43.現代における保険の本質

 22「保険本質論」をその後の大きな経済社会の変化を織り込む形で発展させたものである。34以降の論文で保険の金融・福祉両面で高めてきた現代経済の変化に対する認識に基づいている。特に、大きな変化として市場経済化のより一層の進展、金融グローバル化をあげ、このような変化を福祉国家の動揺とし、金融肥大化・自己責任肥大化した社会に変化しつつあるとした。こうした変化の中で保険自体が動揺し、保険本質論が重要になっているとした。22「保険本質論」同様「予備貨幣再分配説」を支持する立場であるが、予備貨幣再分配説の意義を保険の動揺を踏まえながらより積極的に捉えた。そのために、新たな保険学説が従来の学説に対する批判的形態をとるという面を22「保険本質論」よりも重視し、予備貨幣再分配説についてはその意義を「混合経済における保険本質論」として明示した。22「保険本質論」同様、保険学説としては経済準備説、経済的保障説、予備貨幣再分配説を取り上げているが、それぞれの学説のそれ以前の学説に対する批判的形態の側面を重視する考察を行った。
 経済的保障説は、社会保険を包含できず、保険の金融的機能についての把握のない経済準備説を社会保険・協同組合保険をも包含する保険の総合的定義、保険の経済的保障機能、金融的機能の融合的定義という形で乗り越えている、とした。予備貨幣再分配説は、中途半端な保険の原理・原則の緩和で社会保険・公的保険を捉えきれていない経済的保障説を保険の原理・原則を柔軟に把握し、保険料徴収保険給付の全過程を予備貨幣再分配概念として捉えて保険を把握することにより、混合経済下の経済的保障制度としての保険の把握という形で経済的保障説を乗り越えている、とした。このように、予備貨幣再分配説の経済的保障説の批判的形態を明確にしつつ、その意義を明らかにしている。