「改正保険業法について既契約の予定利率引下げ」

  39「予定利率引下げ問題についての予備的考察」の論文の続編であり、改正保険業法に関するガイド・ラインが出されたのを受け、改正保険業法に関する本格的な考察を行った。まず、今回の保険業法改正の経緯について述べ、いかにそれが不透明であり、検討・審議過程自体が生命保険不信をさらに深めたと思われ、保険行政の責任は極めて重いとした。
 ガイド・ラインについて考察を加え、最も注目される改正保険業法の適用の柔軟性については、柔軟に改正保険業法の適用を考えているとした。この点は39「予定利率引下げ問題についての予備的考察」で指摘した、前払確定保険料方式を傷つける危険性があり、問題であるとした。次に39「予定利率引下げ問題についての予備的考察」で指摘した論点のうち、基金・劣後ローン等、経営責任の取り扱いについて考察した。いずれの点においても重要なことは、本質的にいって「破綻前」とされる改正保険業法の適用自体は実質的な破綻処理であるに過ぎないことであり、この点から両者について更正特例法適用の場合と差異をなくすべきであるとした。続いて、引下げ後予定利率に3%という下限を設けることについて考察を加え、簡単ではあるが、金融庁の開示データに基づき、予定利率3%引下げの経済効果についても試算した。さらに、「予定利率引下げ問題についての予備的考察」で論点として指摘していないが重要問題である解約禁止について考察を加え、破綻前の契約条件の変更に関する規定の考察を行った。39「予定利率引下げ問題についての予備的考察」で展開した議論を前提としながら、破綻前の契約条件の変更方法を大きく強制的な方法・行政命令による方法と自主的な方法・保険会社、保険契約者の自主的判断による方法とに分けて考察した。過去にあった保険金額削減に関わる規定である1939年保険業法第10条第3項と第46条を考察するという形をとった。最後に結論として、本来採るべき対応について言及した。