調査内容
「依頼」とは、「話し手が聞き手に対して何らかの行為を行う、または行わないように促す発話行為」であり、必然的に聞き手に何等かの「負担」をかけてしまうため、関係修復に関する特別な配慮が必要な行為です(近藤 2009)。そのため、この分野では多く取り上げられています(清水 2009)。
依頼の中間言語語用論を見るにあたり、ストラテジーの分類分けが必要となります。今回はTrosborg(1995 :205)の分類を参考にしました (清水2009 :106)
Ⅰ.間接的依頼 1.ほのめかし(弱め) : “I have to be at the airport in half and hour.”
(強め) : “My car has broken. Will you be using your car tonight?”
Ⅱ.慣習的間接(聞き手志向)2.能力 : “Could you lend me your car?”
意思 : “Would you lend me your car?”
許可 : “May I borrow your car?”
3.提案的定式 : “How about lending me your car?”
Ⅲ.慣習的間接(話し手志向)4.希望 : “I would like to borrow your car.”
5.願望・必要 : “I want/need to borrow your car.”
Ⅳ.直接的依頼 6.義務 : “You must /have to lend me your car.”
7.遂行動詞(緩衝あり) : “I would like to ask you to lend me your car.”
(緩衝なし) : “I ask/require you to lend me your car.”
8.命令 : “Lend me your car.”
省略句 : “Your car (please).”
ⅠもⅡ・Ⅲも間接的に依頼を行うストラテジーです。これらの違いはⅡ・Ⅲが「多くの状況下で、何が意味されているのかに疑いの余地のない程度にまでこれらは慣習化されているため」、その文字通りの意味、つまり直接的な発語内の効力を持つことはできなくなっている点です。間接的な依頼の多くは、依頼する事柄が実際に相手によってなされることを前提にしているため、かなり無遠慮なものとBrown & Levinson(2001)は考えました。
曽我(1995)は、社会的・心理的距離の大小と、行動要請の内容に応じてストラテジーを変化させると述べています。
« Tu » と « vous » の使い分け
・動詞 « vouloir » と « pouvoir »、そしてその活用の使い分け、命令、半過去形、条件法
・モダリティの副詞を用いて断定を避ける表現形式
林(2009)も語気緩和法のために、日本語と同じくフランス語にも、動詞活用のような文法的手段と副詞(的表現)を用いるという大きく二つの手段があるとしました。
« Je voudrais » は固定化されているため、直接法現在の « Je veux » は丁寧さを欠くことも述べています。
副詞(的表現)のモダリティとしては、“un peu”, “juste”, “quelque chose”, “petit”, “un coup de”を挙げています。