Alternative Risk Transferの理論的考察 

34「保険経済学の課題と方法」では、新たな保険学の課題として保険の経済的保障機能に関わる面での金融的分析の重要性を指摘し、このような現象を「保険代替現象」と呼んだが、この分野の考察は一般的にAlternative Risk TransferART)として考察されるため、本稿でもこれに従って考察した。本稿は、34「保険経済学の課題と方法」における現代保険の把握において効率性(金融性)・政策性(福祉性)が軸になるであろうとした立場から、特に前者の効率性(金融性)に焦点を当てて考察したものである。また、この分野の従来の考察が新しく登場した金融手段の解説に専ら終始しており、保険制度に与える影響を考えるといった制度論的な視点もなく、そして何より問題なのは、全般的に理論的な考察が十分なされているとはいえないことである。そこで、“Alternative という言葉の考察から行い、ARTの定義・リスクマネジメント上の位置付け、またこの分野の基礎概念として「保険代替手段」概念の導入を提唱し、保険代替手段の分類を行うという形で、理論的考察を行った。従来の考察の問題点も具体的に批判し、そのような問題の発生が安易な金融論・金融工学的思考にあるとし、流行となっている「保険と金融の融合」という捉え方自体を批判した。