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2026.01.09

“Culture of Integrity”プログラム第6弾を実施しました

 12月8日(月)、法学部国際関係法学科・高柴優貴子教授のゼミ生が主体となって、“Culture of Integrity”プログラム第6弾『周縁のVoiceと音楽:紛争地への祈りと旋律』を実施しました。本プログラムは、国際法を学びながら、価値観やバックグラウンドが異なる人々が置かれる状況を理解し、国際社会で活躍するために必須の“integrity”(誠実・真摯・高潔などを表す言葉)をキーワードに、実践的な感覚を育てることを目的としています。
 紛争地の状況をかつてなく同時進行的に知ることができる現在の社会において、自らの生きる身近な環境に影響が見えない限り、紛争地の人々の置かれた状況を「他人ごと」と捉えてしまうのはなぜなのか。その背景には、目から入る情報が過剰にあふれる時代にあって、人々の声(voice)に耳を傾ける機会が少ないことも関係しているのではないでしょうか。
 プログラム6回目となる今回は、このような問題意識の下、「普段当たり前のように築いてしまう境界(borders)を溶かそう」をテーマに、初となるアートイベントを開催しました。紛争の続くウクライナ、コンゴ民主共和国、パレスチナ、ミャンマーに焦点を当て、直接的に紛争の影響を被る当事者の言葉が紡がれた詩の朗読、スライド上映と紛争周辺地域の作曲家による音楽の演奏の融合、合唱など多様な表現形式を組み合わせた構成としました。
 企画した学生たちは、夏休み中から作品選びに着手し、紛争地域の歴史的・社会的背景への理解を深めるとともに、詩の翻訳に際して原文の感情やニュアンスを忠実に伝えるための工夫を考え抜きました。また詩から立ち上がる世界をより深い感性で受け止めてもらうため、丁寧にキュレーションされたスライドを制作。日本語・英語・フランス語の三言語による詩の朗読者たちは、詩に込められた感情を届けられるよう、表現に磨きをかけました。
 さらに、高柴教授のピアノ演奏や法学部国際関係法学科・小寺智史教授によるギター演奏とのデュオが人間の感情の「揺らぎ」や祈りを表現し、その響きは来場者の心に静かに訴えかけました。プログラムの締めくくりには、プログラムのテーマに即して新たに書き下ろした英語の歌詞による合唱曲を祈りを込めて歌い、平和への願いを声に託して届けました。

 参加した学生からは、以下の感想が寄せられました。
・法学部・国際関係法学科3年 陳佳敬さん
「音楽の静かな響きと、映像が伝える現実の重さが重なり、戦争の残酷さと、その中で必死に生きようとする人々の姿が胸に迫ってきた。詩・音楽・映像・文字が相互に補完し合うことで、現場の状況を自然に想像でき、深い没入感を伴ってイベントの世界に入ることができた。普段、国際問題を学ぶ時に、どうしても歴史的事実や政治的背景を整理することに意識が向きがちだが、今回は芸術表現を通じて当事者の感情に触れ、数値や言葉だけでは掴みきれない『個々の人生の重さ』を強く実感した。特に、作品に込められた絶望、希望、怒り、祈りを受け取る中で、『世界を見る視点は知識だけでなく、想像力と共感によっても広がる』ということを学んだ。自分の価値観や世界との向き合い方を改めて考える貴重なきっかけとなった」
・同1年山本ひなさん
「紛争地の人々が綴った詩の朗読を通じて、非常に感情が揺さぶられた。自分と同じように夢や希望を持っている罪のない人々が無差別に命を奪われている現状から人々は目を背けているのに、後になって『自分は反対していた』と語る社会の卑怯さや、その時に声を上げられない臆病さを感じた。このままでは自分もその中の1人になってしまうと気づき、強く印象に残った」
・同4年森山和奏さん
「情報が瞬時に世界中に拡散される現代において、紛争地の写真はいくらでも手に入る一方、情報過多により、非常事態が日常化し、デバイス上の人々の姿が現実世界とは切り離されていると錯覚してしまう。だからこそ、一度目を閉じて、耳を澄まし、彼らの声に耳を傾けることで、同じ地球で、私たちの仲間が傷ついているという感覚を取り戻すことが大切だと改めて感じた。今回のアートイベントを通して、人々の苦しみや悲しみ、祈りに芸術を通して繋がる方が、はるかに彼らの言葉にならない複雑な感情を感じることができるような気がした」
・同2年菰田美海さん
「紛争について知るにつれて、作者の思いを少しずつ理解できるようになった。一方的に説明されたものを聞くのではなく、自分で考える時間が持てたことが非常に良かった」
・同3年植田結華さん
「現在の社会の排他的な考えや、自分が良ければそれで良いといった考えが、borders(境界)から生まれていると実感し、排除される人が誰もいない世界を目指すために大切なキーワードだと思った」

 本プログラムを通じて、会場が一体となって、世界各地で見えない明日を模索しながら懸命に生きる人々の希望と痛みに静かに耳を傾ける時間となるとともに、深いレベルで現状を受け止めることでこうした課題に向き合う会話を変えていくきっかけとなりました。
 なお、当日の来場者から寄せられた希望に基づき、2月18日(水)16:30~18:00 チャペルにて、『周縁のVoiceと音楽』 の再演が決定しております。ぜひご来場をお待ちしております。