1.(1) G株式会社は、S有限会社に対して、商品を販売していたところ、最近、S社の支払いが滞っている。G社の担当者は、S社との取引を清算し、未払いの売掛金の強制的な回収を行うことを決断し、S社を相手に訴えを提起したところ、S社が口頭弁論に欠席したために、思いの外簡単に、請求認容の確定判決を得ることができた。ところが、S社がどこにどのような財産を持っているのかがわからない。G社としては、どのようにすればよいか。
(2) G社がS社に販売した商品が倉庫会社Dの倉庫にあることはわかっている。また、他社がS社に販売したものもD社のところにある。しかし、D社は、いずれの商品の引き渡しも拒否している。G社は、D社のところにある商品を競売して、そこから、売掛金の回収を行うには、どのようにすればよいか。
(3) そうこうするうちに、S社の社長S'が、G社に来て、「もうしばらく待って下さい。」と頼んできた。そこで、G社の担当者としては、一カ月待つことにするつもりだが、一カ月後に支払いがなされなければ、直ちに、S'の個人財産に対して、強制執行をすることにしたいと考えている。そこで、SのGに対する債務を、S'が、重畳的に債務引受することとし、そのような文書をS'に作成させて、Gが保管することとした。それだけで、Gは、(1)に記載の確定判決によって、S'の個人財産に対して強制執行をすることができるか。
2. あなたは、P社の総務課に勤めており、従業員の給与の支払いを担当している。P社の従業員aが、最近、離婚した、という噂を耳にした。加えて、サラ金からお金を借りて、中州で飲み歩いているらしい。そうこうするうちに、今日(1月28日)、裁判所から「債権差押命令」なるものが二通届いた。いずれも、債務者をaとするもので、ひとつは、(民法766条を根拠とする)子どもの養育費。毎月月末を弁済期として、月々8万円。もうひとつは、サラ金業者からの借金で、すでに弁済期の到来している40万円。いずれも、1月30日にP社がaに支払うボーナスおよび毎月25日に支払う給料を差し押さえる、というものである。1月30日のaのボーナスは、手取り、80万円、毎月の給料は、手取り、28万円である。あなたは、aへのボーナスおよび給料の支払いにつき、どのようにすべきか。ちなみに、民事執行法152条1項柱書かっこ書にいう「政令で定める額」とは、33万円とせよ(民事執行法施行令参照)。また、執行費用については、無視してよい。さらに、aは、2月1日以後、毎月1日に、サラ金に対して、残債務の範囲内で、任意に、2万円ずつ弁済するものとして、債務がすべて弁済されれば、サラ金業者は債権執行を取り下げるものと仮定せよ。
3. あなたは、自己の所有する家屋を、Mに賃貸している。しかるに、ここ半年、Mは家賃を支払ってくれない。そこで、あなたはMに立ち退きを要求したところ、Mが拒絶するので、家屋の明け渡しを請求して、訴えを提起しようと思っている。ところが、Mは、あなたの家を、M'に転貸する素振りを見せている。M'は、さらに、M"に転貸するかもしれない。あなたは、無事、家屋の占有を回復できるか。そのためには、どの時点で、いかなる法的措置をとる必要があるか。
注:すべての設問に答えること。設例はフィクションである。根拠となる条文を示しつつ、説明すること。書き込みのない六法のみ持ち込みを許可する。A評価の答案のうち特に優れたものを、WWWで公表することを考えている。公表を希望しない者は、その旨、答案用紙に明記されたい。