保険と金融の錯綜現象について

 従来、保険と金融との関わりといえば、もっぱら保険会社の資金運用であった。しかし、近年デリバティブの発達を背景として、保険が対象とするリスクそのもの対して新たな金融手段が用いられるようになり、ARTAlternative Risk Transfer)と呼ばれている。こうした現象を保険と金融の融合として捉える傾向があるが、「融合」というよりも「錯綜」した現象と捉えるべきではないかと考え、論じたものである。「保険代替手段」などの新たな範疇を設け、個々バラバラにARTの特徴を整理しがちな傾向に対して、保険現象全体の中での位置付けというものを考えながら考察した。