髙尾美波
商学部経営学科2年(22期)
カフェ巡りが好きです
商学部経営学科2年(22期)
カフェ巡りが好きです
私は幼いころから花が好きである。しかし、私の周りにいる人はそれほど花に関心があるように見えない。
人々の花に対する関心はその国の生活スタイルや文化に関係があるのかと考えた。
そこから日本人は花に対する関心や価値観が希薄であるのか、と疑問を持つようになった。
これに対してフランスでは、“花の都”と呼ばれる首都があり日本人の暮らしよりも花が生活に深く関わっていて花に関心があるフランス人も多いのではないかと思った。
フランス人と日本人を比較して、花と人々との関係性、花はフランス人・日本人にとってどのような存在なのか知りたいと思った。
①花に対するイメージ
アンスティチュ・フランセに訪れたときに、フランスでは男性から女性へ花をプレゼントすることが多く、反対に男性が花束をもらうと「自分は女性らしいのか」と思ってしまうという話を聞いた。この話を聞いて、フランス人は花=女性というイメージを持つという仮説を立てた。
一方、日本人は「和」や「侘び」、「寂び」の美的理念を持っており、日本には“一輪挿し”という伝統的な花の生け方があることから、日本人は花に「落着き」「穏やか」「はかない」というイメージを持っていると思う。まとめると、フランス人は花に「女性らしさ」、日本人は花に「落着き」というイメージを持つ人が多いという仮説を立てた。
②生活に花を取り入れているか
日本の庭とヨーロッパの庭では大きな違いがある。日本庭園は、世界の庭園様式の中で「風景式」に分類され、池を中心にいくつかの景色の良い見どころを配置して全体を作り上げている。ヨーロッパの庭園は、フランスのヴェルサイユ宮殿の庭園がもっとも有名であり、この庭園には人工的に作られた水路や池のほか、1400もの噴水がある。
日本庭園との違いは、直線的かつ人工的なデザインを主体に作られていることである。またヨーロッパでは花だけでなく、美しく育てられた野菜や果樹も庭園となった。暖かい南国へのあこがれからオランジュリー(オレンジ園)やレモネーヤ(レモン園)、リンゴなどを植えたオーチャード(果樹園)、香草・薬草を植えたハーブ園、野菜主体のキッチン・ガーデンやジャルダン・ポタジェ(菜園)などが盛んになった。その中でも古くから最も人気のあるのはバラ園であった。香水発祥の街、グラースに訪れた際には、「五月のバラ」(Rose de Mai)をイメージして街にピンク色の傘がつるされていた。
このようなことから、現代でもフランス人のほうが日本人よりも生活に花を取り入れている人が多いという仮説を立てた。
フランスの庭 ニースの公園
日本庭園
フランス人と日本人とでは花の鑑賞スタイルに違いがあり、ヨーロッパでは花の色の変化が容易に楽しめる草花を中心に発展し、多くの花がまとまって作り出す色の配合を楽しんでいた。日本は、枝ぶりに関心を寄せ奇形の葉や花を珍重し、植物の姿・形を楽しんでいた。
この下調べから、フランス人は見た目が豪華で色鮮やかな花束を好む人が多く、日本人は“和”の美的理念を持つことから一輪挿しを好む人が多いという仮説を立てた。
1. 調査日
2019年9月4日(水)~ 2019年9月19日(木)
2. 場所
フランス(ニース・パリ)→レストラン、個人経営の雑貨屋、カフェ、香水博物館(グラース)、公園、本屋
日本→西南学院大学、アンスティチュ・フランセ
3. 対象者
フランス:30人(うち4人はイタリア人)
日本:30人
4. 方式
アンケートとインタビュー
1, ドライフラワー
2,ハーバリウム
3、押し花
4, アクセサリー
5, エディブルフラワー
※食用の花
一輪挿し
花束
1.フランス人は花に「女性らしい」というイメージ、日本人は花に「落着き」というイメージを持っている人が多い。
2.フランス人のほうが日本人よりも生活に花を取り入れている人が多い。
3.フランス人は花束を好む人が多く、日本人は一輪挿しを好む人が多い。
1, ドライフラワー
2,ハーバリウム
3、押し花
4, アクセサリー
5, エディブルフラワー
※食用の花
a.イメージ
フランス人は 80%以上、日本人は 30%未満の人が生活に花を取り入れていることがわかった。圧倒的に、フランス人のほうが暮らしに花が関わっている。
そのためフランス人の中で、花は高価なもので身近にないものというイメージを持つ人はいなかった。これは日本人と大きく異なる結果であった。日本では、花は比較的高価なものであるため自分用として花を購入するよりも、プレゼント用に花を購入する人が多いことがわかった。
自分にとって花は気を楽にしてくれるもので暮らしに欠かせないもの、人生に喜びと彩を与えてくれるものというようなフランス人の回答から、彼らにとって花は非常に大切なものだということがわかった。
一方、日本人は 50%の人が生活に花を取り入れたいとは思っているものの、忙しいため花の手入れができない、花を育てる環境が整っていないという理由でなかなか花を取り入れられないという人が多かった。花がなくとも生活できると考える日本人もいた。 また、花のイメージについてフランス人は、花は美しくきれいで、自然にあるもの、
日本人は、花は美しくきれいで上品、はかないものというイメージを持つ人が多かった。
b.花のアート
フランス人は人工的で芸術的な花のアートよりも、自然に咲いている花を好む人が多かった。一方、日本人は花のアートを好む人と、自然に咲いている花を好む人の割合が同じであった。
フランス人よりも多くの日本人が花のアートを好んだ理由として、毎日の生活が忙しくても花のアートなら手入れをする必要がないからだということが分かった。
あるフランス人男性から「人々が花をめでる理由は花に命があるからであり、例えば日本の桜は二週間で散ってしまうが、その永遠ではないはかなさが人々を惹きつける。花のアートとなると、花の命は永遠になり、花を見るのはプラスチック越しで花を大切にする気持ちが薄れる。」という話を聞いた。花のアートの種類にもよるが、ハーバリウムはフランス人が重要視する花の香りはなくなるけれどどの花のアートも花の色はきれいに保たれるため、花のアートを受け入れるフランス人もいた。フランス人は花の色と香りに大きな価値を見出していた。
c.一輪挿しと花束
フランス人は、伝統的な日本の花の生け方である一輪挿しを見て、美しく、穏やかだとイメージする人が多かった。一方、日本人は一輪挿しは和、わびさび、趣深いとイメージする人が多かった。また、一輪挿しを大人、花束を子供というような見方をするフランス人もいた。フランス人にとって日本の一輪挿しや生け花は、花というよりも芸術的なアートだという。
一輪挿しと花束のどちらを好むかという質問では、フランス人は圧倒的に花束のほうを好むと予想していたが、一輪挿しを好む人も少なからずいた。
①花に対するイメージ
フランス人が持つ花のイメージは、「女性らしさ」、日本人は「落ち着き」と答える人が多いと仮説を立てていたが、仮説とは異なり、フランス人は花に「自然」、日本人は「上品」というイメージを持つ人が多かった。また、フランス人は“花=色と香り”というイメージを持つ人がほとんどであった。
➁生活に花を取り入れているか
フランス人と日本人のどちらの方が生活に花を取り入れているかについては、フランス人のほうが日本人よりも生活に花を取り入れていると予想していた。仮説どおり、フランス人のほうが日本人よりも生活に花を取り入れていた。
③花束か一輪挿しか
フランス人は花束を、日本人は一輪挿しを好むという仮説を立てた。フランス人は仮説どおり、花束の方を好んだ。しかし、日本人は仮説と異なり、フランス人と同様に花束を好んだ。
また、フランス人は花の色と香りに大きな価値を見出していることがわかった。
あなたの研究は的確で完璧でした。自慢できる結果だったと思います。
説明も正確で分かりやすかったですし、フランス語も上手く使われています。
すばらしい。また、あなたの研究は段階を追って展開されています。仮説から正確な調査へ進みました。
お褒めの言葉をいただけて嬉しく思います。ありがとうございます。 この活動は、自分が調べたいテーマを決めて下調べをし、仮説を立てて実地調査を行い報告するまで、全ての内容を自分自身でやり遂げるプログラムでした。しかし、この研究を無事に完成させることができたのは、たくさんの方の支えがあってこそです。P.communiquonsの先生方、アンスティチュ・フランセの先生方、サポーターの先輩方、そしてアンケートにご協力いただきました皆様、ありがとうございました。 ご協力いただきました全ての方へ心より感謝申し上げます。
日本とフランスの花に対する価値観の違いは、両国それぞれの歴史的背景や国民性、フランス人と日本人の暮らしの違いによっても影響を受けていることが分かりました。研究することは初めてで、アンケートやホームページの作成は特に苦戦しましたが、たくさんの方にアドバイスをいただきながら納得のいくものを作り上げることができました。実地調査は、日本でもフランスでもたくさんの人が優しく、また快く協力してくださったおかげで順調に調査を進めることができました。 p.コミュニコンに参加させていただけたことで、幼いころから行ってみたいと夢に見ていたフランスで興味のあるテーマを調査することができ、ホームページとして形に残せるという素晴らしい経験ができました。さらに、フランスでの実地調査は研究に加えて、将来の夢についてなど改めて自分自身を見つめ直すきっかけになり、この研究を通して自分で一つのことをやり遂げる喜びを感じることができました。これからも様々なことに興味を持って勉学に励み、挑戦し続けていきたいです。 p.コミュニコンの先生方、アンスティチュ・フランセの方々、サポーターの先輩方、一年間ありがとうございました。
・アリス・M・コーツ『花の西洋史事典』 白幡洋三郎・白幡節子訳 八坂書房2008
・『世界・ブライダルの基本』財団法人日本ホテル教育センター編14-1 婚礼と花2008
・浜田豊『花ことば花データ由来がわかる花の名前』日東書院2003
・鈴木誠『自然の中の人間シリーズ 〔花と人間編〕⑨日本の庭・世界の庭 暮らしと庭』農文協1989
・横田克己『フランスの庭 奇想のパラダイス』写真・松永学 新潮社 2009
・巖谷國士『フランス 庭園の旅 150の優雅と不思議』コロナ・ブックス 2006