2025.05.01
第172回芥川龍之介賞受賞記念講演会を開催しました
4月25日(金)、本学大学院外国語学研究科在学中の鈴木結生さんの第172回芥川龍之介賞受賞を記念して、「芥川賞を語る」をテーマに、1999年に同じく芥川賞を受賞した平野啓一郎氏と鈴木さんで対談を行いました。大学チャペルで実施した本講演会には、学生や教職員、一般の方々が約550名参加しました。
第一部では、鈴木さんの芥川賞受賞に際して、今井尚生学長が「これまでに本学から直木賞・芥川賞を受賞された4名の作家―葉室麟さん(12年直木賞)、東山彰良さん(15年直木賞)、沼田真佑さん(17年芥川賞)、鈴木結生さん(25年芥川賞)―を輩出しており、本学では、学部の枠を越えて、文学を通じた思考を深める雰囲気が醸成されている。本日は、特別ゲストとして平野啓一郎さんをお迎えしており、ぜひ知的興奮に満ちたひとときをお過ごしいただきたい」と開会の挨拶を述べた後、鈴木さんへ花束が贈呈されました。鈴木さんによる受賞スピーチでは、「芥川賞を受賞するまでの歩みの中で、いろいろな方々の支えがあった。自分の人生を見守ってくれた神様や、今日集まってくださった皆さんに感謝したい」と芥川賞受賞を振り返って感謝の言葉を述べ、会場からは鈴木さんを祝福して大きな拍手が沸き起こりました。
第二部では、本学外国語学部・一谷智子教授が進行を務め、鈴木さんと平野氏によるスペシャル対談が行われました。対談では、「芥川賞を語る」と題して、第172回芥川賞選考会の裏側や作家を志すようになったきっかけ、執筆する上で意識している点などについて語り合いました。対談の中で、互いの作品について、平野氏は「新人作家の作品には“現実に満たされていない苦悩”が表れていることが多いが、鈴木さんの作品は明朗な雰囲気であり、若くしてそのような作品を書くことができることに、新鮮な才能を感じた」と述べ、鈴木さんは「平野さんの本との出合いは、母が平野さんのX(旧Twitter)のファンであったことで、作家の良し悪しは作品を読んでみなければ分からないと、『マチネの終わりに』を読み、自分もファンになった。平野作品は、確かな知性により紡がれているところに明るさを感じる」と語りました。対談の最後に、鈴木さんは「私は長編作品を書くことが好きだが、これからは実力をつけるために短編作品を多く書いていきたい」と今後の展望を語り、それに対して平野氏は「私も短編作品ばかり書いていた時期があり、あまり読んではもらえなかったが、この時期の経験が後の長編作品につながった。作品が世に認められた後でも、作家の中には自分の才能に愛想を尽かして筆を折る人もいるので、これから鈴木さんには今後のための整理が大切である」と鈴木さんにアドバイスを贈りました。会場は鈴木さんと平野氏への拍手に包まれ、講演会は盛会のうちに終了しました。
*平野啓一郎氏プロフィール
1975年生まれ。京都大学在学中に文芸誌「新潮」に送った『日蝕』で芥川賞を受賞。著書に『マチネの終わりに』『本心』など。『ある男』で読売文学賞、『三島由紀夫論』で小林秀雄賞を受賞した。
写真左から外国語学部・一谷教授、鈴木さん、平野氏。