お茶と日本酒は
       フランス人に浸透するのか

メンバー紹介

魚住美羽
文・外国語学科フランス語専攻3年
苦手な食べものは「魚」。

柴田綾香
文・外国語学科フランス語専攻3年
日本酒が好きで酒蔵巡りがマイブーム。

はじめに

こんにちは!わたしたちは「フランスにおけるお茶と日本酒」をテーマに、 フランス・パリで、ホームステイをしてインタビューしてきました。

「パリではお茶と日本酒が人気!」…ってほんとう?

世界中では日本食がブームです。
2013年には「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録され、 世界中で日本食レストランが増加しつつあります。 フランス・パリでは、日本食レストランだけでなく、日本食材を扱う専門店も注目を集めています。 たとえば、2008年には、日本茶の専門店『寿月堂』がパリのサンジェルマン大通りの一角にオープンしました。 ここでは、本格的な日本茶葉の販売だけではなく、伝統工芸品の展示やお茶講座を開催しています。 さらに今年2016年2月には、日本酒専門のカーヴ&バー&レストラン(居酒屋) 『La maison du saké』がパリ2区にオープンし、日本産の地酒を販売しています。

しかし、農林水産省のデータによると、日本酒のフランスへの輸出量は過去数年横ばいであり、 あまり変化はありません。また、お茶については、スーパーなどの売り場に並ぶ緑茶のほとんどが、 実は中国産というのが現状です。

疑問点

お茶や日本酒は、一般のフランス人の普段の生活に浸透しているのか
(ニュースなどによって私たちが抱くイメージと、実際の現状には違いがあるのではないか)

調査内容

お茶と日本酒を試飲していただきながら、フランス人がこの2つの飲料をどのように受けとめているのかお話を伺いました。

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調査結果

フランスにおけるお茶と日本酒の人気は、一部のフランス人のブームにすぎず、 一般的なフランス人の普段の生活に浸透しているとは感じられませんでした。 しかし、彼らのお茶と日本酒に対する興味を聞くことができ、 今後もっと広まっていく可能性は大いにあることが分かりました。以下、取材結果を6つに分けてまとめています。

➊スーパーではほとんど見かけない

滞在中にパリ市内のスーパーをいくつか周りましたが、わたしたちが見た限りでは、 日本酒を見かけることはありませんでした。 お茶については、「伊藤園」のお茶がパックで売られているものを見かけました。

➋知ってはいるけど、飲んだことはない

今回のインタビューは、あらかじめアポを取っていたパリ在住のフランス人の方々に、 友人を招いたホームパーティを開いていただき行われました。計2回のパーティで、 合わせて10名の方に試飲していただき、その内「お茶を飲んだことがある人」は10人中3名、 「日本酒を飲んだことがある人」は10人中2名でした。

➌味は『おいしい』

今回はお茶の試飲として、緑茶(温・冷)と抹茶を飲んでもらいました。 普段、砂糖を入れた紅茶などのドリンクを好むフランス人には、 砂糖を入れない、苦みや渋みを味わうお茶は受け入れてもらえないのではないかと懸念していましたが、 全体的には「おいしい」といって飲んでくれた印象を受けました。 しかし、抹茶については意見が分かれ、苦味が強いためあまり好んでは飲まない方も中にはいました。

➍食事と合わせた飲み方が知りたい

日本酒は、2種の銘柄を冷酒で飲んでもらいました。 上品な甘さで爽やかな飲み口のお酒と、丸みを帯びた味と香りが楽しめるお酒、 それぞれ違う性格を持つお酒を用意しました。「魚と合わせると美味しいと思う」 「食後にデザートと一緒に飲むといいと思う」などの感想が寄せられました。 これは「魚には白、肉には赤」「シャンパンを食前酒として飲む」といった、 フランス料理における慣習が根付いているためと思われます。

➎日本酒をカクテルとして飲む

「日本酒を使ったカクテルはないのか」という質問を受けました。 実際、日本には日本酒カクテルを出すお店もあるようで、 カクテルの他に、日本酒スパークリングなどは、女性や日本酒が苦手な方でも 飲みやすいと人気が高まっているようです。フランスの方からは 「シロップやジン、コーラなんてどう?」という面白いアイディアが提案されました。

➏日本での飲み方を知りたい

急須を使ってお茶を淹れたり、抹茶を点てたりしている様子を見ながら、 「どうやって淹れるのか」「日本では抹茶はいつ飲むのか」ということにも興味を持っているようでした。 お茶や日本酒を単なる飲みものとしてではなく、日本の伝統文化として理解を示してくださっていると感じました。

まとめ

「パリでお茶や日本酒が人気」というのは一部の人のブームであり、 一般のフランス人の生活にはまだまだ浸透しているとは感じられませんでした。 しかし、今回インタビューに応じてくれたフランスの方々は、お茶や日本酒に大変興味があり、 なおかつ、自分たちでも楽しめるような飲み方の工夫を提案しながら、 それらを受け入れようとしてくださいました。自国の文化に誇りを持っているフランス人ですが、 今回の調査を通して、彼らの他文化に対する柔軟性を発見し、 受け入れてくれる可能性は大いにあると感じました。

感想

パリでお店を見ていてチョコレートや料理に抹茶が入っているなど、抹茶のパウダーは結構使われているみたいでした。 反対に、緑茶は入れ方等分からない部分が多く、味も苦くて渋いせいか、茶葉を見かけることはありませんでした。 しかし、お茶には今回あまり紹介できなかった健康という側面もあります。 緑茶には様々な効能があり、中でもカテキンは抗がん作用があるとして世界から注目されています。 現在フランスでは、どのスーパーにも自然のままの製品「bio」が置いてあるほど、 健康意識が人々に浸透しています。味や伝統文化という部分だけではなく、 健康面を伝えていくことによって、より親しみ深いものになると私は考えます。

わずかな取材期間ではありましたが、お茶や日本酒がフランスに浸透していく可能性があることが実感できたおかげで、 日本の伝統文化である日本酒を世界へ伝えていきたいという思いが一層強くなりました。それを実現するためにも、コミュニケーションツールとしてのフランス語をさらに勉強することはもちろん、まだ気づけていないであろう自国の文化の素晴らしさを再発見していきたいと思います。今回の取材をするにあたって、お茶や日本酒についての知識を深めるために、福岡県にある造り手の元を訪問しました。八女茶を製造・販売する矢部屋 許斐本家の許斐さんや、株式会社杜の蔵の森永さんのお話を伺うことができたことは、日本の伝統文化を学びたいと思うきっかけになりました。

フォトギャラリー

サイトについてのコメント

テーマがはっきりとしていて、取材結果もよくまとめられています。筆者の提議に沿って難なく読み進めることができるでしょう。フランス語の翻訳について気を付けたいことは、本文において間違ったフランス語の表現や単語の活用をしている文章がいくつかあることです。(アンスティチュ・フランセの先生より) Le sujet est clairement présenté et les résultats de l’enquête sont bien exploités. On suit sans difficulté le développement du propos des auteurs. La conclusion et les avis personnels sont clairement exprimés. Attention, quelques phrases, expressions ou mots sont parfois mal formulés ou mal utilisés dans le contexte.(selon l'institut français)
【アンスティチュ・フランセの先生へ】
この度は、「p.コミュニコン」の活動にご協力いただきありがとうございます。渡航前の取材に関するアドバイスやサイトに掲載する本文のフランス語校正など、 およそ1年間を通してさまざまな面のサポートをして頂きました。今回の活動は、参加した学生が取材計画・実行・報告など全ての内容を自分自身でやり遂げるプログラムです。 しかしその陰ではたくさんの方々の支えがあり、その支えのもとこのプログラムが成り立っているのだと思います。アンスティチュ・フランセの先生をはじめとするご協力いただいた全ての方々に お礼申し上げます。
【ご協力いただいた杜の蔵森永さん・許斐本家許斐さんへ】
本テーマの調査にあたり、急なお願いにもかかわらず快く取材を許可してくださり、また沢山のお話していただきありがとうございました。私たちは初めお茶や日本酒に関して十分な知識はありませんでしたが、 丁寧に説明していただき、更には渡航においても親身になってアドバイスをいただきました。このプログラムを完成させることができてのも、お二人の協力のおかげです。本当にありがとうございました。