ASの主な仕事は対戦相手のデータ分析です。まず、過去の試合映像を確認しながら、1プレーごとに選手の動きやボールの流れを専用アプリに入力。1試合につき100プレー以上、さらに7〜8試合分の映像を見返してデータを収集します。ここから必要なデータを抽出し、戦略につながる分析を行います。
こうして得られたデータから、ボールが集まりやすい選手やそのときのフォーメーション、状況別のプレーの傾向、さらには選手の癖まで読み取るのがASの役目。そして、これらの分析結果を「対戦相手分析シート」としてまとめ、試合前に選手やコーチにプレゼンします。このシートをもとに試合の戦略が練られるため、ASの責任は重大です。強豪校と対戦する際は1年かけてデータを分析することもあり、常に数字と向き合う日々です。
また、データ分析は試合中にも行います。フィールド外からリアルタイムで相手の傾向を捉え、コーチや選手に共有します。敵チームがプレースタイルをガラッと変えてくることもあり、その変化に対応できるかはASの分析にかかっているため、試合中は一瞬たりとも気が抜けません。
さらに、練習メニューを作るのもASの仕事です。分析結果をもとに対戦相手が得意とするプレーやチームの弱点を補強するプレーなどを再現し、実戦を想定した練習を組み立てます。数百種類以上あるといわれる戦術に対して、対応できる引き出しを増やし、どんな局面でも勝利に結び付けられる練習を提供することがASの役割です。その結果、チームが勝利し、選手やコーチが「分析のおかげで勝てた」と言ってくれる瞬間こそ、最大のやりがいです。
データ分析に向き合う中で実感するのは、「数字」がASとしての発言に自信を与えてくれることです。「このチームは足を使うプレーが多い」という分析も、数字という裏付けがあることで説得力が増し、戦略の精度も上がります。逆に、「勘」で感じていることが「数字」として表れた時は、自分の観察が正しかったという確信と手応えを感じます。
一方で、数字からどれだけの情報を読み取れるかは、アメリカンフットボールをどれだけ理解できているかにかかっています。そのため、選手と積極的にコミュニケーションを取り、フィールドでの駆け引きや試合中の思考を選手から学び、「アメフトIQ」を高めることを大切にしています。選手が何を見て、どう考えてプレーしているか。これを理解することで、分析の視点は大きく広がると感じています。
ただし、どれだけ精度の高いデータ分析ができても、それが正確に伝わらなければ意味がありません。数字をただ並べるのではなく、「伝わる言葉」に変えて届けることが現在の私の課題です。
チームは現在、「九州制覇」を目標に掲げ、全国大会出場を目指して挑戦を続けています。その中で私がASとしてできることは、戦略の土台となる“気付き”をデータから導き出し、選手を後押しすること。再び全国の舞台に立つために、分析力と伝える力を磨き、チームを勝利へ導きます。




