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2025.09.10

西南学院大学商学部創設70周年記念事業の一環として、 日本経営学会第99回大会を共催し、その中で商学部創設70周年記念特別講演を開催しました

 9月4日(木)、本学で開催された日本経営学会第99回大会(実行委員長:商学部藤岡豊教授)において、商学部創設70周年記念事業の一環として、一橋大学名誉教授の佐藤郁哉氏をお招きし、「日本の・経営学の危機? (被)植民地化と鎖国の二項対立を越えて」と題する特別講演会が大学チャペルで開催されました。当日は、日本経営学会と西南学院大学の関係者約400名弱が参加し、広い会場で立ち見者が出るほどの盛況となりました。
 本講演会では、日本の経営学界において、理論対実証、定性対定量、国内誌対国際誌、書籍対論⽂などの評価基準をめぐって論争が生じていることが指摘されました。そのうちの少なくとも「国内誌対国際誌、書籍対論⽂」という区分に関しては、国際誌に掲載された論文の重要性が増大してきており、佐藤氏はその変化を研究の「論文化」と「国際化」としてとらえたうえで、次のように功罪を指摘されました。
 まず、研究の論文化と国際化は、これまで自己完結的であり、いわば鎖国のような状態にあった日本の経営学の学術知を世界の舞台へと送り出し、さらに良質の査読を通して研究自体の質を高めていくうえで大きな貢献があったことです。
 しかし他方で、その論文化と国際化は、「経営学の危機」でまさに指摘されたような「ジャーナル点数主義」の弊害をもたらす可能性もあることです。それに加えて、特に日本の場合には、国際誌への論文掲載と引き換えに、日本の文化と社会に根ざした独自の知見と理論が軽視ないし無視されてしまう弊害も指摘されました。
 佐藤氏は、このような功罪を踏まえて、「書籍の刊行奨励」、「理論的貢献以外の貢献の評価」、「真の意味で重要な現実的問題への取り組み」、「各種ランキングに囚われないこと」、「大胆な研究計画への評価と助成」などの改善策を示されました。そして、特に日本の場合には、「emic(文化内在的理解)の偏重への注意」、「歴史的観点からの相対化」、「研究の多言語性を意識しつつ、複合的な評価基準をもつこと」などもご提言くださいました。
 佐藤氏は、以上の内容について、ときには冗談も交えながら、とてもわかりやすく平易な言葉を使って、聴衆を引き込むようにお話しくださり、所定の講演時間をあっという間に使われました。講演を聴き終えた参加者からは「感銘した」という感想が次々に寄せられることになり、西南学院大学商学部創設70周年を祝うのにまさにふさわしい機会となりました。本講演会の実現にご尽力くださった皆様と、ご参加くださった皆様に対しまして、心より厚くお礼を申しあげます。