有限会社黒亭 取締役社長 平林 京子さん 済々黌高等学校出身 2001年 経済学部経済学科卒業

アルバイトを通して、
社会の中で成長する
喜びを実感した学生時代。
 高校時代から「地元熊本から出て暮らしてみたい」という願望があり、英語が好きな科目だったことと明るく自由な校風に引かれ、西南学院大学を志望。祖母がラーメン店を営んでいたことから、経済学を学ぶことを決めました。
 在学中は、2学年下の妹と2人暮らしをしながら、勉強やアルバイトに励んでいました。経済学の学びで印象に残っているのは、文系でありながら数学の知識を多用する点です。難しかったですが、新たな知識に触れるたび、刺激を受けたことを覚えています。また、需要と供給の関係や資本主義の原理原則など経済の基礎的な考え方は、現在の経営者としての基盤になっています。
 勉強以外で熱心に取り組んだことはアルバイトです。飲食店やコールセンター、アンケート調査などさまざまなアルバイトに挑戦しました。中でも、4年間続けたピザ店での経験は思い出深く、他大学の学生と協力しながら働く中で、自分の役割を意識して行動する大切さを学び、社会の中で成長する喜びを実感できた貴重な経験でした。当時の仲間とは現在もSNSを通して交流しています。
あっさりコクのあるスープと焦がしにんにくが「黒亭」の特徴
思い出の味を守るため、
会社員を辞めて飛び込んだ
ラーメン修業と社長業。
 現在は、熊本ラーメン専門店「黒亭」の3代目社長として4店舗を運営しています。元々、「黒亭」は昭和32年に祖父母が創業し、私と妹も幼い頃から黒亭のラーメンを食べて育ちました。約20年前に祖母が病で倒れた際、「家族の思い出が詰まった店をなくしたくない」「黒亭のラーメンを好きでいてくれるお客さまや従業員を悲しませたくない」という思いから、姉妹で跡を継ぐことを決意。勤めていた会社を辞め、黒亭の社長として新たな一歩を踏み出しました。
 最初に取り組んだのはラーメン作りです。師匠である大叔父のもと、手取り足取り教わりながら伝統の味を体で覚える日々。豚骨スープにチャーシュー、焦がしにんにく油の作り方も習得し、全てに自信を持って提供できるようになるまでに約3年の月日を費やしました。
 現場で働いて実感したのは、20代の私でも音を上げるほどの重労働を、祖母が70歳まで50年間続けてきたことです。その偉大さに圧倒される一方、ラーメン作りの奥深さと厳しさを痛感しました。そして、「この店を絶対になくしたくない」という思いはより強くなりました。そこで、「100年続く味と店」を目標に掲げ、一緒に未来をつくる仲間を増やしていくことを決めました。
 そのために、働く環境を見直すことに。安心して長く働いてもらえるよう、正社員制度を導入しました。店長を目指せる道をつくるために店舗も拡大。ラーメン作りや接客・サービスに専念できるよう、業務のDX化も進めています。味を守るのは「人」だからこそ、「人」を第1に考える組織づくりを実践し、100年企業を目指して次世代の担い手を育てています。
コロナの苦境を乗り越えた今、
食べる人も、作る人も
幸せになれる1杯を。
 祖母から「黒亭」を受け継いで約20年。ここ10年は、熊本地震や新型コロナウイルスという未曾有の困難に見舞われ、廃業の危機も経験しました。今、こうしてラーメンを作ることができているのは、地域の方々や全国の黒亭ファンの支えがあったからだと実感しています。だからこそ、社員には「ラーメン屋は素敵な職業なんだ」と伝えることが私の役割だと思っています。その一歩として、心と体も満たされる働き方を目指しています。昨年からは年間休日を106日から120日に増やし、健康に働ける環境を整えました。また、他業種に劣らない給与水準を目指し、売上拡大の柱となる新店舗の展開や海外向け商品開発にも挑戦しています。今後は、熊本ラーメンの魅力を全国にPRし、地元に貢献していくことも目標の1つです。
 大学4年間の学びは人生を支える力になります。どうか失敗を恐れず、さまざまなことに挑戦してください!
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