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大学院時代に塾を開業。
恩師との出会いが教育者としての指針に。 -
私が塾を開いたのは、大学院在籍3年目の時です。きっかけは、両親から「もう学費は出さない」と告げられたことでした。大学に6年間、大学院に2年間通わせてもらい、さらに「もう1年、大学院に通いたい」とお願いしたところ、さすがに断られてしまったのです。
そこで、学費を稼ぐために始めたのが、進学塾でした。もともと大学1年生の頃から家庭教師のアルバイトをしており、多い時には15人もの生徒を担当していました。また、市販のテキストでは物足りず、中学3年分・5教科全てのオリジナルテキストを自作し、その子に合った指導法を自分なりに実践していました。塾の開業は学費のためでしたが、教える仕事には心からやりがいを感じていました。
今思えば、私はずっと「面白い勉強があること」を知らなかったのです。それを教えてくれたのが岩尾先生です。そして、大学院時代に学んだ哲学者たちの言葉は、今、私が子どもたちと向き合う「構え」となっています。
学生時代に自作したテキストは、改版を重ね、現在も活用中 -
自分の頑張りも、
他人の夢も大切にできる人に。 -
開業当初は、受験のための学習塾でしたが、続けるうちに、既存の教育の枠に収まらない子どもたちがいることに気付いたのです。受験というレースを続けることで、その子の独自性が損なわれてしまう。ならば、全員がそのレースに参加しなくてもいい。そう強く思うようになりました。そこで、数年前に通信制高校とフリースクールを立ち上げ、さまざまな背景を持つ子どもたちを受け入れています。
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本を読もう。
思考をかき乱す言葉と出合おう。 -
唐人町寺子屋では、数年前から通信制の高校生も含めた「哲学対話」という授業を行っています。きっかけは、「高校生たちに話す場をつくったら面白いかも」とひらめいたことでした。アイデンティティーや宗教など、時に難しいテーマでも自分の言葉で語る生徒の姿には毎回驚かされます。私が想像する以上に深く考え、真剣に対話する彼らから学ぶことも多く、私にとっても大切な時間となっています。
モラトリアムをたっぷり過ごした私が学生の皆さんに伝えたいことがあります。それは、ぜひ本を読んでほしい。特に難しい本を読んでほしいのです。自分の思考の中だけで生きる限り、人はなかなか変わりません。むしろ、抵抗を覚えるような言葉や考え方をあえて取り込み、思考をかく乱させることで、初めて動き出せることがあります。もし、毎日に悶々としていたり、アルバイトやゲームに時間を費やし過ぎていたりするなら、本はきっとあなたの思考をかき回し、新しい扉を開いてくれるはずです。

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一人でも多くの命を救うために、小さな発信機ができること全てをやる。