

心理学的手法で解明し、マーケティングに生かす。
私の主な研究分野はマーケティングです。その中でも、「消費者行動論」と「広告効果論」を専門とし、これまで数値化されてこなかった消費者の“心、感情”を心理学的手法で明らかにし、マーケティングに活用することを目的としています。
現在の研究テーマは、大きく分けて2つあります。1つ目は、「セルフライセンシング効果」に関する研究です。セルフライセンシング効果とは、事前に行った徳行または悪行によって、その後の行動に対する「罪悪感」が減少・増加するメカニズムを説明する概念です。例えば、「善いことをしたから、少しくらい悪いことをしても構わない」と自分に甘くなるように、徳行によって得た“免罪符”が罪悪感を減少させ、結果的に反社会的行動を促すことがあります。人が自分自身に“免罪符”を与える生起メカニズムを研究で明らかにし、マーケティングや企業戦略への応用を目指しています。

2つ目は、広告における「感動」が消費者に及ぼす影響についての研究です。近年、「感動」を喚起する広告が多く見られ、「感動」が人の価値観に影響を与えることは知られています。しかし、その具体的なメカニズムは明らかになっていません。そこで、「感動」が消費者の価値観にどのように作用するのかを、データ化して明らかにしようとしています。もし、「感動」が価値観の根本に働きかける手段として有効であることが明らかになれば、企業は商品やサービスの新たな価値をより効果的に訴求できる可能性があります。例えば、近年、SDGs関連の商品が増えていますが、日本人は利他的な価値に共感しにくいと言われ、その背景には「価値観」があります。研究の成果を活用し、心に響く広告で日本人の利他的な価値を高めることができれば、SDGs商品への購買行動を変えることができるかもしれません。
私たち消費者は自分で商品を選んだつもりでも、無意識下の感情に行動を左右されることや、広告や企業戦略の影響を受けていることがあります。だからこそ、「感情」が消費者行動にどう作用するのかを解明しようとする研究に面白さを感じています。
商品の差別化が難しい今、「感情」に着目したマーケティングは、企業や商品のファンを増やす有効な手段となるはずです。また、消費者は企業の活動や商品の背後にある意図を理解することで、企業戦略に流されずに判断するのに役立つのではないでしょうか。


どんな学生でしたか?

進んだきっかけは?





まず2年次は、マーケティングの基礎となるアンケート調査、販売データの解析、テキストマイニングなどの調査手法を学びます。中でも、テキストマイニングは数値では捉えにくい消費者の感情や意見をテキストから分析する方法で、口コミやSNSが重視される今、注目を集めています。
これらの手法を習得しながら、実際に活用するスキルを身に付けるために、2年次は2つのプレゼンテーション大会に参加します。その1つでは、商品の販売促進を目的とした企画を提案し、上位に選ばれると予算50万円で実際に広告を制作。さらに、効果測定まで行い、実際のビジネスに近い体験ができます。
さらに、3年次は本ゼミの特色である産学連携プロジェクトに挑戦します。企業や行政が抱える課題に対し、これまでに培った調査スキルや企画提案力を生かし、発案から社会実装までを目指します。そのため、学生はビジネスレベルの企画力や課題解決力が求められます。過去にはレトルトカレーの開発、博多駅でのデジタルサイネージ広告に取り組みました。
本ゼミでは、座学で学んだ理論をどうすれば実務に生かすことができるかを、実践を通して理解することが学びの柱です。学生はプロジェクト活動に取り組む中で、社会で役立つ実践的な“知”を自らの手で身に付けていきます。また、グループワークを通じてスケジュール管理やチームで活動する楽しさと難しさなど、社会人として必要な力を多面的に養います。実践的な活動が多い分、壁にぶつかることもありますが、挑戦を楽しむことができる学生には、これ以上ない成長の場です。「胸を張って学生生活をやり切った」と心から言える時間を共につくっていきましょう。
