「2004年度(後期)民事手続法II(週1コマ 2単位) 期末試験」の中で、私が、もっとも優れた答案と判断したものを、以下に紹介する。ちなみに、これは、2年生が60分の試験時間内に作成した答案である。
 なお、必ずしも満点の答案ではないので、誤っているところ、足りないところを、各自研究されたい。


1.(1) G社は、請求認容の確定判決を得ている。つまり、債務名義があるので、民事執行法197条に規定のあるように、執行裁判所に、財産開示手続きの申立をすることができる。

(2) G社は、民事執行法122条に規定のある、動産執行をするべきである。この商品をS社が占有していれば、民事執行法123条1項により、執行官がその商品を占有して行うのであるが、この場合は、D社が占有しているので、民事執行法124条により、もし、D社が提出を拒まなければ、民事執行法123条の規定が準用される。しかし、D社は、商品の引渡しを拒んでいるので、民事執行法163条の規定により、G社はS社が所有権にもとづいて有する商品の引渡請求権を差押さえなければならない。民事執行法143条に規定のある差押命令が債務者に送達されて一週間が経過すると、G社はD社に、執行官に商品を引渡すよう請求できる。その後、動産執行の売却の手続によって売却し、その売得金
を執行裁判所が配当するという手続をとる。

(3) これは、執行力の拡張により、GはS'に対して、この確定判決で強制執行ができると考えられる。これは、民事執行法23条による。しかし、強制執行をするためには、民事執行法25条により、執行文を付与しなければならない。この場合は、承継執行文が必要である。それを付与すれば、GはS'の個人財産に対して強制執行をすることができる。
 
 

2. 民事執行法152条2号によると、給料やボーナスは、その四分の三については差押さえてはならないことになっている。従って、給料については、その四分の一、つまり7万円だけ差押えることを許すことができる。また、ボーナスについては、四分の一とすると20万円しか差押えできないこととなるが、152条1項柱書により、33万円は差押さえてはならないが、残りの47万円については差押を許すことができる。
 
 

3. 仮に、私が、Mに対して明け渡しを認める確定判決を得ても、Mが口頭弁論終結前に、M'に転貸すると、民事執行法23条により、M'に強制執行をすることができない。従って、これをさせないために、まず、民事保全法25条の2に規定のある占有移転禁止の仮処分命令を求めるべきである。その効力は、民事保全法62条に規定がある。この占有移転禁止の仮処分をしておくと、Mに対する明け渡しを命じる確定判決を債務名義として、M'やM"に対しても明け渡しを求めることができる。これを仮処分の当事者恒定効という。従って、この場合は、まず、占有移転禁止の仮処分をした後で、Mに明け渡しを求める訴えを提起すべきである。
 
 
 
 

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