2025.12.26
【法学部】「専門演習Ⅱ」において国連人権官による特別講義・トークセッションを開催しました
12月9日(火)、法学部国際関係法学科・高柴優貴子教授の主催で、国連人権高等弁務官事務所東アフリカ地域局(ナイロビ)人権官の原悠祐氏をお招きし、参加型Q & Aセッションと特別講義を開催しました。
まず、昼休みに図書館プレゼンテーションエリアで開催された参加型Q&Aセッションでは、国際社会で働くイメージを共有することを目的に、これまでコソヴォやウガンダ等において難民や人権分野で活躍してきた原氏が登壇。「地球をステージに生きる」をテーマに、国際機関で働くことを決めた経緯や、仕事にかける想いを紹介し、学生からの質問に回答しました。
◎やりがいについて
国際情勢を反映して国連を取り巻く環境は大きく動いており、そうした中で目指す目標・案件のために今何が必要なのかを常に自ら模索し、多くのステークホルダーを巻き込んで仕事を形作る必要がある。その分、自分の色を反映できることに面白さを感じている。
◎困難に直面しても折れないマインドセットについて
「自分の仕事が誰かの不幸の上に成り立っている」ことを常に意識し、「究極的には自分の仕事がなくなることがゴール」という考えに立脚しながら日々取り組んでいる。
続く特別講義では、原氏よりアフリカのコンゴ民主共和国東部において1990年代以降続いている紛争について、英語によるワークショップが行われました。600万人が命を落としたとされる同地域の30年にわたる紛争では、現在もM23をはじめとする130もの武装勢力が戦闘を繰り広げており、多くの住民が難民として国外に逃れ、あるいは国内避難民となり、大規模な人権侵害がなおも続いている現状を概観しました。その上で、紛争長期化の背景にある、天然資源、脆弱な統治機構、介入する周辺国のパワーバランスなど、相互に複雑に絡み合う要因について検討がなされました。最後に、こうした紛争の有機的な理解を踏まえ、国際的・非国際的な武力紛争が重なり合う状況での国際法の適用の難しさや、持続的な平和に必要な要素・仕組みを考える重要性が語られました。
講義後、大学での学び方に焦点を当てたQ&Aセッション第2部が行われました。高柴ゼミ所属で2026年度に外務省入省予定の森山和奏さん(法・国法4年)が聞き手を務め、学生からの質問に回答しました。
◎専門性・スキルの磨き方について
高柴教授の前任校での英語開講の国際法の授業やゼミを通じ実践的な国際法の世界に触れ、更にイギリス留学を通じて専門性を身につけた。目指す分野の専門文献を読むだけでなく、自分が興味を持った分野の講演会や先達の話を直接聞く機会を積極的に求めて学びを深めた。また「問いと答えは現場にある」をモットーに、分野を超えて普遍的に使える力(competency)を養うことが大切。「自分の置かれた環境が当然ではない」ことを肌身に沁みて理解するためにも、日本で育った日本人に不足しがちな「マイノリティとしての経験」を敢えて積むことが重要。
◎人の縁の大切さ
人は一人では何もできず、他者に補完してもらう存在であることを前提に、自ら会いたい人に会いに行き、門を叩くことが大切。行動し続けることで新しい気づきを与えてくれる人との出会いがあり、それぞれの出会いが人を強くしてくれる。
参加した学生から次のコメントが寄せられました。まず、数次の事前勉強会に参加した学生からは、「ニュースの奥深くにある背景、他国や日本との関わりにも視野を広げるようになった」(法・国法1年衛藤穂実さん)「DRCの紛争の一面を切り取っても他の側面が複雑に絡まり端的な答えがないからこそ、より多くの人がこの紛争について知り、考えていく必要を感じた。」(同3年篠原琴奈さん)という声が聞かれました。また当日のセッションを通じ、「不確実な世界の中で、自分の信念を道標として、現状に甘んじることなく、世界をより良くしていくためには何が必要か考え、新しい世界に飛び込んでいくパワフルな姿に感銘を受けた。働く場所を目標とせず、自分の信念を実現できる場所を選んで歩み、初心を大切にしていきたい。」(同4年森山和奏さん)「これまでの自分の考え方が大きく変わった貴重な時間だった。何をやりたいかという揺るぎないものを持っている原さんの様に、これからの大学生活で、自分の信念となる部分を見つけていきたい。」(同1年山本ひなさん)「将来の不安をお話の一つ一つで浄化でき、原さんの人を巻き込む力や信念を持ってブレずに仕事をする姿勢に近づけるよう、同じ先生の下で学び国際社会で働いている先輩のお話を間近に聞くという貴重な経験を通じ、決意を新たにした。」(同3年植田結華さん) といった意見が多くありました。さらに、前日に行われたCulture of Integrity Vol.6 『周縁のVoiceと音楽』と合わせ、「この二日間を通じ、自分がいかに恵まれた環境にあるのかを痛感すると共に、そのような環境にいながら何も行動しないことに違和感を感じ、そうでない環境にいる人を支援するために行動する義務のようなものがあるようにも感じた。」(同1年藤原裕琉さん)との感想も寄せられました。
国際社会の最前線で活躍する原氏から様々な示唆を得て、学生にとって紛争問題や世界との関り方についての学びを深めると共に、国際法の学びを生かして国際社会の現場で働く具体的なイメージを広げ、大学での学びのあり方と、将来のキャリアを考える有意義な機会となりました。




