいと思います。それも、安易に、まわりのひとや世間の風潮にふりまわされるのではなく、自分のものさしで考えていただきたい。また、稚拙な考え方を金科玉条とするのでもなく、じっくりと自分をみつめ、見聞を広め、違った考え方にも接し、より深く考えていただきたい。4年後に、否応なしに直面する諸君の進路についても、単に、「有名企業だから」といった安直な選択ではなく、また、資格(も、ときと場合によっては重要ですが)といった、まわりの評価に安易によりかかるのでもなく、一人前の人間としての自分の生き方をもとに考えていただきたいと思います。

 加えて、申し上げたいことは、勉強もして下さい、ということです。おそらく、皆さんは、しんどい受験勉強を経て入学してこられたことでしょう。大学に入ったら、ひたすら遊びたい、と思うのも、無理からぬところです。そして、サークル活動、アルバイトや恋愛等、勉強以外のことに時間を割くことも、必要なことだと思います。しかし、頭を鍛えることも必要です。それゆえ、勉強もして下さい。それも、他律的に、決まった範囲の中で行う受験勉強ではなく、自らの興味のつきるまで、ひたすら調べ、考える、本当の意味での勉強を行って下さい。きっと、心からの充実感を味わうことができると思います。

 ぜひ、皆さんは、これから始まる大学生活の中で、皆さん自身の生きがいを見つけ、その上で卒業していって下さい。もし、私が、そのほんの少しのお手伝いでもできるとすれば、私にとっても、うれしいことだと思っています。

 4年間、どうぞよろしく。


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