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ODSEI研究所の概要

研究所代表挨拶

 ODSEI研究所は,Organizational Discourse for Socio-Economic Innovationの略(ODSEI)で、ディスコース的視座を共有する本学の研究グループの有志によって、社会と組織の健全な発展のために研究活動が行われ、また教育普及イベントが企画運営されます。

 社会科学における「言語的転回」を、日本の社会と経営・組織についての研究に発展させるものであり、語りの形式,すなわち,ディスコース(言説)を通じた新しい社会問題・経営課題・組織変革へのアプローチを学際的に探求することを目的とします。具体的には、次の3つの課題に集約できます。①基礎的研究:社会科学の諸研究領域におけるディスコース的視座の理論的・哲学的な基礎研究の意義の明確化、②応用的研究:多様な研究課題(たとえばアイデンティティー、組織文化、組織変革、コンプライアンス、リスク、管理会計、スポーツ組織などの専門家集団など)を対象にしたディスコース研究の実態調査を通じた研究、③ディスコース的視座と分析アプローチを推進する研究拠点としての講座の企画やワークショップの開催実施。これらを通して、現代社会の中でますます複雑化する問題に、ディスコースの視点から新たな光を投じ、これまで常識としていた社会と経営・組織の日常知(日頃振り返らない経営の当り前、例えば効率、市場、戦略、など)を批判的に脱構築し、より社会と組織が密着した21世紀型経営を示唆することを目指します。

 ご意見やご提案、またお困りの問題のご相談などありましたら、ぜひご連絡ください。皆様との対話を心より楽しみにしております。

ディスコース的視座をめぐる背景

 グローバル化が進展する中で、経営と組織をとりまく現代の社会状況は、複雑さを増しています。さらに、2011年3月11日の東日本大震災の後、日本の社会と組織・経営は大きな変革に直面しています。このような複雑な社会的・経済的現実は、伝統的な組織論や経営学の主要なテーマの変更を差し迫っているといえます。つまり、今や従来の組織が暗黙の了解としてきた当たり前のこと(たとえば効率性や経済合理性)がもはや当たり前とは言えず、新しいパラダイムの必要性が迫っていると考えます。単に新しい研究テーマが誕生しているだけでなく、伝統的なテーマそのものについても、効率性や経済合理的パラダイムとは異なったアプローチが求められていると言えましょう。ODSEI研究所の研究者は、それぞれ異なる領域で活動しながら、このような点で同様な共通の認識を持ち、新しいパラダイムを模索しています。

 ヨーロッパでは早くからポストモダン哲学やポスト構造主義がフランスやドイツを中心に議論され、新しいパラダイムの模索が始まっていました。また社会構成主義の近年の発展も大きな影響を社会科学にあたえ、フーコーの視座の強い影響とともに、ディスコース(言説)への注目が拡大してきたと言えます。経営学の領域でもこの特徴は顕著であり、ヨーロッパの学会ではディスコースという手法がすでに定着しています。例えば、EGOS (European Group for Organizational Studies)とCMS (Critical Management Studies)では、ディスコースは主要な理論となっていた。これらヨーロッパの権威ある学会だけでなく、Ideology and Discourse Analysis (2008年)、Special Topic Conference of Business Discourse (2009年)など、ディスコースをテーマにした新しい学会も開催されています。特筆すべきは、フーコーを源流とするディスコース研究が大きな勢力となっているという点です。このようにヨーロッパ組織論や経営学における新しいパラダイムとして、ディスコースを中心としたアプローチがますます重要性を増している一方、日本国内ではアメリカよりの経営学がいまだ支配的であり、経営領域におけるディスコース的アプローチはいまだ未発達であり、ODSEI研究所の果たす役割は大きいと考えます。

組織ディスコースの基本的考え

 ODSEI研究所の最も基本とする概念を簡単にここで紹介します。詳しくは参考文献を参照していただきたいと思いますが、ディスコース的視座から見た組織(組織化)とディスコースの関係についての引用を紹介します。

ディスコース的視座から見た「組織」

「組織は,そのメンバーがディスコースを通じてそれ自体を創造する限りにおいてのみ存在する。これは,組織とはただディスコースにすぎないといっているのではなく,むしろ,ディスコースは,組織メンバーが自分たちが何者であるかという意味を形成している明確な社会的現実を作り出す主要な手段であることを主張している。」(Mumby&Clair, 1997, p.181) 
Mumby, D. & Clair, R. (1997) Organizational discourse. In T.A. Van Dijk (ed.), Discourse as structure and process: Discourse studies vol.2 – A multidisciplinary introduction (pp.181–205).London: Sage.

ディスコースと組織の関係

「組織ディスコース”という用語は,語ったり書いたりするという実践において具現化されるテクストに関する構造化された集積(種々様々な視覚的表象および文化的人工物と同様に)を指し,テクストが生産され,広められ,消費されながら,組織的に関係づけられたものを生み出す。したがってテクストはディスコースの現れであり,組織ディスコース研究者が注目する言説の‘単位 (ユニット)‘であると考えることができる。」(Grant, Hardy, Oswick, & Putnam, 2004, p. p3) 
Grant, D., Hardy, C., Oswick, C., & Putnam, L.L. (2004). The Sage Handbook of Organizational Discourse. London: Sage Publications.

※参照『ハンドブック組織ディスコース研究』 高橋・清宮(監訳)同文館出版(2012年)

ODSEI研究所の活動

主な取り組み

 ODSEI研究所では、以下のような研究活動を継続的に実施していく予定です。


1)基礎的研究
:社会科学の研究諸領域におけるディスコース的視座の理論的・哲学的な意義の明確化
 社会科学における言語的転回に、どのような意義があるかを明らかにする必要があり、とくに,各領域の文献研究を推進し、毎月開催する定例の「組織ディスコース研究会」で議論していきます。

2)応用的研究:多様な領域における社会と組織の諸問題を対象にしたディスコース研究の実態調査を通じた研究
 ODSEI研究所では、現在のところ、以下のような研究プロジェクトを進めている。

*プロフェッショナリズムのディスコース:特にスポーツの組織ディスコース
*東日本震災の企業間「共助」のディスコース
*危機の社会的構成とリスクマネジメントのディスコース
*建築設計事務所の組織ディスコース
*組織事故のディスコース
*病院組織と経営変革の組織ディスコース
*ナラティヴ・セラピーと癒しのディスコース
*異文化組織のディスコース
*その他

 3)ディスコース研究の拠点としての活動
  本共同研究チームは,以下の2点を達成することを目的とする。

1.組織ディスコース研究と実践の発展普及の活動
 組織ディスコースの発展と組織と社会の健全発展のため、ODSEI研究所では、積極的に講演会や公開講座、ワークショップの開催を企画運営します。このような知識の普及や教育の推進を展開していきます。

 2.国際的ネットワークを通じた学術レベルの向上
 ODSEI研究所は,ロンドン大学やシドニー大学など11のディスコース研究において先進的な研究を行っているInternational Centre for Research in Organizational Discourse, Strategy & Changeに参加しています。これらのネットワークを通じて、研究の国際協力を推進していきます。海外から大きな成果をあげている研究者を招聘し,レクチャーや議論を通じてディコースアプローチの理解を深めていきます。継続的に海外から研究者を招聘し,研究の質の向上を図ります。

ODSEI研究所のメンバー紹介

    • 清宮 徹

      文学部・外国語学科 英語専攻

      主な研究分野

      ・コミュニケーション学
      ・社会学
      ・経営学

      主な研究テーマ

      ・研究方法論
      ・医療コミュニケーション
      ・異文化経営
      ・組織文化
      ・批判的経営研究
      ・産業教育
      ・不祥事と企業倫理
      ・リスクマネジメント(危機管理)
      ・産業・組織民主主義
      ・交渉論
      ・組織論
      ・Organization Communication
       (組織コミュニケーション):
       組織ディスコース

    • 北垣 徹

      文学部・外国語学科 フランス語専攻

      主な研究テーマ

      ・フランス第三共和政期の精神医学と政治



    • 齊藤 靖

      商学部・経営学科

      主な研究分野

      ・社会学

      主な研究テーマ

      ・東海村臨界事故の歴史民族誌的研究
      ・組織におけるルールと実践の関係性
      ・高リスク組織のマネジメント
      ・組織論

    • 鳥越 千絵

      文学部・外国語学科 英語専攻

      主な研究分野

      ・コミュニケーション学

      主な研究テーマ

      ・人権主義
      ・批判的ディスコース研究
      ・批判的人種研究
      ・異文化コミュニケーション




    • 續木 智彦

      人間科学部・心理学科

      主な研究テーマ

      ・体育学、スポーツ心理学子どもの
      からだつくりに関する研究




    • 福島 一矩

      商学部・商学科

      主な研究分野

      ・会計学

      主な研究テーマ

      ・組織ライフサイクルと管理会計の変化
      ・日本企業の管理会計行動原理の解明

    • 宇田川 元一

      商学部・経営学科

      主な研究分野

      ・経営学

      主な研究テーマ

      ・戦略と組織メンバーの行動の間の
      ギャップ
      ・ナラティヴ・アプローチの理論研究
      ・戦略論研究における社会構成主義

関連リンク


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