概説

Wnn6 for Linux/BSD Ver.3.0 の特徴

本製品は、１９９９年にリリースされた Wnn6 for Linux/BSD Ver.3.0 のサーバ部分を、クライアント向けに独立させたものです。

サーバ部分の機能および性能については、基本的に Wnn6 for Linux/BSD Ver.3.0 と同等ですが、クライアント側の機能により、変換機能および学習機能の実現に制限を受ける場合があります。

本製品はＷｎｎ６の優れた変換サーバ部分を提供するもので、クライアント側の動作についてはサポートしておりません。

1.Ｗｎｎ６の高い変換効率

Ｗｎｎ６の日本語変換機能は、ＦＩ(Flexible Inteligence) 変換機能と ＦＩ学習機能により、９５．６３％という最高水準の変換効率を実現しています。
Ｗｎｎ６の日本語変換処理は次のように分類することができます。
• 文節切り処理
  読み文字列を最適な文節単位に区切ります。
• 同音異義語処理
  すべての文節に対して、格情報（主格・目的格・所有格・修飾格など）の解析を行い、文章全体から見て最適な同音異義語の候補をかえします。
• 確定後学習処理
  確定されたかな漢字混じり文から有効な格係り受け情報を抽出し、ユーザ辞書にその関係を登録または学習していきます。

これらの処理を通して、文節間の接続状態から最も使用頻度の高い変換を行う機能をＦＩ変換といい、次のような変換機能があります。

格係り受け変換、所有格変換、受身変換、使役変換、 合成語変換、修飾語変換、複文変換

ＦＩ変換で新しく確定された文節間の関係規則を、各ユーザのＦＩ関係辞書に登録し、ユーザごとに変換規則を最適化する機能をＦＩ学習といいます。 また、ＦＩ学習機能以外にも、次のような学習機能があります。

文節切り自動学習、無変換学習、接頭語学習、送りがな基準学習、 接尾語学習、数字学習、登録語自動反映、オフライン学習

クライアントにより、以上のＷｎｎ６のＦＩ変換・ＦＩ学習の全機能をサポートすることができない場合があります。
また、ご使用になるクライアントにより、各種変換・学習機能の設定方法が異なりますので、各クライアントのマニュアルなどでお確かめください。

2.クライアント／サーバ

Ｗｎｎ６のシステム構成は、クライアント／サーバ方式を採用しています。
これにより、サーバ側の辞書で複数のクライアントが学習することで、グループ辞書としての学習効果が向上します。
また、オフライン学習機能もサポートしています。
オフライン学習機能には、学習処理機能（使用頻度の推移により、頻度下げや単語削除を行います。）と登録語自動反映機能（複数のユーザで使用されている単語をマージ辞書へ登録します。各ユーザ辞書からは、マージ辞書へ登録した単語を削除します。）があります。オフライン学習機能により、変換効率の向上とディスク・メモリ資源の削減が行われます。

このようにＷｎｎ６では、クライアント／サーバ方式の特徴を最大限に生かして、辞書の一括管理を行っています。
また、サーバへアクセス可能なクライアント（ホスト名、ユーザ名を使って指定します。）を制限することができ、システムのセキュリティも配慮しています。

3.辞書（注）

辞書の語彙数などによる規模は、以下のようになっています。

• システム辞書語彙数

  約 30 万語

• ＦＩ関係用例数

  約 300 万

• 辞書ディスク容量

  約 15.0 MB（ＦＩ関係システム辞書を含む）

• ユーザ辞書の配置

  サーバ側／クライアント側で選択可能

• ユーザ辞書への登録機能について

  最大登録語数	システムからの制限はありません。 ご使用のマシンのディスク容量によります。
  登録読み文字数	256 文字
  登録漢字文字数	256 文字
  登録読み文字種	全文字種
  登録漢字文字種	全文字種

システム辞書には、岩波国語辞典第四版をもとに、次のような独自の語彙を加えて収録しています。

• 現代語、話ことば
• 複合語、複合品詞
• 全国の主要地名、世界の国名、都市名
• 人名（姓／名の分離）

（注）

Ｗｎｎ４の付属語ファイルをＷｎｎ６の jserver で使用した場合「古いバージョンの付属語ファイルが設定されています」というメッセージが表示されて、jserver が正常に動作しなくなる場合があります。

4.辞書コンバータ

他の日本語ＦＥＰ（ATOK7 / ATOK8 / VJE-Delta / EGBRIDGE）で作成された辞書から、Ｗｎｎ６の辞書フォーマットへ変換する辞書コンバータがあります。
貴重な辞書情報をＷｎｎ６でも活用することができます。

Wnn6の変換／学習機能

1.変換機能の紹介

Ｗｎｎ６におけるＦＩ変換とは、文節間接続関係辞書（ＦＩ辞書）を用いて、変換文字列中の各文節間の接続度合いを調査し、接続度合いの高い候補を優先して変換する機能をいいます。これにより、変換効率の大幅な向上を実現しています。

ＦＩ変換

格係り受け変換

変換文字列中において、格情報を持つ文節と述語文節との接続関係を見ます。

（例）

が格	手が挙がる／株が騰がる／てんぷらが揚がる
を格	身長を測る／時間を計る／暗殺を謀る
に、には格	宿に泊まる／駅に停まる
で格	汽車で帰る／貴社で会う
へ格	京へ向かった／今日へ持ち越した
より格	車より速い／予定より早い
から格	敵から奪回する／会から脱会する
まで格	誤解まで招いた／五階まで昇る

ＦＩ変換

所有格変換

変換文字列中において、所有格情報（の格）を持つ文節と対象文節との接続関係を見ます。

（例）

・かいとう → 会頭の回答 ・かいじょう → 会場の開場

ＦＩ変換

受身変換	変換文字列中の述語文節に助動詞『れる』『られる』がついている場合、「受身」「可能」「自発」「尊敬」の効果を判別して、格係り受け接続関係を見ます。

（例）

ＦＩ接続関係 変換可能文字列 受身 交通を―規制する 交通が規制される 可能 テレビを―見る テレビが［を］見られる 自発 故郷を―偲ぶ 故郷が偲ばれる 尊敬 社長が―読む 社長が読まれる

ＦＩ変換

使役変換	変換文字列中の述語文節に助動詞『せる』『させる』がついている場合、「使役」の効果を判別して、格係り受け接続関係を見ます。

（例）

ＦＩ接続関係 変換可能文字列 使役 彼が ― 答える 彼に答えさせる

ＦＩ変換

合成語変換

変換文字列中において、２種類の文節が接続して１つの意味を持つもの（複合語、人名）の接続関係を見ます。

（例）

・複合語 集団‐登校 会社‐訪問 ・人名 福沢‐諭吉 夏目‐漱石

ＦＩ変換

修飾語変換

変換文字列中において、修飾を表す文節（形容詞、形容動詞、副詞、連体詞）と被修飾文節との接続関係を見ます。

（例）

形容詞	あつい△△△	熱い湯／厚い本／暑い夏
形容動詞	ていちょうな△△△ ふしんな△△△	丁重な挨拶／低調な作品 不審な人影／不振な成績
副詞	▲▲▲もる	ぽたぽた漏る／こんもり盛る
連体詞	▲▲▲きのう	小さな機能／楽しかった昨日






ＦＩ変換

複文変換	変換文字列中において、［格情報文節＋述語文節］の組合せが複数存在する場合、それぞれの接続状態を判別して、接続関係を見ます。

（例）

▽ ▼ ・家が建ち人が立つ

ＦＩ変換以外の変換

郵便番号変換	郵便番号からその住所に変換します。 600 ⇒ 京都府京都市下京区
電話番号変換	電話番号からその住所に変換します。 07 5⇒ 京都府京都市
複合語変換	付属語を含まない候補を優先します とうきょうと ⇒ 「東京-と」より「東京都」を優先します。
最終使用最優先変換	同音異義語の中で、直前に使用した単語を、必ず先頭の候補に上げます。
異形字処理	新字⇔旧字、略字⇔正字の変換を行います。 渡辺 ⇔ 渡邊
連濁処理	連濁した読みを、発音通りに入力すると、正しい漢字に変換します。
揺らぎ処理	入力文字列が辞書に登録されていない場合、その文字列と表記は異っても、同じ発音になる別の単語が辞書に登録されていれば、その単語を候補として提示します。

2.学習機能の紹介

Ｗｎｎ６におけるＦＩ学習とは、ＦＩ変換（格係り受け変換／所有格変換／受身変換／ 使役変換／合成語変換／修飾語変換／複文変換）で、 現在のＦＩ関係辞書に登録されていない文節間の関係をユーザが 確定した場合に、新しくユーザごとのＦＩ関係辞書に登録する機能をいいます。
ＦＩ学習機能以外にも、次のような学習機能があります。

ＦＩ学習以外の学習

文節切り自動学習	文節の切り直しを行って、変換文字列を確定した場合に、切り直した前後の文節をＦＩ学習機能で学習します。
無変換学習	辞書に登録されていない「ひらがな、カタカナ、ローマ字」の候補が確定された場合に、自動的に辞書へ登録します。
接頭語学習	接頭語に「お・ご」「御」のどれを使用するか、直後の名詞ごとに学習します。
送りがな基準学習	送りがな基準がある単語は、単語ごとに確定した規則（本則／おくる／おくらない）を学習して、直前に使用した規則を最優先します。
接尾語学習	単語ごとに確定した文字列の接尾語の規則（カナ／漢字（おくる）／漢字（おくらない））を学習して、直前に使用した規則を最優先します。
数字学習	確定された数字表記の種類（漢数字、半角、全角、カンマ付き）を学習し、直前に使用された種類を最優先します。
登録語自動反映	複数のユーザ辞書で登録されている同一単語を、マージ辞書に反映させます。
オフライン学習	Ｗｎｎ６の変換効率の向上とディスク、メモリ資源の削減を目的に、オフラインで動作する機能をいいます。不必要な単語の削除や頻度の再配置を行い、登録語自動反映モジュールを起動させます。