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2025.07.16

【経済学部】河村哲二先生による講演会を開催しました

 7月10日(木)、本学経済学部は、2025年度西南学院大学教育推進プログラムの一環として、かつてマサチューセッツ大学アマースト校などで教鞭をとられた法政大学名誉教授、河村哲二先生(アメリカ経済史/グローバル経済論/経済学理論)をお招きし、4号館203号教室において講演会『パックス・アメリカーナの変容とグローバル・フレームワークの転換――「成長するアジア」の出現と転換を中心に――』を行いました。会場には、本学教員、本学学生、一般の参加者が集まり、約200名が参加しました。
 河村哲二先生は、アメリカの通貨/金融・軍事力・市場が与えるグローバルな支配的影響力がさらにグローバル経済に連関的な影響を及ぼすと考える、『パックス・アメリカーナ』論にもとづくグローバル経済連関を世界の都市を中心とした経済成長の軸ととらえる多角的な分析によって、国内外にその名を知られる研究者です。
 第一次大戦と第二次大戦にかけて形成されたアメリカの強力な国際的影響力『パックス・アメリカーナ』はいかにして形成され、東京やニューヨークなどのグローバル・シティを介して強化されたか、という歴史的経緯を展開しながらも同時に「アジアの成長、中国の挑戦」という観点を導入します。つまり、中国の「挑戦」によって、「パクス・アメリカーナ」はグローバル成長連関とともに変容し、福岡や仙台などは、サスキア・サッセンが指摘するような「サブ・グローバル・シティ」としてよりダイナミックに位置づけられるようになります。
 講義では都市論とアメリカ戦中/戦後経済史を融合、社会運動とネイティブアメリカンの原社会が与えたアメリカ的民主主義の変質など、まさにアメリカを中心としたグローバルな社会変容が鮮やかに語られていきますが、ここに、先生が数十年国内外で行ってこられた経営学的質的・量的調査が融合されが「新しい」経済学が提示されました。加えて、河村先生がグローバル成長連関の維持のために重視した要素は、古来より存続しているムラや集落によって守られてきた諸価値、換言すれば、字(アザ)、大字(オオアザ)などといった、何千年も維持されてきた自然的な集落体(注:いわゆる自然集落ではない)の中にのみ、真に存続可能な要素を発見しうるはずである、という論理を展開され、その博識と社会科学のさまざまな理論的要素を融合する知的体力に聴衆が気圧される部分もありました。
 本講演会は、表層的に都市生活や人間生活の成り立ちを考えるのではなく、多面的な価値観と多様で深い学びを心がけることの大切さを実感させるものとなりました。