パリジャンたちは国と市との対立にまで発展したこの地下鉄建設のいき
さつも面白おかしく歌にしてしまった。シャンソニエーのジュール・ウドーは“メトロメトロポリタン”という歌をつくった。
ここでは冒頭を少しだけ紹介することにしよう。

  “メ  ト  ロ  ポ  リ  タ  ン”                          ジュール・ウドー作
あれはまあ もう、二十年も前のこと
一人の切れ者が考えた。
ヴィレットや、ロンシャンの原っぱへ行くのには
ずいぶん時間がかかるなあ。
そして、そうしたある夕べ
静かなルーヴル河岸に
流れを見ながら座ってた。つとひらめいた考えは
そうだ、メトロポリタンだ。
まあ何はともあれ大臣殿へ
自分の意見を披露した。
大臣殿は喜んで、そりゃ良い考えだよ、合点だ。
すぐさま、委員会をつくらせよう。
そこで、政府の委員が選ばれたけど、
パリ市の議会がいうことにゃ
あんた方、そりゃすじ違いだよ。メトロのことを
お上がりやるのは間違いだ。
まあたとえ、それがあんたらの意見としても、
仕事をやるのは我らがパリ市、
私らだって間抜けじゃないさ
メトロポリタンはつくります。
そこでパリ市は委員を決めた。
いろんな案を作っては
それを書類にするばかり
いやはや、それで14、5年。
まあその間、パリジャンたちも
喧々ごーごの大騒ぎ。
いったい地下を通すのか、それとも高架にするのか
どうやってメトロをつくるんだ。
そこでまたまた委員を選び
あれやら、これやと本気になって
一つ、一つと研究し、やっと発表になったのは
地下を通すという案だった。
まあ仕方がないさとお偉方
上院、下院のお揃いで
この計画を受け入れて、二十二人を無記名投票、
政府の委員会をつくってもらった・・・・・・。

(以下略)