「行事食」で考える、子どもに伝わる食育授業。
私の研究分野は、「家庭科教育」です。これまで25年以上にわたり、父親の権威とその影響を明らかにする「父親研究」に取り組んできました。現在は、家庭科教育の一領域である「食育」に関心を広げ、幼児期を対象とした食育、特に日本の伝統行事の際に食べられる「行事食」の研究を進めています。
私がこの研究テーマを選んだ理由は2つあります。1つ目は、小学生・中学生・高校生は家庭科の授業を通して食育指導を受けることから食育研究が多く行われていますが、幼児期を対象とした食育研究はあまり行われていない点です。2つ目は、幼稚園や保育園では節分やひな祭りなどの行事を楽しむ際に行事食を提供しているものの、「行事食にどのような意味が込められているのか」といった背景が十分に伝えられていないと感じたからです。
そこで、将来、幼児の食育の担い手になる学生の行事食に対する意識や知識を高める授業の開発を目指した研究に取り組んでいます。具体的には、「行事食に込められた意味を、5歳児に理解してもらうにはどのように伝えればよいか」という課題を学生に与え、「食育発表会」という形で模擬授業を実施。発表後はお互いに意見交換しながら、子どもにとってより良い伝え方への理解を深めていく学びを実践しました。
実際の食育発表会では、若い感性を生かした多様なアイデアが数多く見られました。特に学生に好評だったのは、お正月のおせち料理についての提案です。「ここには何が入るかな?」と問いかけながら、空の重箱におせち料理のイラストを貼り付けていくという参加型の仕掛けは、楽しみながら学ぶ工夫にあふれていました。今年度は学生同士の発表にとどまりましたが、次年度以降は幼稚園で子どもたちに向けて発表したいと考えています。最終的には、学生の感想や子どもたちの反応などを分析した質的データをもとに、食育発表会の効果を検証し、論文としてまとめる予定です。
この研究の面白さは、幼児期の食育という未開発な分野のため、私自身の「知りたい」という思いを研究に生かせる点にあります。また、方法論が確立されていないからこそ、自分の考えが生かされる可能性があることにも魅力を感じています。そして何より、豊かなアイデアを秘めた学生と共に研究できることです。学生が自らアイデアを考え、それを形にして提案する。その結果として得られる達成感は、学生に学ぶ意欲やチャレンジ精神、そして自信を与えてくれます。そうした学生の成長に立ち会えることが何よりうれしく、私自身も研究への意欲を引き出してもらっています。これからも、教える側・教えられる側という関係ではなく、共に学びを深め合えるパートナーでありたいと考えています。
どんな学生でしたか?
きっかけは?
今年度は、学生の希望を受け、「生活」に関するディスカッションをゼミ活動の柱に据え、調理実習や被服実習にも挑戦し、生活の基礎的な知識と技能の向上に取り組んでいます。
ゼミの特徴は、学生主体で授業を進めていく点です。毎回、当番のゼミ生がテーマを企画し、「食文化」「化粧」「恋愛心理テスト」など、身近なテーマについて議論してきました。自分と異なる意見に触れる機会も多く、多様な考えを受け止め、理解する力を身に付けていきます。また、企画を担当する学生はテーマに関する下調べや資料作成から、当日の進行までを行います。自分のやりたいことに責任を持ってやり遂げる経験を通して、計画を立てる力や人に分かりやすく伝える力を育んでいます。こうした力は社会に出てからも役立つ大きな力です。
調理実習などの実習では、「失敗してもいいので、まずやってみる」ことを大切にしています。実際に料理を作ってみると、「意外と簡単だった」という発見があり、SNSで見たことはあっても実際に調理したことがない学生にとって、ゼミが貴重な体験の場となっています。
こうした経験を通して、身近な生活から社会の課題に目を向け、「自分にできること」を考えられる力を育むことがこのゼミの目的です。例えば、世界のゴミ問題は規模が大きく、「自分にはどうにもできない」と思うかもしれません。しかし、「分別を意識する」といった身近な行動から課題解決をお手伝いするという発想を、「家庭科」という学びから得てほしいと思っています。そして将来、子どもの学びを支えられる実践力と人間性を身に付け、社会や日常生活(身近な生活の場)の中で、生かしてくれることを願っています。