日本とフランスの花文化

メンバー紹介

猿渡 りえ
文・外国語学科フランス語専攻3年
趣味等入れられます

平林 黎
文・外国語学科フランス語専攻3年
趣味等入れられます

研究の目的

私たちは日常生活で花とどのような関わり方をしているのか。
また、日本とフランスで共通点や相違点を明らかにすることを研究の目的としています。

調査方法、調査対象

調査は2段階に分けて行いました。
1つ目はアンケート調査です。調査対象者は以下になります。

日本人:29人
フランス人:30人

男性:23人
女性:32人
無回答:4人


2つ目はお店へのインタビュー花束の調査です。
実際に日本とフランスのお店でインタビューを行い、 5つの質問に答えていただきました。

フランス2件のインタビュー場所
L‘ARBRE PARIS
EURO-PARC

日本3件のインタビュー場所
Aoyama Flower Market
BENI HANA
HANAGOKORO

また、フランス、日本それぞれのお店で実際に花束を購入し、 その違いを調べました。

フランス、日本ともに1束ずつ作ってもらいました。
条件:3000円(30ユーロ)
購入理由:“友達の家に招待されたので、持っていきたい”というものです。
完全にお任せで作ってもらいました。

アンケート内容

1.お花を買いますか?

2.どのような理由で買うことが多いですか?

3.どこに買いに行くことが多いですか?

4.どれくらいの金額であることが多いですか?

5.どのような時にお花をよくもらいますか?贈りますか?

6.お花に対して一番重要視するものはどれですか?

アンケート結果

1.お花を買いますか?

“よく買う”“たまに買う”の買う派で見ると、女性側の方はほとんど差はありません。
対照的に男性は、フランスの方が82%と圧倒的に買う派の方が多いことが分かりました。
この結果になった所以は花を送りあう文化、花束の歴史にあると考えます。
花束の起源はヨーロッパで、1300年から1600年にはヨーロッパでアレンジメントが広まるように、 ヨーロッパでは古くから花を贈る習慣はあったそうです。 一方日本では平民の間で花を贈るという行為が行われるようになったのは戦後欧米文化が日常に入り混じるようになってからです。 ここ最近のことなのです。 その原因として一つのことがあげられます。 日本では礼儀の際に、天皇自ら公卿の冠に花を挿し与えたことで、一般の人々は花に恐れ多い印象を受けました。
そのため、現在のように人々が花を贈りあう文化が根付くのはかなりの時間がかかったようです。

2.どのような理由で買うことが多いですか?

これは、日本とフランスというよりは、男女で大きく違いが出ました。
男性の方は自分に買うというよりは、誰かに贈ることが多いからか、プレゼントが多くを占めているのに対し、 女性の理由は分散しており、自宅用やガーデニングという回答も見られました。
女性は家のことをすることが多いため、家を飾ったり、ガーデニングをする機会が多くこういう結果にいたったのだと思います。
面白いなと思ったのは、日本の男性には全くないのに対し、フランスの男性で、ガーデニング用と答えた方がいたことです。
もし日本人男性がするとしたら、盆栽が一つあげられると思います。
フランス人男性は日本人男性より自分の時間があるのだと感じました。

3.どこに買いに行くことが多いですか?

これは、日本とフランス共に、花屋で購入される方が多いようです。
先ほどの花を買う理由のグラフで、プレゼントと回答した方が多く、 またプレゼントと回答した人のほとんどがラッピングなどができる花屋に買いに行くことから このような結果が得られたのかなと思います。
スーパーは安いですが、アレンジはできません。
また、女性はお金をかけなくてもいいガーデニングや自宅用の花を買うことがあるため、
スーパーという回答も見られたのだと思います。

4.どれくらいの金額であることが多いですか?

金額に関しては、日本とフランスで見るとフランスの方が高く、 男女比で見ると男性の方が高くなっていることが分かります。
日仏で差が出たのは、花における重要性、ランク付けが違うからではないでしょうか。
日本人は生活上花はなくてもいいと考えている割合が多いように感じます。
花にお金をかけるのはもったいないと思う人が多く、 必需品ではないためお金に余裕がある娯楽感覚なイメージが根強いのだと思いました。
対するフランスは、お金があるなしにかかわらず、空間を楽しむ、癒しをもらう対象が花であり、
花に対する価値観が非常に高い印象でした。

男女差の理由としては、男性はプレゼントで買うことが多いために、 スーパーやマルシェより金額が高めの花屋に行く人が多くなり、 金額が上がるのではないかと考えました。
また女性は自宅やガーデニング用で買う方が半数を占めているので、 あまり高価なものは買わなくても良いのでこういう結果になったのかと考えました。

5.どのような時にお花をよくもらいますか?贈りますか?

日仏共通して、母の日が多いことが分かります。
母の日に花を贈るというのは両者ともに文化として根付いているといえます。
違いが出たところは、日本では卒業入学と回答した方が11%、13%とあるのに対し、
フランスでは男性で4%、女性に至ってはゼロという結果になったところです。
また、逆にフランスではバレンタインに男女ともお花を贈ったりもらったりすることが多いことから、
12%、21%とあるのに対し、日本ではゼロという結果になりました。 
それぞれの理由として、卒業入学はフランスの学校では日本のように入学式や卒業式といった式典がないため、
渡す習慣がないのではないかと考えました。
また、バレンタインに関しては、日本では昭和30年代にチョコレート会社がチョコレートを買ってもらうために女性から男性にチョコレートを贈る日としてバレンタインデーを広めたので、
チョコが一般的になり、花束を贈る習慣が出来なかったのではないかと思います。

6.お花に対して一番重要視するものはどれですか?

どちらも一番重要視したのが美しさだった。
日本人は買うか買わないかでいうと、買わない傾向にあるが、買うとなると、美しさや癒し感動など、
気持ちの部分を重要視する傾向にあると思います。
日本ではサービスの質や技術、鮮度は高くて当たり前だという考えから、
それらを重要だと思う人が少ないのではないでしょうか。
対象的に、フランスでは美しさを重要視するとともにサービスの質や鮮度を重要視する傾向にあります。
実際にフランスの花屋さんで花束を買ってみたが、茎は切りっぱなしで水につけられてはなく、
お店の中にも花用の冷蔵庫も見当たりませんでした。

インタビュー結果

Q:お花を買いに来られるお客様はどのような方が多いですか? また、どういった目的で買われる方が多いですか。

日本

Aoyama Flower Market
人{女性、30~40代、3割程男性}
目的{結婚記念日、プロポーズ、送別会、自宅用、2次会用}

BENI HANA
人{年配の方}
目的{自宅用}

HANAGOKORO
人{女性、50代~}
目的{男性はプレゼントで買うことが多い。}

フランス

L'ARBRE PARIS
人{男性も女性も多い。}

EURO-PARC
人{すべての年代の人が来ます。それは、夫であったり、子供たちであったり、様々です。}
目的{そういった人たちは祖父や祖母のために贈り物として、花を買いに来ることが多いです。}

日本とフランスで買いに来る人の偏りがあるわけではないということがわかった。それはお店によって異なり、特にお店がどこにあるのかなど、立地によって変わってくる。例えば、駅の近くにあれば、仕事帰りや出かけるついでに立ち寄りやすいため、幅広い年代の方が来、田舎や商店街のほうにあればご年配の方が買いに来られるといった具合だ。
また目的は日本では、二次会用や、送別会、発表会な、イベントのために買いにことが多く、フランスは贈り物のためというのが多かった。フランスには日本でいう送別会や二次会などが存在しないため理由に上がらなかった。

Q:一番お花が売れる時期はいつですか?なんの花ですか?

日本

日{母の日、正月、年末、お盆、ブライダルシーズン、敬老の日}
花{菊、バラ、カーネーション、鉢物}

フランス

日{母の日、春の間、バレンタイン、クリスマス、La fête des grand-mères}
花{バラ}

母の日というのはどちらの国でも共通しています。そのためか、日本ではカーネーションがよく買われる花に上がっているが、フランスではバラのみで、カーネーションという回答がなかったのは文化の違いが出ている。
母の日以外で挙がった時期は、日本では正月や年末というものだったのですが、母の日や冠婚葬祭以外で日本人が花を買うイメージがなかった私たちにとって、花=お正月というイメージがなかったので、日本の花屋さんのインタビューでお正月と言われることが多くて驚きました。
対するフランスでは日本にはないバレンタインという回答がありました。アンケートの“どのようなときにお花を買いますか、贈りますか”の結果と同様の理由、考察になります。

Q:お花のディスプレイの仕方で気をつけていることはありますか?

日本

Aoyama Flower Market
お客様が自由にとれるように。安全面では、倒れてこないように。値段を掲示する。見やすくする。

BENI HANA
見やすくするために、横の花と色が被らないようにする。段差を作る。引きで見た時も、きれいに見えるようにする。

HANAGOKORO
お客様に見やすいようにディスプレイする

フランス

L'ARBRE PARIS
美しく魅せることが大事。esthétique

EURO-PARC
お客様の視線を引き付けるために、ディスプレイは美しくし、きれいに並べるようにしている。

たくさんの種類がある。日本はお客様が取りやすいように花は配置され、値段もつけられている。また、育て方や花の説明なども一緒に書いてある。サービスが行き届いている。集団的、相手を思いやるところからそうなっているのり、こまごましているが取りやすい。
フランスでは自分の店をどれだけ美しくみせるか、どれだけ自分の色を出せるかにこだわっているように思えた。自分が強い。個性的。値段は表記されていないし、花は取りにくく、自分では取らないスタイル。花を置いているというよりはかっこよく飾られていて、高さも高いところまで花があるため、安全性が高いとは言えない。また、花と同じくらい物も置かれてあった。こまごませず、一つ一つがドーンとしてる感じ。
日本はお客様のことを第一に考えるディスプレイの仕方であるのに対し、フランスは花のことを一番に考えるディスプレイの仕方である。

Q:フラワーアレンジメントをする際に、お客様の要望に応えるために一番気をつけていることは何ですか?

日本

・お花が傷ついていないか見せる。
・お客様がイメージしているのをなるべく聞いてそれ通りに作る。
・お客様とおしゃべりして、好みを引き出す。
また、途中経過を見せる。

フランス

・お客様が好む花を選んだり、その花を多く入れて花束を作る。

どちらの国も、話をすることでお客様の要望になるべく答えた花束を作ろうとしている。
日本の方ではお花が傷ついていないか見せる、というのがあるが、日本らいいのではないかと思う。あとで取り上げる花束の作り方の違いからもそのことがうかがえる。
お客様に途中の過程を見せるところなどが、日本のほうがよりお客様のことを考えていると感じた。花束が出来上がる時間はフランスのほうが早かったと思った。

日本とフランスの花束

日本

フランス

花束の分解

日本(8種類)

フランス(5種類)

日本とフランスの花束

華やかな花束

落ち着いた花束

花束のラッピング

日本

フランス

花束1

花束は前に述べたように、3000円(30ユーロ)で、友達の家に招待されたという理由で作ってもらいました。

花束2

バラピンク、Artichauts、葉っぱ2種類、ひまわり、何かわからないやつ。

花束3

2種類葉っぱ、ユリピンク、2タイプのバラ白、バラピンク、カーネーションピンク、ガーベラ赤

花束4

種類は日本の方が多く、色合は日本はピンク系統と、タイプをそろえてきたのに対し、フランスはバラバラだった。これによって日本ではまとまりがあって、全体的にふわっとした感じになったが個々の花が活きているかというと混ざり合っていてよくわからない感じ。対するフランスはまとまりはないものの、個々の花が活きていて大胆な印象を受ける。また、フランスはスタイリッシュでかっこいい感じのお店や花束が多いように思う。
メインの花があり、周りに小さめの花が入れられているところは共通しているが、真ん中に緑のものが置かれるのは日本では珍しいと思う。日本では緑はサブの役割。また、フランスの花束にはArtichautsやオレンジの実が入っているが、日本では花束にこれらが入っているものは見かけない。珍しい。

花束5

フランスは色味もおちついているし、リボンではなく紐のようなものでまとめていたので、ラッピングなどにあまり派手なものは使わずシンプルなものが多い。それに対し日本はやはりラッピングもかわいくピンクのフィルムに入れてあり、リボンも赤で華やかにしてあります。また、日本の花束は枯れにくいように茎の部分に水をしみこませたものがついていましたが、フランスはありませんでした。このあたりから、質問6のサービスの違いがうかがえる。

花束6

一つは、日本とフランスで“美しい”の定義がそもそも違うのではないかということだ。
アンケートの“花屋に何を重要視するか”の結果であったように、日仏共に花そのものの美しさと答えた人が多かったが、花束を見る限りこれだけ違うものができあがったのでそう思いました。日本ではかわいいものが美しく、フランスではクールなものが美しいというように、日本はかわいい文化だから花束もカラフル(色味が派手)でかわいいものが多く、そのため、小物などかわいい人形などを花と一緒に添えているところもフランスではあまり見ないが日本では多い。また、フランス人の国民性は個人を尊重し、個性を重要視することから、そのような精神が表れた花束こそが美しいということから、このような花束になったのでは。
二つ目はフランスと日本での花が持つ役割がそもそも違いうのではないかということです。
フランスでの花の役割はむかしから、誰かに思いを伝えるための手段としてが多かったのではないだろうか。思いを伝えたいのであるから、色の派手さは関係ない。大事なのはその花束に込めた自分の気持であったり、思いです。日本では思いを伝えるときに花を贈るというよりは、お祝いの時に贈ることが多いことから、めでたさを表すためにも、華やかなものが好まれる傾向にある。そこから海外の文化が入ってきたことによって、男性が女性に花束をという文化がひろがり、男子は華やかなものを女子に贈るようになった。

まとめ・感想

平林 黎

今回、実際に調査をしに行ってみて、本やネットではわからない部分まで気づくことができ、本当によかったです。花の文化一つにつけても、歴史的背景であったり、国民性であったり、色々なことが関わっていてとても興味深いなと感じました。また、花の文化といっても育てたり、食べたりとまだまだたくさんあるので、次はそのような文化の違いも調べようと思います。

猿渡 りえ

日仏とも現地に行って調べて、私が思っていたより花束や花屋さんの考え方、店舗に日仏の違いが大きく出たのは調べていて興味深かったです。フランス語専攻として日仏の花について調査したことは、私にとって大きな財産になりました。ここで学んだことを今後に活かしていきたいと思います。

フォトギャラリー