「相互会社の現代的考察」

  39「予定利率引下げ問題についての予備的考察」、40「改正保険業法について」では、保険金額削減規定との関係で前払確定保険料方式という保険取引の位置付け、相互会社の捉え方が重要となるが、39「予定利率引下げ問題についての予備的考察」、40「改正保険業法について」の論文に基づく学会報告において、これらの点について異論が出され、また、39「予定利率引下げ問題についての予備的考察」におけるオプション理論を使った予定利率の把握についても、そのようなアプローチを採る意義がわからないとする批判を受けたので、これらの異論、批判に答えることを通じてより考察を深めるために、相互会社をテーマとして考察した。
 これまでの相互会社の研究において、理念と現実との乖離が問題とされることが多かったが、本稿でも同様に理念と現実との乖離を問題とした。特に、営利性に注目した。営利性を考えるに当っては、保険金融が中心となることから、従来の相互会社研究にはない保険金融、運用収益の位置付けなどの考察を行った。学会報告における前払確定保険料方式に対する異論は、前払確定保険料方式を軽視しているためになされたものと思われたので、前払確定保険料方式は近代保険のメルクマールとすべきほど重要であるとした。その重要な前払確定保険料方式により保険金融は発揮されることとなるが、現代の金融機関・機関投資家としての保険会社の位置付けを考えると保険金融による運用収益の利益性を考えることはあまり意味のないこととした。この考察過程で予定利率をオプション理論で捉えることの保険学的意義を示した。

 既に相互主義・相互扶助の理念が形骸化し、手段と化している現代の相互会社にとって、金融自由化は相互会社を不利な企業形態にしており、もはや相互会社の意義は相互会社がもともと潜在的に持っている資本主義的企業のアンチ・テーゼ的意義くらいしかなくなってしまったのではないかとした。しかし、その潜在的意義を顕在化させるような状況にはないことが、現在の相互会社を取り巻く厳しい環境に他ならない。