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やりたいことは諦めない。
挑戦が広げてくれた視座。 -
「やりたいことは、全部やってみる」という性格は、今も昔も変わりません。サークル、アルバイト、教員免許、そして遊びに恋。そんな常に全力の学生時代の中で一番大きな挑戦が「留学」でした。せっかく4年間学んだ英語力を、自分の頭と心に刻み込みたい。そんな思いから、約1年間、アメリカへ留学しました。この時に培われたのが、「肌や瞳の色は違っても同じ人間」という価値観です。どこの国であれ、どんな肩書きであれ、物怖じしたり見下したりすることなく対等に向き合う。ビジネスの現場においてこの考え方や姿勢でコミュニケーションができるのは、フラットな価値観のおかげです。
また、今でもふと思い出すのが、ゼミでお世話になった故・今掘義先生です。先生が民間企業に務めていた頃の話はとても面白く、ビジネスの一端を垣間見ることができました。怒られることも多かったですが、人間味溢れる先生が大好きで、私にとって大切な恩師です。 -
発信機の開発を手掛け、
大手企業から独立を決意。 -
卒業後は、福岡を拠点にして海外で活躍できる企業を探し、九州松下電器株式会社(現・パナソニックコネクト株式会社)に入社しました。
1年目からアジア各国を駆け回る日々。3年目から5年間はイギリスの子会社に赴任し、数億のお金を動かす仕事を経験しました。
帰国後は、商品企画部門に配属。ここでさまざまな商品を考える中、あるアイデアが思い浮かびました。「認知症の祖母に発信機を持たせていたら、迷子になった時に見つけ出せるかもしれない」。最終的には、「電波の強い発信機を開発すれば、毎年多くの行方不明者や死者が出る山岳事故を減らせるかもしれない」と考えたのです。ところが、人命に関わる製品はリスクが大きく、大企業で取り扱うことはできませんでした。「それならば自分で作ろう」と独立を決意し、起業したのです。
発信機は手のひらサイズ。サービスの普及には大手スポーツブランドもサポート。
そして、約2年の開発期間を経て、「人命救助に貢献したい」という私たちの思いと、それを実現する特許技術を詰め込んだ発信機がついに完成したのです。 -
実現不可能と思えたニーズが
人命救助に貢献するサービスに。 -
現在、当社で提供している「ココヘリ」は、独自開発した発信機を使った会員制捜索サービスです。もしも、会員が山で遭難した場合、ヘリやドローンに搭載した専用受信機で最長16km先から発信機の位置情報を特定し、警察や消防と連携して捜索活動を実施します。でも実は、最初は発信機を発売するだけのビジネスでした。それを変えるきっかけとなったのが、お客様の声でした。「発信機をもっと安くしてほしい」「ヘリコプターを飛ばして、救助できるサービスにしてほしい」。無理難題な要望でしたが、できない理由を考えるのではなく、できる方法を考える。そうして模索した結果、ヘリコプターの提携先が1社見つかり、また、会員制にして価格を抑えたことで、今の仕組みが実現しました。現在、会員数は17万人を超えています。
そして、この仕組みを活用し、災害時の捜索にも展開しています。地震などの災害で家族ががれきの下敷きになった時、救助を待つのではなく自分たちで探す。誰もが被災者になる可能性がある日本において、早急に自助の仕組みを作ることが今の私の使命です。
学生の皆さんは、何に熱中していますか。真剣に遊んでいますか。遊んだ経験は、意外と課題解決の力になります。ぜひ真剣に遊んでください。あなたの引き出しを増やしてくれるはずです。

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