フランスと日本のバレエを比べる

MEMBER

  • 渡邉 萌

    英語専攻2年
    好きなバレエの作品
     「ドン・キホーテ」

  • 川村紗央

    フランス語専攻2年
    好きなバレエの作品
     「眠りの森の美女」

テーマ

フランスと日本ではバレエダンサーの意識や経営において何が違うのか。

このテーマを選んだ理由

私たちがこの題を選んだ理由は大きく分けて2つである。
1つ目は、幼い頃からバレエを習っており、元々バレエに関心を持っていた事である。
2つ目は、フランスではパリ=オペラ座のバレリーナは国家公務員であるし国立のバレエ学校もあり、1つの職業として生計を立てられる。しかし日本では、プロになってもバレエで食べていけるのはほんの一握りで、多くの人がバレエで生活するのが厳しいという現状にある。では、日本でも才能ある人がバレリーナとして活躍できる世の中にするにはどうすればよいのか考察しようと考えたからだ。

下調べによって分かったこと・仮説

1. 日本では国立学校もなく統一された指導法は存在しないが、フランスでは1713年ルイ14世により職業舞踊手育成のため創立された国立学校が存在し、国からの支援も厚い。
2. プロになっても日本では固定収入もなく舞台活動だけでは生計が立てられないが、フランスは国家公務員であり、社会保障が整っている。
3. フランスでは洋服屋にレオタードが置いてあるなど、より身近な存在である。
4. 日本では地域格差が存在する。(所得によるものなど)

これを元に仮説をたてた。
 フランス人にとってバレエとは・・・
   ・国家芸術である。
   ・1661年にオペラ座の起源となる王立アカデミーが設立されるなど歴史は深く、公演数や支援金が多いことから、一般人にも生活の一部や身近な存在になりえている。
   ・ルイ14世の時代に第一次黄金期をフランスで迎えたことや世界三大バレエ団の1つであるパリオペラ座があることから誇りである。
   日本人にとってバレエとは・・・
   ・男女16人の大学生にアンケートをした結果から日本人はバレエを鑑賞する習慣があまりなく一般人には関わりが薄いものであると考えた。
   ・日本ではバレエはお稽古事であるとされている通り、芸術というよりは稽古事というイメージの方が強いのではないか。

調査日程

9月5日~9月13日の期間でフランスのボルドーとパリに滞在し調査を行った。
帰国後、日本でさらに調査を行った。

調査対象①

フランス ・・・ 現在フランスのスタジオでバレエを教えている井上正子さん
パリオペラ座バレエ団のダンサー二山治雄さん,中島映理子さん
日本でもフランスでも活躍していた日本人ダンサー

日本 ・・・ 過去に指導を受けていたプロダンサー

調査方法①

協力いただけた全員にアンケートを実施し、更に井上正子さん、二山治雄さん、中島映理子さんにはインタビューを実施した。

アンケートの質問内容①

1 バレエのどこに最も惹きつけられますか 
  振付・衣装・音楽・ストーリー・バレエが重要な文化であること・その他
2 日本人にとってバレエとは何ですか?
3 あなたはフランスのバレエをどう思いますか?
4 日本とフランスの雇用環境の違い, 仕事内容の違いは何か。
5 日本とフランスの国や国民からの支援の違いについては何か。
6 日本人ダンサーは海外のバレエ団で活躍することを望む人が多いがフランスのダンサーはどうなのか。
もし違いがあるのであれば、それはなぜだと思うか。

調査結果①

アンケート結果

1 バレエのどこに最も惹きつけられますか
選択肢                    回答数
・振り付け                   0名
・衣装                     0名
・音楽                     1名
・ストーリー                  0名
・バレエが重要な文化であること         3名
・その他
* 先人たちが積み重ねてきた歴史とロジカルな体の使い方。
* 作品を手掛けた人、ダンサーによって違う表現になるところ。
* 毎回違うその場にしかない雰囲気、エネルギーを感じられるところ。
* 言葉を使わず物語を完成させられ、見た人に感動を与える事ができるところ。

2 日本にとってバレエとは何ですか。
・ 外来文化
・ 情操教育の一環の習い事のひとつ
・ やっている人口も多いし、素晴らしいダンサーもいるけれど収入に面などまだ国からの援助もないし、受け入れられていないところがあるからもったいない
・ みんなが憧れる
・ 誰もができるものではないと思われがちである。言葉のない踊りの表現は誰もができるものなので広まってほしい。
・ 若い人達に将来の職業としての夢、目的の人が多い
・ コンクールなどが多いのでバレエが競技のように執われる傾向もみえる
・ お金がかかるので一部の人たちだけに浸透した文化。マイナーな文化。
・ 男性も増えたがまだ女性的価値が高い
・ 研究熱心で探求心が高いので指導者の質が高い

3 フランスのバレエをどう思いますか
・ 200年の歴史が引き継がれた総合芸術
・ 国からサポートがあり仕事として確立されている
・ 日本人とは生まれ持った違う体のスタイルを持っていて、ラインや表現が素晴らしいと思う。
・ 日本でいう歌舞伎や能などに近いもの
・ 型にはまっていない
・ 個性が生きた群舞
・ 自由
・ 芸術として社会的地位がある

4 日本とフランスで雇用の違い、仕事内容の違いはありますか
・ 日本では企業などがスポンサーになってバレエ団を経営する。フランスでは国民の税金を使って劇場を運営する。なので、日本のバレエダンサーは会社員というよりは、派遣バイトに近い雇われ方をしている。
・ フランスは日本と比べて上下、横の関係のしがらみがない。
・ 個人と個人のつながりが次の仕事へと続く場合が多く、個人アーティストとして働いていける。
・ 社会的に保障がある。
・ チャンスが開かれている。
・ バレエ団に入った場合、ある程度の生活が保証される。

5 日本とフランスで国や国民からの支援の違いはありますか
・ 全く違う。 日本は一部の愛好家やスポンサーになってくれる企業や、スクールの生徒からの月謝などでバレエ団を経営。 フランスは税金が使用されるので、劇場と契約したダンサーは公務員という扱いになる。
・ フランスは文化、芸術を仕事として成立させるintermittent du spectacle という制度がある。
  ・ 難しいが助成金をもらえる可能性がある。
・ 一般人がよく舞台を観る。理解がある。映画のように生活の一部として受け入れられている。

6 日本人ダンサーは海外のバレエ団に入団することを望むようですが、それはなぜですか。またフランス人の場合はどうなのですか。
・ フランス人は本国の劇場で踊りたがる。競争率が非常に激しいので、フランス以外の国で踊る人もいる。
・ 自分の好きなスタイルや作品をやるバレエ団に入る。
・ 日本人は安定した収入、舞台数などを求め、フランス他、海外の劇場に就職を求める。
・ 外国にはチャンスをつかむ環境が日本よりもある。しかし才能がなければ厳しい。
・ ダンサーが求めるものは国ではなく自分の表現したいものが表現できる場所。それが日本にあれば日本にいる。フランス人も根本は同じ。その意味ではダンサーに国境はない。



インタビュー結果

*井上さんインタビュー全文
Q : 日本は一部の人しかプロダンサーとして食べていけない、バイトなどをしないといけないっていう問題がメディアなどでも取り扱われていますが、フランスではバレエ団に入ると団としての保証などもあるし生活できるのか。
A : フランスのバレエ団に入ったらバレエ団としての保障はある、確かに。バレエ団に入ってなくても個人のアーティストでも先ほど言っていたアンテラミットンのスペクタクルっていうのがあるんだけれども、それで点数を稼いでいけるから、私がやっていたのはバレエではないんだけど個人的に注文されたものを踊ってそれでお金をもらって、そこからちゃんと税金も払っているし、それが仕事になってやっていた。
Q : 1つの仕事で1つの収入という感じなんですね。
A :そうそう、うん。だからいっぱい仕事が回ってきたらそれで生活ができる収入がある。だからそれだけで生活しているダンサーもいる。それだけで足りない人は例えばそれで映画にちょっと出演したりとか。ダンサーとかね、エキストラで。
Q :芸術的なことに携わって・・・
A :そうそうそそうそう。それで生活ができる。本当にそれでも足りなかったらちょっとアルバイトをしているひともいる。それは日本と一緒。やっぱりそこまで達しなければそれ(ダンサー以外のアルバイト)するだろうし、生活があるからね。
Q :その人数としては日本より少ないという感じですか、割合的に・・・
A : 割合的には、日本というのは絶対誰も稼げないじゃん、バレエ踊っているだけでは。国立劇場に入ったって稼げないでしょ、あそこ。今はもしかしたらKバレエカンパニーとか稼げるのかな、あそこだと。だんだん稼げるようにはなってきたけど、でもそういう・・・国立でも稼げない、それだけ生活ができないじゃない。それではないね、まあフランスは生活できるシステムがある。国の保証がある。

Q :そのシステムはどういう違いから生まれると思いますか。国からの支援が多いのか、国民からの支持や誇り・・・。
A :ていうかね、あのね、国からの支援が多いわけではないのね。この間あの経済が不況になってから色んなオファーがパタッとなくなったわけ。だからやっぱり政府が一番最初にきる予算というのは文化、芸術面をパタッときるわけだから、だからそんなに保護されていない。けれども需要がいっぱいある。あちこちに舞台があって、あっちこっちでオーディションがあるし、いろんなクリエーションがあってバレエだけではなくて色んなものを国民が求めているし・・・私が思うにはダンサーというのが職業としてみんなの中に存在すると思う、1人1人一般の人の中に。日本だったらダンサーって職業ないじゃん、踊って稼ぐような。だからそういう意味ではフランスでは人々の頭の中にダンサーっていったら職業というものもちゃんと入っている、頭の中に。

Q :国民の意識から日本とは違うのですね。
A :違うと思う。というのは私も子供の親とかで友達いるんだけど、その友達は全然バレエ知らないんだよ、踊ったこともないし。だけどもすごく興味があるから市民劇場とか(行く)。

Q :国や国民の支援について
A :国の支援っていうのは、やっぱり、仕事にするシステムが確立されているから、もちろんいっぱいは稼げないダンサーもいっぱいいるけれども、お金になる仕事がある。お金が稼げる。お金がもらえる。日本だとなかなかお金がもらえるまでいかないでしょ。でも、お金がちゃんともらえる。国からの助成金も出る。小さいカンパニーがあって、助成金を申請したら助成金をもらえる可能性がある、難しいけどね。これはすごく難しい。日本と同じくらい難しい。でも、もらえる。それとレジデンスというシステムがあってこれもたくさん書類を出さなければならないんだけど、書類をいっぱい出していって、プロジェクトが成功するとプロジェクトをする助けをしてくれる。だからスタジオがないから何もできないという風にはならなくてプロジェクトによって国からの手伝いがもらえる。だから個人のアーティストもそういうことで仕事をしている人がたくさんいる。だからカンパニーに入らなくても個人としている人もたくさんいる。それをやる小さい劇場とかそれを支援してくれる人とかいるから成り立つ。結構ダンサーもこうやって成功している人たちがいる。カンパニーに入るだけがダンサーの仕事ではなくて自分のクリエーションをして自分でお金を稼ぐこともできる。もちろん機会は自分で作らなければいけないけれども、作ってそれがどんどん売れていったらそれが収入になるし、そういうのをやる機会が結構あるね。展示会みたいな感じである。絵画だったら展示会がいっぱいあると思うのね、日本でもね。そういう風に踊りもあると思う。日本よりはあると思う。
Q :大きい劇場だけでなく、小さい劇場でもあるんですね。
A :そうそう。小さい劇場でも。
国民の支援としては、一般人が舞台をよく見る。普通の人が。例えば、娘がバレエをやっているとかではなくて、何にもバレエをやったことがない家族でも見に行く。バレエだけじゃなくて市立劇場とかシャトル劇場とかでほらコンテンポラリーだの何だのあるでしょ、そういうのも見にいくみたいだから・・・それは私は息子を持って初めて分かった。そういう人がよくいる。だからフランス人はダンスが人生の生活の一部みたいなもの、一般の人々にも。日本ではバレエはやってる人だけの道楽で、ダンスが仕事にならないというのを感じた。

Q :日本人ダンサーが海外で活躍したがることについて
A :日本に活躍する場がないから。もう、それは簡単なこと。日本に活躍する場があったら日本にいる。外国にはチャンスをつかむ環境が日本よりもあって、才能がなければ無理という厳しい世界だけれども、チャンスはある。ダンサーというのは国籍も何も関係なく、ダンサーが求めるのは国ではなくて自分を表現したいことが表現できる場所を探している。フランスのここにいるダンサーもそうで、みんなそうだと思う。自分が表現する場所があったらどこへでも行くと思う。フランス人も根本はこれ。ダンサーだから根本は同じだから。ダンサーが表現したいものが自国にはなかったら他の国へ行くんだと思う。フランス人のダンサーでもフランスのは嫌いといってオペラ座にいかないひともいるし・・・自分の探しているものを探しているはず。

Q :みんなフランスに行きたい訳ではなくて・・・。
A :そうそう。だからここ(アンケート用紙)にも書いたように、ダンサーに国境はない。
Q :フランスのバレエをどう思いますかについて
A :自由。表現することも自由だし。
まずバレエの事からいうと、フランスというメソットはないでしょ。すごく自由だと思うの。もちろんオペラ座でかっちりとしたものはあるけれどもオペラ座の表現としてすごく自由。ロシア派とかだとこれ以外踊ってはいけないとか型にはまった表現しかしてはいけないとかあるけれどもフランスは何に関しても自由だと思う。
次に作風のことでいうと、どんな作品をしていてもみんな自由。コンテンポラリーや日本のものやらモダンのものやら何をやるにも自由だから自由に観客が受け入れてくれる。だから踊っているほうも自由に自分が表現したいほうにいける。レッスンも自分が受けたい先生のとこに行って。多分オペラ座の中には厳しいものがあるかもしれない階級制とかあるしね。でも踊りを見てるとカチンカチンの踊りではなくてどこか発散してるおどりなの、表現がね。ただ爆発するだけではないんだけれども、ロシアみたいな爆発的なエネルギーはないんだけれども・・・もうちょっと、なんていうかな、自由さがあると思う。変に言ってみれば自分勝手。きれいに言ったら自由。
教えてる立場から言うと、私は小さい子供をたくさん教えているんだけれども、小学校でも教えている。バレエというものが教育の一貫として受け入れられている、社会の中で。だから昔の日本はただのお嬢様の習い事という感じだったじゃん。で最近いっぱい習い事としてあるんだけれども結局お金がかかっちゃうから限られた人しかできなくって、閉ざされた世界。フランスだとダンスというもの自体が、どんなダンスもね、モダンなりジャズなりアフリカンなりアラブのなり、どんなダンスも教育の一貫として浸透している。だからバレエを習うということがイコール例えば「ダンサーになる」とか「将来の職業がこれになりたい」とか「私の夢よ」とかそこまでいかずに、バレエを習うという事は、スポーツの体育の授業みたいにそのくらいの。
Q :すごく特殊なものではなく、普通に日常的にあるものなのですか。
A :そう。「私はバレエやってるのよ」「私はアフリカンダンスよ」みたいな感である。それが、教育の中のね。そこからやっぱり私はダンサーになりたいとなればそれなりの道が開けるところがあるわけだから、コンセトバールに入ったりとか、オペラ座に入ったりとか道はあるわけだから。だからそれはそれであります。でも、巷のところ、本当に一般の中には教育の一貫として入ってる。20年教えてきて分かった。日本にいると10か0かというところがあるじゃない。そこまでやらないんだったら、コンクールに出ないんだったら発表会に出ないんだったら・・・そこまでなくて、だからそこも自由。
Q :フランス人の生徒さんたちはすごい志が高いのかなっていう勝手な印象があって、みんなダンサーを目指しているみたいな
A :そういうのは巷にはない。そうじゃなくて、それを1段階2段階って上がった学校・・・私立のバレエ教室でも、ここから段階上がった子たちはすごく強い。日本人と一緒そこは。
Q :日本と同じで意識の高い人が努力して上がっていく。
A :そう。でも一般の巷のここのへんは、ベースは教育。
Q :日本は習い事だけどフランスは教育。
A :そう。私も毎年夏にかえって日本で教えて教室をまわるんだけど、日本のバレエやってる子たちの真剣さ。話聞くたびに高校受験、大学受験かバレエかという感じで、どうして両方できないの、そこまでもしなくてもいいじゃないって感じなんだけど、(フランスの)巷では高校の受験があろうが、バカロレアがあろうが、結構ずっと続けてて。
Q :日本は受験でやめるって人が多いですよね。
A :やめてどうするか、人生こっち行くかこっち行くかしかなくってみたいな。じゃなくて、こう行ってて、もしかしたらこっちのバレエに行くかもしれないじゃんって人はなかなかいないね。大人の生徒で子供の時にすごく上手だったから先生にオペラ座に入れ入れって進められてて、試験も受けて受かったんだと思うの。でもどうしてもいやだったんだって、オペラ座に入るのが。才能はあってでも意識がなくて。だから、嫌だ嫌だって拒否して好きなバレエをずっと続けて、で、今35歳位なんだけれども、ずっとやってるよ、休まず。普通の職業についてでも好きなバレエを続けて。
Q :日本だったらどちらか選んでバレエをやめていますよね。
A :そういうのはなかなか見ないね。他にも大人の生徒でも弁護士をやりながらバレエをしている人がいる。そういう人もいっぱいいる。だから、バレエの位置が違うなと思う。 日本のレベル高いと思う。普通のバレエ教室のレベルがプロが出ちゃうまで育てられるでしょ。すごく高いと思う。すごく教育熱心な探究心熱心な先生がいて、先生がすごく生徒のこと見てるなって思う。日本は凄いと思う。


*二山さん・中島さんインタビュー全文
Q :ダンサーとしてだけの収入で十分に生活ができるかというのを・・・
中:あぁ・・・日本じゃ無理。
Q :フランスだからこそっていう感じですか。
中:ヨーロッパ。ヨーロッパはたぶん・・・。
二:海外はたぶん大丈夫だと思う。
中:日本のバレエ団ではほぼ無理だと思う。階級によっては。
Q :保障があるからですかね。
中:フランスの場合だと国家公務員とか・・・のがあるけど、日本だとダンサーはそういうのないから、たぶん難しい。
Q :日本からフランスに渡られてフランスで踊っていて、日本とフランスで特に違うと思ったことは何ですか。
二:僕は実際日本のバレエ団に所属したことがないから分からないんですけど、やっぱり日本のバレエ団はたぶんほとんどだと思うんですけど、パフォーマンスごとに給料をもらうんですけど月給制とかなくて、たぶん階級の低い人たちはみんなアルバイトとかと両立しながらそれでバレエをやっている・・・凄い大変な面もあるなか。こっちはやっぱり国からのサポートがあるから階級の低い人でもバレエにすごい打ち込める。
中: 私も日本のバレエ団に所属していたことはないんですけど・・・日本は結構、型にはまっているというか、すごいキッチリカッチリしていて、1人1人個性が出てないようなって感じがする。日本はちゃんとしているから素晴らしいけどもうちょっとフランスは1人1人の個性を出しながら美しい群舞とか表現ができてるなって思います。
Q :日本は個々のバレエ教室のレベルも高く、更にレベルの高い人はローザンヌだったりに出て、海外を目指しますよね。日本でそのまま活躍される方は少ないと思います。才能がある人、賞などをとれる人が日本の団に入る人は少ないように思えるけど・・・どう思いますか、海外が働きやすいから?
中:稼げるから。
二:バレエはこっちが本場で生まれたものだから、最終的には日本で踊りたいと思っているんですけど、やっぱり本場でしか習えないことあるし、本場で経験してそれを日本の皆さんに伝える、経験を発表するというように僕はしたいですね。日本で学べないことがたくさんあるので。

分析①

 フランスのバレエは自由であるという回答が印象的であった。表現や作品に関してだけ自由なのではなく、ダンサーが上下関係をあまり気にせず個人と個人のつながりから仕事を得られやすいことや、一般人の人たちにバレエが教育の一環や趣味として日本よりも気軽で日常的なものとして浸透しているということも自由であり、これは日本のバレエとの大きな違いだと感じた。

調査対象②

フランス人・・・宿泊先やボルドーの公園にいた一般人
日本人・・・一般人

調査方法②

ボルドーの公園にいたフランス人18人へのアンケートを行い男女比、全体の人数に対する年代別の割合が同じになるように設定し、日本人54人へアンケートを実施した。

アンケートの質問内容②

1 バレエをしている人のイメージは何ですか?
2 バレエを観に行ったことがありますか?
3 知り合いにバレエを習っている人はどのくらいいますか?
4 あなたにとってバレエとは芸術ですか、それとも稽古事ですか?
5 あなたが知っているバレリーナはいますか?それは誰ですか?

調査結果②

アンケート結果を円グラフにし比較する。

   フランス人は、大半が「芸術家肌の人」と回答し、日本人は過半数が「姿勢がいい人」と回答。「お金持ちの人」という回答はフランス人は0%だったのに対し、日本は2番目に多い回答だった。

  予想に反し、バレエを観に行ったことがないフランス人が多かった。

  更に「はい」と回答した人にのみ観に行った回数を聞いてみた。
  日本人は家族や友人の発表会などを観に行ったことがある人がほとんどであり、回数も多くて6回とあまりバラツキはなかったが、フランス人はバレエの熱狂的ファンもいて、何度も劇場に足を運んでいた。フランスには日本で言う発表会というものはほとんど存在しないが小さなバレエ団から大きなバレエ団まで幅広く多くの公演が行われている事が調査から分かった。
*チケットの値段比較:今回は1番高いS席の値段で比較
  新国立バレエ劇場 12,960円
  パリ・オペラ座  110€ = 14,630円{1€=133円で計算}

バレエ人口が世界の中でもトップクラスであると言われるほど多い為なのか、知人でバレエをしている人は日本人の方が多かった。フランスでは「知り合いにバレエをしている人はいない」と答えた人が半数を占め、「5人以上」と答えた人は0%だった。

この質問に関してはフランス人には「バレエは芸術かスポーツか」と聞いてしまった為、日本との比較はしづらいが、予想に反し「芸術だ」と回答した人が、日本人は過半数、フランス人は2割ほどであった。フランス人は「スポーツ」と答える人は0%で「芸術でも、スポーツでもある」と答えたひとが大半であった。日本人においては予想より少なかったものの「稽古事」だと回答した人も少なくなかった。

日本人のほとんどが「知っているダンサーはいない」と答えたが、フランス人は半々という結果であった。

分析②

仮説と異なり、バレエを見に行ったことがないフランス人は多かったが、「バレエは芸術でもスポーツでもある」という回答が大半であったことや「知っているバレエダンサーがいる」という人が50%いたことからみても、日本と比べてバレエに対しての理解が深く、身近な存在であると思った。日本ではバレエに対する理解や関心薄く、やはりバレエは今なお狭い文化であるのだと感じた。

結論

フランスでバレエは歴史が深く人々の需要がある文化であった。才能があればバレエダンサーを仕事として成り立たせられる収入や舞台数が獲得でき、また、芸術に携わる人を支援するための助成金やバレエ団に所属しているダンサーに与えられる保証などの制度が整えられている。日本ではバレエは一部の人だけに浸透した狭い文化であった。バレエをやっている人口は多く、才能があるダンサーもたくさんいるが、日本ではダンサーだけで安定した収入を得られない。また日本では一般の人にとってバレエはお金がかる敷居が高いものというイメージが強い。フランス人の中にはバレエに関心が薄いフランス人もいたが、アンケートとインタビューの結果やバレエ教室の雰囲気などから一般の人にとってバレエが気軽に観に行ったりレッスンに参加したりできる身近な存在であるとわかった。
日本でもバレエがもっと誰もが楽しめる芸術として浸透してほしい。日本でバレエの需要が増え、さらに公演数が増えれば、才能あるダンサーが日本で活躍できる環境が整い日本のバレエはさらに発展すると考えられる。

参考文献

・ 2009,「パリ・オペラ座のマニュエル・ルグリ」 新書館
・ 梅野 敏、小山 久美、2015、「日本のバレエ教育環境の地域差ー『バレエ教育に関する全国調査に基づく分析』-」
・ 「舞踊の『フロー』に関する研究ーフランスで活躍する舞踏家の現状と楽しさについて 大阪教育大学紀要 第Ⅳ部門 第56巻 第2号 73~91項 (2008年9月)」
・ 小林公成、2006、『バレエの鑑賞入門』、株式会社世界文化
・ 芳賀直子、2014、『バレエ・ヒストリー』、株式会社世界文化社

アンスティチュフランセのコメント

バレエについて大変明白で完璧なアンケート調査です。 ボルドーでのインタヴュー、調査結果の分析はジャーナリスト的視点からバレエを捉えています。アンケートは興味深く、バレエについてこれまでステレオタイプ的に見ていた目を開かせてくれます。 綴りの間違いに気をつけてください、フランス語も日本語もです。それから性数の一致、動詞の過去分詞にも気をつけてください。全体的にはとてもよいです。しっかり取り組んだ研究です。

P.コミュニコンを終えて

実際にフランスに行って、現役のダンサーやフランス人の生の声をきけたことはとても貴重な経験となりました。 バレエについて私たちが持っていた固定概念がくつがえり、バレエを新たな視点から見ることができたことは大きな学びでした。 このような貴重な経験ができたのもすべて協力してくださった方々のおかげです。 この調査に協力してくださった全ての方に心から感謝申し上げます。
最後にアンスティチュ・フランセの先生方,この度はおよそ1年間を通してアンケートやホームページ本文の添削など様々なサポートをしていただきありがとうございました。またコメントをいただけて大変嬉しく思います。この学びを無駄にせぬようこれからも勉学に励みます。

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