2025.05.13
外国語学部主催講演会「ジョイスに愛はあるのか?」を開催しました
5月9日(金)、2号館511教室にて、外国語学部主催講演会「ジョイスに愛はあるのか?」を開催しました。講師には、アイルランド文学研究の第一人者、道木一弘氏(愛知教育大学名誉教授)をお招きし、「言葉の魔術師」とも称されるジェイムズ・ジョイスの代表作『ユリシーズ』に描かれる「愛」のテーマについて、多角的な視点から深い洞察が語られました。当日の講演会では、学生や教職員ら、110名が聴講しました。
講演の冒頭では、ジョイスが生まれ育ったアイルランドの歴史的背景に触れ、当時のイギリスによる植民地支配やカトリック教会による宗教的な抑圧といった社会的状況が、彼の思想や創作にどのような影響を与えたのかを丁寧に解説されました。また、第一次世界大戦中に、ジョイスがスイスへ「亡命」した経緯にも触れ、作家としての人生と時代背景について紹介されました。
続いて、『ユリシーズ』の物語構成や登場人物の描写を手がかりに、作品中に表れるさまざまな「愛」の形―男女の愛、母の愛、故郷への愛、さらには宗教的愛―についても詳しく解説。それぞれの愛の形が、ジョイス特有の高度な言語表現や緻密な文学的技巧によってどのように描き出されているかについて詳しく掘り下げられました。特に “God is Love” というフレーズが、アイルランドにおける宗教的・政治的抑圧に対する懐疑を込めた表現として用いられていると指摘され、参加者に強い印象を与えました。
質疑応答では、学生から「ジョイスの“言葉あそび”にはどのような意図があるのか」との質問があり、道木氏は「当時のアイルランドの過酷な状況において、“笑い”が人々の生きる力となっていた。どんな苦しい時でも笑いたいというジョイスの精神が巧妙な言葉あそびにも表れていると考えます」と回答されました。
講演終了後、参加した学生からは、「『愛』という言葉の背後にあるアイルランドの歴史や苦悩に初めて気づかされた」「言葉あそびに込められたジョイスのユーモアと抵抗の精神に感銘を受けた」などの感想が寄せられ、作品の魅力だけでなく、その背後にある思想や時代背景にまで考えを深める、貴重な学びの機会となりました。
西南学院大学外国語学部は、今後もこうした学びの場を積極的に提供してまいります。