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2025.07.01

ヤーノシュ・ツェグレディ氏講演会『サバイバー,歴史の証人に出逢う』が開催されました

 6月26日(木)、第二次世界大戦終結から80年の節目にあたり、本学ではピアニストのヤーノシュ・ツェグレディ(Janos Cegledy)氏をお招きして、講演会およびピアノリサイタルを開催し、学生や教職員、一般の方々が約650名参加しました。本講演会は、2025年度西南学院大学教育推進プログラム学部横断プログラムの一環で実施され、学生が戦争体験者の「生の声」に触れることで、歴史を単なる知識だけではなく「実感」として心で捉え、命の尊さや平和、自身の人生について深く考える力を育むことを目的として開催されました。

1937 年、ハンガリーの首都ブダペストに生まれたヤーノシュ・ツェグレディ氏は、ナチ・ドイツによるユダヤ人虐殺(ホロコースト)の生存者で、幼少期に迫害を受け7歳までに家族と離れ離れになりました。その後、両親は別々の強制収容所から奇跡的に生還し、ツェグレディ氏と兄はブダペストのゲットーを生き延びた「特異な歴史の証人」として知られています。1967年に来日し、東邦音楽大,武蔵野音楽大などで教鞭をとられ,世界各地でピアノリサイタルおよび数千曲の作曲を行なってこられました。

講演冒頭では、ツェグレディ氏による編曲作品である「Es brent(燃えている)」、作曲作品である「魂のふるさと」が披露され、戦争の悲惨さや命の尊さを繊細に表現し、会場全体が感動に包まれました。

その後、学生9名が登壇し、ツェグレディ氏がホロコーストを生き延びた体験や音楽家としての人生、戦争体験者として伝えたいことなどについて対談。ツェグレディ氏は、子ども時代は幸せであったものの、徐々に物資を奪われ、ファシストの若者から暴力を受け、最終的には家族と離れ離れになりゲットーに収容された当時の辛く厳しい状況を克明に語りました。「現在も世界各地で戦争が起きている今、私たちはどうあるべきか」という学生からの質問に対して「人に優しくありましょう。相手の声に耳を傾け、自分の頭で考えお互いに親切であることが大切です」と答えられました。また、戦争体験者が減っていくなかで、重要なこととして「歴史を正しく知ることが大事。人間は、光と闇の両面を持っており、悲惨なことをなし得ることを知っておくこと。常に正しくあることを心がけましょう」と語られました。

講演の締めくくりでは、ツェグレディ氏が「ベートーヴェンの悲しみが体現された曲」と語る楽曲、「ベートーヴェン : ピアノ・ソナタ 第7番 ニ長調 Op.10-3」の第2楽章(ラルゴ・エ・メスト)が披露されました。

本講演会では、戦争体験者の「生の声」に耳を傾け、過去の歴史を学ぶだけでなく、自分の心で平和の尊さや命の大切さを捉え、今後の意識変容を促す貴重な機会となりました。